【ゆ虐SS】群れの誕生と死。

 
 何事にも例外や不可抗力はあるもので、繁栄を誇った堅実な群れがほんの数ヶ月で滅んでしまうことは珍しくない。

 これはある群れの隆盛と壊滅の物語。

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 群れは1つのゆっくり家族から始まった。れいむとまりさ、その子供の子れいむと子まりさという比較的オーソドックスな家族だ。この家族は桃花台の住宅街から少し北に行った場所にある山の中腹に定住することにした。

「ゆぅ〜ん!ここはとってもいいところだよお〜!ねっまりさ!」
「こそだてにぴったりなのぜ!おちびたちもみるんだぜ」
「ゆきゃあ〜!ちょってもゆっきゅりしてるよぉ〜!」
「まーちゃ、ここをゆっきゅりぷれいしゅにしゅるんだじぇ!!」

 その後、成長した子れいむは流れゆと山で家庭を作り多くの子供をもうけた。子まりさは家族から自立し複数の野良ゆっくりと家庭を作り、集団で山に出戻りをした。

 こういうことを世代を経るごとに繰り返して、この群れのゆん口は100匹を越えた。山の中で暮らすゆっくりとしては超大所帯になった。

 “出戻り組”からの情報や技術を活かして山のゆっくりは非常に高水準な生活を送った。大人は仕事に励み、“ほいくし”が子ゆを預かり教育をする。巣穴もただ地面に穴を開けたような粗末なものではなく、用途別に複数の部屋が造られていた。

 群れは段々と社会性を高めて組織化され、職業が生まれて階級が生まれた。ここで初めて“おさ”が出現した。

 ある時おさのれいむが急に言った。

「やまをおりたらいけないんだよ!にんげんさんはこわいんだよ!にんげんさんをおこらせたら“いっせいくじょ”がおきるんだよ!」

 住宅街では一斉駆除の機運が高まっていた。その原因は山のゆっくりにある。出戻り組は、山から降りていき、町のゆっくりと交わり数を増やして山に戻る。基本的に山のゆっくりには町のゆっくりが人間たちとの間で交わした“きょうてい”や“じょうやく”は通用しない。人間たちは時折現れては町の秩序を乱して帰っていく山のゆっくりを鬱陶しく思っていた。

 「山を降りてはいけない」というおさの言葉に多くのゆっくりが反感を抱いた。今まで群れは山→住宅地→山と出戻りによって技術を学び群れを発展させてきた。まりさ種とありす種はれいむ種に比べて自立傾向や好奇心が強く、おさのいうことに我慢ができなかった。多くのまりさとありすが家族を引き連れて群れから離反し山を降りた。

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「まりさたちはおやまのげすたちとはぜつっえんっをして、じゆうにいきるんだぜ!!」

 リーダー格のまりさが皆を率いて山を降り町の野良ゆの群れに入ろうした。

 今まで野良ゆの連中には食糧を提供したりして恩を売ってきたし、山の厳しい自然を生き抜いてきた強い自分たちはひ弱な野良ゆに歓迎されるだろうと思ったのだ。

 しかし、桃花台のように比較的新しい団地では野良ゆ管理が徹底されていて、新規の野良が入る余裕はない。

 桃花台では野良ゆの群れは町内会等と“じょうやく”や“きょうてい”を結び、ゴミ拾いや草抜きの労務の提供と引き換えにあんよに“桃花台”という焼き印を押されて“町ゆ”認定を受け保護されている(保護というが町は別にゆっくりに食事を用意するわけでもなければ動物や虐待鬼威惨から保護するわけでもない。要するに体良く町政に利用するために管理されている)。

 しかし、まりさたちは路頭に迷うことはなかった。自分達の要求を拒否した群を叩きのめしてそこに居座ったのだ。あんよに焼き印が押された町ゆはそうでないゆっくりより格段に足が遅く、意図も容易く皆殺しにされた。

