【19-20🇨🇳中国女子リーグ】　第1ラウンド Leg1を終えての感想

【はじめに】

こんにちは。
ご無沙汰しております。戸隠です。

11月に入り、どんどん寒くなる時期ですね。みなさんいかがお過ごしでしょうか。

　久々の投稿となる今回は少し趣向を変えて、2019-2020シーズンの🇨🇳中国女排超级联赛（＝スーパーリーグ, 通称：CVL）のここまでの試合を観ての、各チームへの個人的な所見を書いていきたいと思います。
というのも、先日Twitterのタイムラインを眺めていた時にフォロイーさんの方がVリーグのチームの感想を簡単にまとめられていて、自分でもまとめて見たら面白そうかな？　ってなった、という些細なことがきっかけだったのですが。

　今シーズンは"バレーだよ"な🇯🇵Vリーグは完全シャットアウト、その他各国のスーパーリーグも大陸選手権も欧州CL以外は総すっ飛ばし！と決めた私、卒業論文と某英語技能検定勉強の隙間時間を縫いに縫っては🇨🇳中国リーグの試合をすべて観戦しておりました。睡眠不足で翌日に響いたこともちょくちょくありましたが（←）、観ていく間に色々と発見がありましたので、noteにまとめてみます。

　そんなわけで、行われた各試合をもとに、私が観ている範囲で去年よりもアップデートしてきた点・新要素として見られた点を中心に簡単に書いていきます。さすがに出場14チームの様子すべてを書ききることはできませんので😅
私自身が贔屓にしていたりあまり興味のないチームもあるので、若干情報量や扱いにばらつきが出てしまうこともありますが、そこはご容赦ください🙇‍♀️

それでは今回もどうぞ最後までお付き合いください。

【まずはリーグについて少し】

　試合に入る前にまずは今季の🇨🇳中国女子リーグ(以下CVL)について少しだけ触れておこうと思います。今季のCVLの特徴を〈①レギュレーション〉〈②選手〉〈③チーム運営〉に分けて紹介しますと、

①レギュレーション

　2019-2020季のCVLは五輪前のシーズンということもあり、これまでも毎年少しずつ変わっていたリーグのレギュレーションがかなり大きめにアレンジされました。詳しいことは▼こちら(http://cva.res.supervolleyball.com/1/newsNotice/pdf/de46f6e4-a8be-42c0-9eeb-021308099933.pdf) を参照していただければと思いますが、従来からの大きな変更点としては、

・全チームがリーグシーズン最後まで試合をするため、1-4位以外にも順位決定戦が設けられた
・1次ラウンドの成績を2次ラウンドまで持ち越すシステムが採用された
・各選手に認められていたCVLの試合のためのシーズン中の移籍が認められなくなった。

ことですね。
　もともとCVLはクラブシーズンが世界のトップレベルリーグの中でも比較的短いことが特徴であり、身体の休養を併せて入部を狙う世界トップの選手が毎年そこそこやって来ます。今季は約3ヶ月。いつものようにtop4チームによる決勝トーナメント方式にすると、4強漏れしたチームの試合があまりにも少なくなってしまうということで順位決定戦が設けられたようです。
　成績持ち越しに関しては、今回は予選リーグが4組に分けられ、各組のチーム数が非常に少なくなってしまったため、ラウンド突破を第一目標としたチームが消化試合を発生させないようにという意図もありそうです。(実際は主力を出場させないチームも一部出ていますが)
　移籍に関してはこれまた中々簡単ではないのですが、今までCVLは『2次ラウンドまでのリーグ戦で4強を決め、そこからプレーオフとして準決勝⇨メダルマッチ。その他のチームは2次が済み次第シーズン終了』という方式をとっていました。ここに国内リーグのための試合ではシーズン中1度だけ移籍を認めるルールによって、4強に進めなかったチームの選手が準決勝に進出したチームに移籍して上位の試合に出るといったことが可能だったのです。実際中国の代表選手はよくこのルールを活用して自らの鍛錬の機会にしていますね。ちなみにこのルールはCVLの試合に関してのみの制限であるため、アジアクラブ選手権・世界クラブ選手権等のCVL以外の管轄の大会には適用されていません。つまり、例えば世界クラブ選手権に出ることになったチームに、FIVBの大会のために国内の有力選手を大集合させるということも理論上可能になっています。
　今季はCVLの試合にも制限がついていますが、いつもは選手の移籍の自由度がかなり高めに保障されていたため選手の移籍市場を開く/活発化させているという意味で、かなり進んでいるのではないかと個人的には思います。実現するのか知りませんしもうあんまり興味もないですが、🇯🇵日本のVでもしプロリーグを打ち上げるのであれば、こういった点も参考になるのではないでしょうか。

