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半導体製造の前後工程統合:深掘り解説
半導体製造の前工程と後工程の統合は、従来の水平分業モデルから垂直統合型モデルへの移行を意味し、半導体業界に大きな変革をもたらしています。
従来の水平分業モデル
前工程 (ウェハ製造):
設計図に基づいてシリコンウェハー上に集積回路を形成する工程。
高度な技術と巨額の設備投資が必要なため、TSMCやSamsungなどの専門企業が担うことが多かった。
後工程 (組立・検査):
完成したウェハーを個々のチップに切り分け、パッケージに封止し、検査する工程。
ASEやAmkorなどのOSAT (Outsourced Semiconductor Assembly and Test) 企業が担うことが多かった。
統合の背景と目的
ムーアの法則の減速と3次元集積化:
回路の微細化による性能向上の限界に伴い、チップレットや3次元積層技術など、後工程技術の重要性が増している。
これらの技術は、前工程と後工程の密接な連携を必要とするため、統合による効率化が求められる。
サプライチェーンの複雑化とリスク:
グローバル化が進み、前工程と後工程が地理的に分散することで、サプライチェーンが複雑化し、地政学リスクや自然災害などによる供給不安定性が高まっている。
統合により、サプライチェーンを短縮し、リスクを軽減することができる。
顧客ニーズの多様化と高度化:
AIやIoTなどの発展により、半導体製品に求められる性能や機能はますます多様化・高度化している。
統合により、設計段階から後工程技術を考慮した最適化が可能となり、顧客ニーズに迅速かつ柔軟に対応できる。
統合の具体例
IDM (Integrated Device Manufacturer) 2.0:
Intel: 自社で前工程と後工程の両方を手掛けるIDMとして、再び最先端技術への投資を強化。
Samsung: メモリー事業で培った垂直統合モデルをロジック半導体にも展開。
ファウンドリとOSATの連携強化:
TSMC: 3DFabricなどの先端パッケージング技術を開発し、後工程との連携を強化。
ASE: SiP (System in Package) など、前工程との連携が必要な高度なパッケージング技術を開発。
自動車メーカーの垂直統合:
Tesla: 自社で半導体設計を行い、一部の後工程も内製化することで、サプライチェーンへの影響力を強化。
統合の課題と展望
巨額な投資: 前工程と後工程の両方の設備投資が必要となり、資金力のある企業しか参入できない可能性がある。
技術の融合: 前工程と後工程の技術は大きく異なり、技術融合には時間とノウハウが必要。
人材不足: 前工程と後工程の両方の知識を持つ人材の育成が急務。