「まりさたちにさからうからこうなるんだぜええええ!!!」

 町は群れが乗っ取られたことをすぐに認知した。山から降りてきたゆっくりたちに焼き印を押し、元の群れと同じ労務に就かせた。あんよを焼かれるのを恐れた一部のゆっくりたちは遁走し、山に戻った。

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 山のゆっくりたちは数は減ったものの今まで通り暮らしていた。しかし、まりさとありすの離反によって水面下で群れの分断が進んでいた。不穏な予感を孕んだ群れに出戻り組が帰ってきた。

 痩せ細った出戻りゆっくりたちは山に戻ったことを涙を流して喜んだ。群れのゆっくりたちも彼らが戻ったことを喜んだ。しかし、おさとその側近は彼らに厳しい態度を取った。

 おさの言うことは群れの法だ。従わなければ罰せられる。ある程度大きくなった群れはそのようにして規律を保つ。出戻りゆっくりたちは罰として川の近くに住むように言い渡された。

 川沿いは野生動物が多く、洪水の危険性も高いし、地面は尖った石だらけで歩くのにも一苦労の場所だ。ゆっくりなんてあるはずがない。出戻りゆっくりのリーダー格のまりさはおさに対する憎悪を募らせた。

 出戻りゆっくりたちは厳しい生活を受け入れざるを得なかったが、味方がいないわけでもなかった。山の群れは血縁によって成り立っているので、多くのゆっくりが親戚関係にあった。出戻り組は群れからの私的な支援を受けつつ細々と暮らすことになった。

 出戻り組の出現によって群れの分断は加速度的に進んでいった。おされいむの制裁は厳しすぎるわけではなかった(ゆっくりの群れの制裁は大抵族滅)が、この群れは小さな罪は縁戚ゆえのなあなあで済ませていた過去がある分、反感を覚えるゆっくりが多かった。

「おさはきびしすぎるよ!!」

 おさのれいむはどうすることもできなかった。

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 ぱちゅりーは山の群れの幹部だ。ぱちゅりーは原初の家族のひ孫でとても頭がよかった。おさになろうとしたが、現おさのれいむにその座を取られてしまった。理由は、れいむとまりさ以外がおさになったことがなかったからだった。一応群れの重役には収まったが、ハッキリ言って置き物同然でなんの実権もなかった。ぱちゅりーはこの座に甘んじるつもりはなかった。

 ぱちゅりーは川沿いに住むゆっくりに対して山の群れを襲撃するように唆した。おさのれいむは無能であり出戻り組のリーダー格であるまりさこそがニューリーダーになるべき優秀なゆっくりだと言う風に。川沿いにおいやられた多くのゆっくりたちがこれに賛同した。

 数匹の兵隊を引き連れて何も言わずに川の方へ走り去るぱちゅりーを見ておさのれいむは異変を感じ取った。川の方から大声が響いた。

「「「「ゆーえす!ゆーえす!ゆーえす!」」」

 謎の掛け声が響いた。おさのれいむは慌ててちぇんを兵隊として川の方へ派遣した。

 派兵されたゆっくりたちは山の中で柔らかい土の上で暮らしてきた。川沿いのゴツゴツした石だらけの地面を歩くのは苦痛だった。ゆっくりらしくゆっくりそろそろ歩いていると、大きな岩の上で出戻り組のリーダーであるまりさから呼び止められた。

「なにをしにきたのぜー?」

 兵隊のちぇんは返事をした。

「まりさ!ゆっくりしていってね!おさのれいむにここをしらべてきてねっていわれたんだよー」

 まりさはニヤリと笑いながら答えた。

「なにもないのぜー」
「ゆーえすってきこえたんだよー、なにかかくしてるよー、わかるよー」
「かくしてるなかくしてるっていうのぜー」
「ゆゆゆ?わからないよー」

 ちぇんは馬鹿だった。

「ちぇんはここまでよく来たんだぜー、ゆっくりしていくといいんだぜー」

 まりさが合図をすると、2匹のありすがパ●ン飴を持ってきた。町ゆの群れから略奪したものだ。山の中では到底味わえないあまあまを見てちぇんは興奮した。

「ちぇんよー、なにもなかったとほうこくしてくれればこのあまあまはちぇんのものなのぜー。まだまだあまあまはいっぱいあるんだぜー」
「ゆゆゆ...でもおさにうそはつけないんだよー」