②選手

今季の中国リーグの特徴として外せないものは、何と言っても外国籍選手の顔ぶれです。ご覧ください。なんと豪華なことか！🌟🌟

🇨🇳外国選手

北京：🇺🇸ディクソン(MB)/🇺🇸バーチ(OH)/🇦🇺ローク(OP)
天津：🇺🇸フッカー(OH)
上海：🇺🇸ラーソン(OH)/🇩🇪リップマン(OP)
広東：🇧🇬ラバジエバ(OH)/🇷🇺コシェレワ(OP)
浙江：🇸🇮プラニンシェツ(MB)/🇲🇪ボカン(OH)
遼寧：🇦🇿マーマドワ(OP)/🇺🇸ニュークーム(OH)/🇷🇸エリッチ(MB)
雲南：🇲🇪ペロビッチ(OP)

— 10＝94 🏐🌟🌏 (@IZis10ga94vbmin) November 2, 2019

　前の項目と少し被りますが、今季は五輪前シーズンということで、クラブシーズンが早くに結束する(＝早いうちに代表のための準備を始められる, 体を休める時間を作れる)CVLを狙って🇺🇸アメリカを中心とする強豪国の主力選手が例年より多くやって来ています。さらにさらに今季は五輪に向けての代表チームでの準備をじっくりとすることを狙って、地元中国の大エース🇨🇳朱婷が天津チームにやって来ている。これだけ豪華な顔ぶれは歴代CVLでも初めてなのではないかと言えるほど。短期間ではありますが、2次以降かなりハイレベルな試合/シーズンが期待できるのではないかと思っています。

③チーム運営

　これは限定的な話になりますが、一部のチームで大幅にチーム運営の改革が施されました。
　その中での代表例として遼寧华君チームがあります。聞くところによると当チームは今季からオーナーが地元の大企業(华君控股グループ)に移り、省の体育事業開発センター等と提携して女子バレーボール競技を通して地域の発展に繋げていくプロジェクトを始めたのだとか。省からのバックアップ体制によってチームの選手やスタッフの食事・健康状態・住環境などは大幅に改善され、さらに運営体制も刷新したそうです。チームの選手兼マネージャーに新たに就任した🇨🇳王一梅がいろいろと暗躍しているみたいですね。
　中国は2017/18季に自国のプロリーグをスーパーリーグへと形態を変えていますが、その時点で運営体制が十分に整っていなかったチームもあったようで、遼寧华君は遅れていた分をこの機会に取り返した/プロチームとして恥じないようなクラブの水準に追いつこうとした結果こうなったのかなと思います。
　他にも天津チームがDJさんを試合会場に呼んで観客向けのパフォーマンスを追加したりといろいろと新要素を盛り込んでいるチームもあるようです。

