【ゆ虐SS】喋れないれいむ

 「ゆっ...?ゆぅー!ゆぅー!」
 「れいむちゃんただいま、すぐにご飯にするからね」

 家に帰ってきた飼い主をみて1匹のれいむが嬉しそうに声を上げる。おかざりは生まれた時の鮮やかな紅色を保ち、黒髪は艶っぽく肌もモチモチスベスベだ。大きな瞳はキラキラと輝いて飼い主からの愛情を感じさせている。おそらく一般の飼いゆっくりと比べても非常にゆっくりした美ゆんだろう。ある点を除けば。

「ゆぅ〜ん!ゆっゆっ!ゆーっ!」

 れいむはお気に入りの玩具のおんみょうだまと鈴を使って、今日どんな風に過ごしたのかをプリプリとした体の動きで飼い主に伝える。

 れいむは喋ることができない。生まれる前の胎ゆの頃、母れいむに特殊なラムネ薬が打たれ、完全に喋る機能を失っていた。いわゆる改造ゆっくりだ。

 「ゆ」を基本とした言葉以外を発することが出来ない。野生ゆっくりに特有の「おうち宣言」や「しあわせー!」などが出来ない。つまり人間の庇護になければ安全に“ゆっくり”することなど不可能な欠陥ゆっくりなのだ。

「そうなのねぇ。よかったわねぇ」
「ゆっゆっ!ゆーゆー!」

 楽しそうにれいむの身振り手振りを見て笑う飼い主は、きっとれいむは一人でもとても楽しく過ごしているのだろうと思っている。当のれいむはそうではない。おんみょうだまをおちびちゃんに見立てて子供が欲しいとねだっているのだ。

 れいむの思いが理解されるはずもないし、れいむ自身本気でやっているわけではない。でももしかしたら...と、半分の諦めともう半分の希望が、本能的にれいむを突き動かしているのだ。

 自分の幸せと不幸のバランスを理解しているゆっくりはなかなかいない。れいむは最高ではないが最悪とも言えない“ゆっくり”を感じていた。

 しばらくおねえさんと紐を引っ張りあって遊んで、れいむは眠りについた。

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