 ありすはもう一つパイ●飴を出した。ちぇんは堕ちた。

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「でねー、おさー。まりさはなにもしてなかったよー。あやしいところはなかったんだよねー。わかるよー」

 おさの穴でちぇんはおされいむに報告していた。ちぇんの口はやけにモゴモゴしていた。おさのれいむはそれに気づきちぇんににっこり語りかけた。

「ねえ...ちぇん」
「ゆぅ?...ッゆびひぃ!!!???」

 おされいむはちぇんの頬をおさげで思い切り殴った。●イン飴がちぇんの口から飛び出した。

「このくそばかがああああ!せいっさいっ!せいっさい!」
「ゆびっゆぎゃあああああ!!!おざあああゆるじでえええ!!!」

 おさを裏切ったゆっくりは死あるのみ。ちぇんはおされいむによって潰され、目玉が飛び出て餡子を吐いて死んだ。

「「「「「「ゆわああああああああああ!!!」」」」」」

「おちびちゃあああん!!いまたすけるよおおお!!」

 外から悲鳴が上がった。夕方にしてはやけに明るい。外に出てみてれいむは驚愕した。火だ。ぱちゅりーに率いられた出戻りゆっくりたちが山に火をつけたのだ。

「むっきゃっきゃっきゃ!!ほのおよ!げすといっしょにもえなさい!!ぱちゅりーの“かけい”をくらいなさい!!もりのけんじゃのこうげきをくらええええ!!!」

 ぱちゅりーは火を起こすことができた。誰かから聞いたのか、それとも自分で発見したのか、ぱちゅりーは火打ち石の原理を知っていた。

 穏やかなゆっくりの群れが今では地獄のような様相だ。

「あちゅいよおおお!!おきゃあしゃああ!!」
「おみじゅ...おみじゅ...おちょーしゃ...のどきゃわいたのじぇ...」

 親に助け損ねられた赤ゆが家の中で叫んだ。

「おちびちゃああああん!!!!とかいはなありすがいまたすけるわよおおお!!!」

 群れの“ほいくし”をやっていたありすが取り残された赤ゆを助けようと火の中に飛び込みこんがりとした焼き饅頭になった。無情な犬死にだった。

 立ち向かうゆっくりたちは全員川辺の過酷な環境で鍛えられた出戻り組に太刀打ちできず殺されていった。戦う気がないゆっくりは逃げていったがその多くが殺された。出戻り組に共感していたゆっくりはすぐ虐殺に加担したが、多くが同士討ちで死んだ。

 ほとんどの兵隊が反乱軍に殺されておさのれいむは捕らえられた。

「ゆぎいっ!!はなせえ!!れいむはおさだぞおお!!!」
「れいむのせいでいっぱいしななくていいゆっくりがしんだのぜ!!れいむはむのうなゆっくりなんだぜ!!」
「そうよ!まちにおりちゃいけないっていったのも、まちからもどってきてきずついたまりさたちをかわにおいやったのも、れいむのやったことはとかいはじゃないわ!!」
「むきゅきゅ!れいむはしけいよ!」

「「「こーろーせ!こーろーせ!こーろーせ!」」」

 おさのれいむは20匹ほどのゆっくりに囲まれていた。ここからも逆転は不可能に近い。おされいむは死を覚悟した。

「まりさはれいむをころさないよ!!」

 他のゆっくりたちは驚いた。

「どぼぢでぞんなごどいうのおお」
「わかりゃないよおおおお!!」

 まりさは一括した。

「みんなよく聞くのぜ!れいむはまりさたちにひどいことをしたんだぜ!!でもそれをくりかえしたらいけないんだぜ!!もっといいむれをつくるにがまりさたちのやくめなんだぜええ!!」