　と、リーグの簡単に紹介はここまでにしておきます。
　各チームの登録選手などの詳細な情報は、以下の私のツイートやリンクを参考にしてください。

＜参考：🇨🇳中国女排超级联赛 チーム基本データ＞

2019-2020季 🇨🇳中国女排超级联赛各队大名单 from 123 🏐🌟🌏 on Twitter

Competition Site by Data Project

 【1次ラウンドLeg1を終えて】

　さて、前置きが長くなりました。
　ここからは試合・チームのパフォーマンスなどの話に入っていきます。各節の試合に関する超大まかなまとめをモーメントにしていますので、併せてご覧ください。

2019-2020 🇨🇳中国女排超级联赛 第一阶段・第一轮

2019-2020 🇨🇳中国女排超级联赛 第一阶段・第二轮

2019-2020 🇨🇳中国女排超级联赛 第一阶段・第三轮

🇨🇳個人的注目選手🌟

天津：15王媛媛・13孟子旋
北京：18蔡雅倩・6張宇
上海：1王唯漪
広東：1陳佩妍・14鄭益昕
江蘇：18倪非凡・12吴晗
山東：7杜清清・11楊涵玉
遼寧：6胡銘媛
八一：6高意
浙江：18🇸🇮プラニンシェツ
河南：1毛钧怡
福建：11叶佳婧
四川：19車文涵
河北：3王佳敏
雲南：5🇲🇪ペロビッチ

— 123 🏐🌟🌏 (@IZis10ga94vbmin) November 2, 2019

　書きたいことは本当にたくさんあるのですが、一応次の項目に分けます。

　①全体的な変化・アップデート
　②気になる選手
　③気になるチーム
　④全体の課題
　⑤今後の展望

《① 全体的な変化・アップデート》

　全体として、🇨🇳中国女子や🇮🇹イタリア女子代表などの"男子の世界標準コンセプト"へのアップデートを進めているチームとそうでないチームがはっきり分かれているということがわかりました。アップデートの進み具合は、郎平監督または各国の監督の教えをきちんと地元チームに反映させられているか否かと言っても良いかもしれません。一応分けてみると、

進んでるチーム：天津・上海・北京・江蘇・河南
過渡期？なチーム：広東・山東・遼寧
進めてないチーム：八一・浙江・雲南・福建・四川・河北

こんな感じ。
　ちなみに進んでないチームというのは「前衛2枚時にバックアタックがない」「4枚攻撃を主体とする同時多発位置差攻撃のコンセプトがない」「リベロが中央Bickの動線を邪魔している」「フロントオーダーを採用している」「特にライト側の攻撃参加意識が極端に低い選手が複数いる」「ブロックが組織的ではなくその場の個人技だけを披露している」といった要素を含んでいるチームになります。

　🇨🇳中国はもともと『サーブが強く、レセプが弱い。高いブロッカーを揃えてレシーバーがしぶとく粘る。MBの高さとスピードを使っていろんなことを仕掛け、勝負所は前衛レフトの大砲に頼る。』というのが国内では根強く残っている印象ですが、最近になって世界のトレンド、特に欧州や🇺🇸アメリカで進んでいる男子化をきちんと追いかけるチームが出てきましたね。根本には郎平監督の就任が大きかったのだなとも思いますが、最近は若い監督が指揮を執っているチームもアップデートについて行っているな〜という印象を受けました。具体的には山東と河南と江蘇の変化が著しいかな。これらのチームの話は後に回しますが、🇨🇳中国国内には🇰🇷韓国女子代表が停滞した原因でもある"アジアの旧き悪しき個人技頼みバレー"を教える指導者しかいないのではないか、そういう私の固定観念は払拭されました。若い指導者の方々はきちんと世界の情勢を見ているということですね。よかったよかった。

《② 気になる選手》

　欲を言えば全員書きたいのですが、流石に量がとんでもないことになるので、今回はドリームチーム(ベスト6)の形式で紹介していきたいと思います。

・S部門
🇨🇳張梓涵＝チョウ・ズカン (河南) 181cm/19歳

　今季初めてちゃんと河南チームを観たのだが、彼女のプレーを一目見てピン！と来た。ボールの扱いのうまさに非常に高いセンスを感じる。きっと空間把握能力が高いんだろうな。体幹のブレも少ないし、身体を回転させながらボールが来た方向とは別方向へ正確にセットする通称ネジ巻きセットを当たり前のようにこなしている。ラリー中もよく縦Bもバックアタックも使うし、あらゆる攻撃を見られる。
それに加えて何より特殊なのが彼女のハンドリング。そう、まさにあの"悪魔のハンドリング"のような...。多分一度でもプレーを見てみればわかる人にはその異質さがわかる。まあいわゆる🇮🇹マリノブや🇰🇷ダヨン系のうまさじゃなくて、🇵🇱ヴォウォシュ系のうまさを持ったセッター。男子で例えると🇮🇹ジャネッリのハンドリング技術を持った🇫🇷トニウッティのような感じ。
　間違いなく🇨🇳丁霞が引退した後の中国代表の次世代セッター候補。というか、近い将来今の並居る若い次世代S(＝🇨🇳孫燕・蔡雅倩・許晓婷・梅笑寒)らをごぼう抜きしてスタメンの座を勝ち取るんじゃないかと思う。1st Tempoで入ってくるアタッカー陣の4枚攻撃をきちっとシステム化しているチームの司令塔だし、やりやすさもありそうだけど。さらに元中国男子北京五輪代表Sの🇨🇳焦帥監督のもとでやっているし、今後も色々と面白いプレーを身につけていくのではないかと。
　課題としてはセットアップ位置が少々低めなことと、ネット際のボール処理。ニアになったボールをネッチ怖がって触れなかったり、押し合いでも負け率が結構高かったり。あと1stが高かった時に焦って低めの速い平行トスを上げてしまうところかな。ワンハンドセットを覚えれば結構弱点克服しつつ武器にもなると思うけど、まずはそのための筋力つけるところから着手かな。

(次点：🇨🇳卞雨倩＝ベン・ウサイ (上海) 180cm/29歳

今の所全チームで一番セットが安定してる。さすがベテラン。クイックにはまだ低くなることはあるがサイドの大砲へのセットは非常に打ちやすそう。OPに窮屈すぎずかつ余裕もありすぎない最適なセットを供給できている感じ。シーズン最終盤は彼女の経験がモノをいうだろうな〜)

・OH部門
🇷🇺タチアナ・コシェレワ (広東) 191cm/30歳

　長い足の怪我との戦いを経てようやくコートに戻ってきた🇷🇺ロシアの大砲。フィジカルの回復のために代表を丸々スキップし、早めに広東チームへと合流してきた。コンディション面は初戦のプレーを見る限りは不安だったが、天津戦ではとても調子が良さそうだった。腕が思いっきり後ろまで行くバックスウィングからのあの切れ味鋭い長いコースへのスパイク、久々に見れて興奮した〜🌟。ああいうエネルギッシュな印象を与えるプレーを見せてくれる選手好き。時にプレーで味方を引っ張り、点を決めたチームメイトを笑顔で鼓舞し、時に吠えて覇気見せてくれる頼もしいベテラン。かつて🇨🇳朱婷も「もっとも尊敬している選手の1人だ」と語っていたしね。🇨🇳鄭益昕と共にコートの雰囲気に影響力を持っている選手なので気持ちよくプレーさせてあげてほしい。
　初戦で彼女はOPとして起用され、あんまり決定率がよくなかった。天津戦ではOHとしてバンバン打って得点源になってたけど。どっちにしても彼女は基本レセプ免除されているのだけど、それは彼女のレセプ能力を考慮してなのかな。🇨🇳朱婷のようにレセプ入れはするけど前衛での攻撃に支障が出るようなら免除しようということなのかな。方岩さんに訊いてみたいもの。
　ただ味方のセットの質にも影響されているけど、やや助走を十分に取れないままハイセットを上げられまくる状況が続くと威力が落ちるという課題が天津戦で明るみになった。もちろん突破できちゃう場面もあったけど。setの最後で被ブロックに遭って逃げられるという展開もあったので、彼女1人に依存するような状況では世界クラブもきっときつい。🇧🇬ラバジエバとの両輪が形になったらどうなるんだろうと非常に楽しみである。
　