 出戻り組はハッとした。ぱちゅりーは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「でもれいむにはせいっさいっをうけてもらうぜ!!それがまりさのおさとしてのはじめてのしごとなんだぜ!!」
「ゆひっ!やめてね!やめてね!ゆびゃああああああああ!!!!!」

 まりさはようむからはくろーけんを受け取り、おさのれいむの目玉を抉り取った。

「いだいいだいいだいいだいぢゃあああああああ!!!ゆあ゛ああああああ゛あ!!!!あっあっあっがああああああああああ!!!!れいぶのすべでをみどおずぐもりなぎまなごがあああああ!!!」

 れいむはひとしきり悶えた後、あてもなく群れから逃げていった。

「でていくんだぜれいむ!!このむれは!!きょうからまりさが!!おさになったんだぜえええええ!!!!ゆおおおおおおおお!!!」

 まりさはゆ叫びを上げた。それに釣られて他のゆっくりも「ゆーえす!ゆーえす!」と声を上げた。

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 おさせんげんはしたものの、群れは既に完璧に崩壊していた。ぱちゅりーの起こした火は延焼が広がり、たまたま大雨が降ったのが良かったものの山の半分が焼けてしまった。当然人間たちにも目をつけられてしまった。

 まりさは川辺に群れのみんなを集めた。

「もうこのむれにはすめないよ...にんげんさんたちはまりさたちをきらってるんだよ。このままむれにいたらいっせいくじょされちゃうんだよ。むれは...かいさんだよ」

 ゆっくりたちは涙した。ここに住めないのはよくわかっているが、一体あの凄惨な身内殺しはなんだったのか?

「ゆうっ...しかたないよねー、わかるよー」
「ここはとかいはじゃないわ...でも...ゆうう...」

 ぱちゅりーはそれを認めなかった。

「まりさ!!じょうだんいわないで!!ここはむかしからわたしたちのとちなのよお!?」
「でももうここにはすめないのぜ。ぱちゅりーのさくせんでむれはとりもどせたけど、ひがいがおおきすぎたんだぜ」
「でもおお!!でもおおお!!!むれのみんなはいっぱいしんだのよお!!むっぎゅううううううう!!!!」

 群れのゆっくりは同情した。ぱちゅりーは原初の家族のひ孫なのでゆん一倍群れへの愛着が強いのだろうと。実際ぱちゅりーの群れを思う気持ちは強かった。賢い自分であれば群れをもっと良く統治できると思っていた。群れの虐殺もそのための尊い犠牲だと思っていた。しかし、まりさはおさとして冷静に言い渡した。

「のこりたいならここにいればいいんだぜ。まりさはほかのばしょでゆっくりをみつけるんだぜ」
「むぎゅう......!」

 群れは解散し、まりさも他のゆっくりたちも他の場所へ散り散りになった。群れは実質この時消滅した。

 ぱちゅりーは自身とその家族だけで群れを再建するために頑張った。ちょうど夏が来て雑草がぐんぐん生えたので食料が沢山入手することができたので展望は明るいかと思われた。

 しかし、悲しいかな、クマの家族に襲われた。今までクマが群れを襲うことはなかったのにも関わらず、ぱちゅりーたちは全員クマに食い殺された。

 まりさたちは住宅街に降りていって町ゆになって群れに入ろうとした。しかし、人間は大火事を起こした山のゆっくりを危険していた。まりさたちはすぐに捕まえられて加工所に送られてゆっくりフードになった。

 出戻り組の殺戮から逃れたゆっくりの家族たちはまた別の山に行き、群れを開いたというが確証はない。

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 両目を抉り取られた元おさのれいむは群れがあった場所から離れたもののまだ山に残っていた。おさとしての自負はまだ残っていたのだろうか、それとも降りても生きていけないと悟ったのだろうか、れいむは自分の言を違えることなく決して山を降りようとしなかった。ただひたすらに山の頂上を目指してゆっくりと歩いていくのだった。

〜完〜


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