・🇺🇸ジョーダン・ラーソン (上海) 188cm/33歳

　世界屈指の技術の高さを武器とする🇺🇸アメリカ代表の大黒柱。上海に入団してからもその実力をいかんなく発揮しており、特に守備面での貢献度はリーグでも群を抜いている。相手の決め球を確実にコースに入って上げるし、変化をつけてきたボールに対しても必ず先回りして構え、トランジション攻撃につないでいる。アウトオブシステム時のオーバーハンドセットも正確。彼女が後衛にいるときは上海のコートに全く隙がない。守備から攻撃への切り替えも早く、常にSに選択肢を確保し、あらゆる技術を駆使して得点に繋げる。ブロックでも大活躍。おまけにサーブも正確で効果的。まさに攻守の要。上海は素晴らしい補強をしたと言っていい。
　攻撃でのテクニック、状況判断の早さ、ディフェンスにおける貢献、効果抜群のサーブ...見所たっぷり！　是非とも🇨🇳朱婷との対決をしてもらいたい！！
　

(次点：🇨🇳吴晗＝グ・ガン (江蘇) 183cm/21歳

　所属の江蘇で🇨🇳張常寧の対角を務める世界ジュニア2017チャンプにしてベストOH。180cmそこそこの小柄な体格ながらスタメンをつかんでいるだけあり、攻撃参加意識・身体能力・運動量・サーブ全てにおいて優秀。エネルギッシュなプレーに加え、チームを盛り上げるムードメーカーも担う。中国のサイドにしては珍しい、ストレート打ちを多用するタイプ。まさにアジアのOHのロールモデルともいうべき選手だと思う。今季は外国人選手勢の高いブロックと対峙した時の引き出しが増えることを期待)

・MB部門
🇸🇮サシャ・プラニンシェツ (浙江) 185cm/24歳

　1Legを見る限り、全試合で一番真面目にハードワークを貫いていたMBがこの🇸🇮プラニンシェツだった。🇺🇸ディクソンもよかったけど、ラリー中の攻撃では常に全力で助走してフルジャンプを欠かさず行う姿勢が🇷🇸ベリコビッチを彷彿とさせたのでこっちを選んだ。🇨🇳中国のMBは大体1回攻撃が通らないと次の攻撃参加では意識が落ちるのだけど、彼女は全くそんな手抜きプレーはしない。全部等しく全力で跳ぶ。ブロックにしても、横移動が速いし、手がよくネットから前に出る。非常にプレーが見てて楽しい。さすが欧州のMB。
　課題はブロックでの横移動時に、逆足＝行こうとしている方と反対の足からステップを開始すること。それがあるからあの横移動のスピードが生まれているのかもしれないけど。
　チームのSが縦Bをうまく使えるのでモノにすると面白そう。ブロック判断から動き出しもステップの問題を無視すればリーグではかなり早い方なので、シーズン終盤には真ん中ゾーンの脅威になっているかもしれない。

🇨🇳楊涵玉＝ヨウ・カンギョク (山東) 195cm/20歳

　スピードのある攻撃を持つがブロック能力の足りない🇨🇳胡銘媛・鄭益昕、ブロックは強いが攻撃が弱い🇨🇳王媛媛らライバルMBの弱点を両方カバーしている選手。まだ代表スタメンほどの火力はないし、ブロック判断も早くはないけど、今季の代表では結構成長した選手だと思う。中国ではレアな連続でクイックに入って打ってくれる選手だし、ロングBの助走も入るようになってきたし、ブロードのスピードもついてきたし、しっかりブロックで手が前に出るようになった。ネット際でのブロックフォロー/つなぎの意識が高い選手。サーブも強い方。2018年の世界クラブで浙江に一時移籍して実戦を積んだことで自信をつけてきたと言ってたので、今年も広東でのチャンスを活かして欲しいところ。
　高さの利がある分、やはりブロック力は向上させたい。まだライト攻撃に対しては動き出しが遅れてカンチャン作ってしまうことがあり、上海戦では🇩🇪リップマンにとことんやられてしまってた。
　私は地味にこの選手が🇨🇳中国女子代表の五輪連覇の鍵を握っているのではないかと思ってる。

(次点：🇨🇳王馨瑶＝オウ・ケイヨウ (上海) 190cm/24歳

アタックの火力すごかった。ブロック判断は平凡だけど攻撃面のインパクトがその弱点を消してた。多分まだポテンシャルを全て出してないから今後も注目しとく)

・OP部門
🇨🇳杜清清＝ト・シンシン (山東) 187cm/22歳

　伝統的にライトが弱い(強いレフトをコンバートさせることでなんとかフォローする形をとっていた)中国で久々に現れた、ライト攻撃を積極的に行うOP。「ライト側も攻撃で活かす」という🇨🇳李岩龙新監督の方針のもとで、ブロック力を買われてレフトからコンバートしてきた。今の中国国内選手で🇨🇳龔翔宇以外にあれだけ積極的にバックアタックを打ちまくるOPは彼女だけ。機械みたいに整った無駄の少ない助走フォームが特徴的。あと1stタッチがめちゃくちゃ綺麗でやさしい。
　これと言った弱点がなくバランスのとれたサイド選手だけど、絶対的な火力が物足りなくて最重要の勝負どころで決定打にならないのが玉に瑕。特にハイセットが上がった時の決定力が目下最大の課題。🇨🇳劉晏含くらいの火力があれば将来1軍昇格もありえそうだけど果たしてどうか。いやらしいフェイントのようなしっかりと助走とれたとき以外の引き出しが欲しい。

(次点：🇨🇳毛钧怡＝モウ・キンイ (河南) 193cm/20歳

　次世代OPの一角。今年の世界ジュニアではMBとして出場した。バックアタックをしっかりこなすしテンポとスロットの概念を理解したプレーが見える。ブロック能力、サイズ的にも将来の代表主力として計算されているはず。バリバリの2nd Tempoな🇨🇳陳佩妍よりもプレーは時代的に前を行っている。所属の河南のバレーモデルの中で育っていけば2021以降のVNLでスタメン掴めるかもしれない。)

・L部門
🇨🇳倪非凡＝ニ・ヒハン (江蘇) 177cm/18歳

　今季🇨🇳郎平先生にその才能を見出されシニア代表入りした最年少リベロ。天性の身体能力、特に足腰の強さとボールコントロール時の身体の使い方にセンスしか感じない。1stタッチへの意識の高さが中国国内の他リベロの比じゃないため、トランジション時のコートでの味方の動きが全く別物になる。2段トスをレフトだけに持っていかないところもこれまでのリベロとは何か違うという印象を持たせてくれたり。昨季は江蘇のシニアメンバー入りはしたもののなかなか出場機会に恵まれなかったが、今季は間違いなく出番は増えそう。2ndタッチのオーバーハンドセットさえ標準化されれば一気に世界レベルのリベロになるだろう。
　今はまだ経験こそ足りないけど🇨🇳王梦洁にもない強みは既に持っている。私はパリ五輪中国代表の正リベロはおそらく彼女だと思う。

(次点：🇨🇳毛雅静＝モウ・ガセイ (河南) 178cm/22歳
　AL付近に上がったボールに対してセルジオセットをやろうとしてたのはここまで見る限り彼女だけだった。トータルディフェンスをよく理解しているプレーが見て取れる。河南のチーム成績が上がってないから注目度は低いかもしれないが、見てて気持ちの良いディフェンスプレーをやってくれるリベロ。)

このほか、成長の兆しを見せている/期待値高めな選手
・孟子旋(天津)　L
・王辰玥(江蘇)　MB
・王唯漪(上海)　L
・王娜(浙江)　S
・蔡雅倩(北京)　S

《③ 気になるチーム》

　選手の次は気になるプレーやシステム・戦術をとっているチームを紹介します。

　まず私自身が1番驚かされたのが河南です。河南と言えば🇨🇳朱婷の地元！なんですが、リーグの4強争いの常連というわけではなくむしろ下位争いの常連。なかなか上位争いには食い込めないシーズンがずっと続いているチームなんですね。なので正直そこまででもないチームなのかなー的な、それこそ「広東・天津への勝ち星献上の対戦相手」くらいの感覚で見始めたのですが......ところがどっこい！　ちゃーーんとS前衛ローテでもバックアタック2枚含めた4枚攻撃やるし、台形4枚まで普通にこなすし、リベロがオーバーハンドでセットするし、ブロッカーがきちんと2枚サイドについてるし、リバウンドボールのセルフカバーもしっかりできてるし、MBが全然空気化しないしで、なんじゃこのチーム？？ってなりました。こんなところに世界トップレベルのトレンドである男子の世界標準化についていっているチームがあったとは！
　もちろんまだまだ技術でも練度でも未熟ですし、全てのボールをうまいこと処理できるわけじゃありません。しかし彼らはほとんどのメンバーが20歳前後。アンダーカテゴリで代表を経験してシニアに上がってきたばかりの若い選手が出場しており、そのメンバーだけでこのバレーができている。質は違えど今年のVNLの🇷🇸セルビア女子に近い、将来性を感じさせてくれるチームでした。これは中国国内でも世界のトレンドバレーを再現できうるということの裏返し。かなり明るい材料なのではないかと思いました。
　最大の課題としては、1stタッチがネットから離れた時に積極的に使う縦Bのラインを安定させることでしょう。S🇨🇳張梓涵が独特のセットアップ技術を持っており、尚且つ真ん中の意識を忘れない有望株なので、そこからクイックの打数が増えていくといい試合を展開できるようになりそうかなと。
　今季は同組に天津と広東がいるという死の組に入れられてしまった河南ですが、焦帥監督は「強いチームと当たり続けられることは大変重要。我々は(監督である自分を含め)若い。厳しい道のりにはなるが、この貴重な機会を若い選手たちの成長につなげたい」と前向きなコメントをしていました。前2試合のプレー内容を見ただけでもすっかり河南のことが気に入ってしまった私。思わぬ発見という形ではありましたが、今季はしっかり応援していきたいと思います。

　続いて昨季に比べて成長したと感じられる江蘇。
　🇨🇳張常寧・🇨🇳龔翔宇・🇨🇳刁琳宇がいる時点で強いだろうと言われるのはまあそうなんですが、それでも昨季とは全然別のチームになっている印象でした。何より変わったのはコート上の選手の運動量ですね。一番顕著だったのが🇨🇳龔翔宇。ブロック降りてからすぐさま開き直してC1決める。ラリー中も状況によって高い1stを返してちゃんと助走に下がるための時間を作って開く。バックアタックもかなり打数多いですし、開くまでの時間も筋トレの成果か短縮されたように感じました。加えてしっかりクイックにもヘルプでつくしバックアタックにも3枚跳ぶようになってるしでなかなか頼もしく見えます。運動量の豊富な🇨🇳吴晗、🇨🇳倪非凡がコートインしていることもあり、1stタッチからの4人のアタッカーの動きがかなり自然になっていて、見てて非常に楽しいバレーをしていますね。代表での郎平監督の指導の賜物でしょうか。
　それから昨季からの変化として印象的だったのが、S2の時の攻撃システム。S2は中国のようにOPをレセプに入らせるチームとしてはなかなか厄介なローテで、今年のW杯中国代表でもライト側の攻撃が完全になくなるという特徴があったのですが、ここを江蘇は変えてきていました。まずOP🇨🇳龔翔宇をレセプに入れることは代表から変えず、代わりに後衛OH🇨🇳吴晗をレセプから外して笛と同時にすぐさまライト側に走らせてバックアタックを打つようにしてきたんですね。昨季の江蘇は🇨🇳張常寧が膝の手術の影響で思うようなパフォーマンスができなかったこともあり、彼女を5番OHに据えて後衛では守備寄りの役割を任せ、その代わりにOP🇨🇳龔翔宇をZ5からライトまでダッシュさせてライトバック攻撃に入らせるようにしていました。おそらくその🇨🇳龔翔宇の長い移動による効果率への影響とレセプションの安定度を秤にかけた結果の策だと思いますが、なかなか形になっていてよかったですね。レセプションアタック時は効果を発揮していました。一発で決まらなかった時に🇨🇳龔翔宇と吴晗が守備位置を入れ替える動きではまだスムーズさは足りませんが、この辺できてくるとまた"常に4枚"がより洗練されてくるかなと。
　現時点の課題は、新ボールの影響からか🇨🇳刁琳宇のセットが少し低くなりがちでアタッカーが少々助走を活かせてない場面が見られるので、そこが修正されるといいなと思っています。

　最後に、個人的に好きな選手が多いせいで気になっている山東。
　このチームは現在の中国代表のアシスタントコーチ🇨🇳安家杰氏が代表に引っ張られて現在の🇨🇳李岩龙監督に交代してから「ライトからの決定力を高めることでレフト選手の負担を減らしつつ、全体の攻撃力をUPさせる」というポリシーを打ち上げ、確かにそれを少しずつ形にして行ってるチームです。とはいえ方向性としては正しいと思いますが、ある程度の形ができてきた故に"個の力のなさ"が浮き彫りになってきたというのがもどかしいところです。
　例えば山東の明らかな弱点であるZ6の守備。もちろん前衛のブロッカーが間を空けすぎることで後衛の負担が増えているのも原因ですが、十分触れているような軟打でも簡単にあさっての方向にボールを飛ばしてしまうシーンが散見されます。強打を上げるのは結構なのですが、だからって軟打が上がらないでは困る。そういう非ハードヒットへの弱さ/ボールコントロール力の低さはコートど真ん中への対応力の低さにも影響していると思います。
　そんな山東で鍵になりそうなのはOHの🇨🇳宋立琪。🇨🇳宋美麗/🇨🇳錢靖雯/🇨🇳杜清清が入れ替わりでOHに入ってくる中、彼女だけはずっと固定で出てるのでおそらく🇨🇳李岩龙監督としては軸にしたい選手なのでしょが、彼女は明らかに状況判断が鈍いです。確かにサーブはいいし攻撃力はある方だし、スロット3あたりから外に開いて打っていくレフト側ブロードみたいな技もやったりでそこそこできる若手だとは思いますが、明らかにバックアタックの意識が低いし、1st Tempoの助走が出来てない。しかもラリー中に誰が打つのか・どこにボールが行きそうかを予測出来ないままキョロキョロしてるシーンも見られます。彼女に攻撃参加の意識があれば防げたであろうお見合いが発生した時は思わず激昂しそうになってしまいましたが、このレベルの選手を抱えているようではなかなかリーグ上位は厳しいのかなぁと。そう一朝一夕で身につくようなものでもないので我慢して見守るつもりではいるのですが...。彼女さえ進化すれば、というのはちょっと飛躍した願望かなぁ...。
　山東はOHとOPの両方をこなせる選手が複数いるので、選手を変える采配によって乗り切れたりはするのですが、上位の他チームと比べるとその恩恵が薄い感じがするんですよね...。これなら最初っから彼女でよかったじゃん、となることが多くて。今ある個人技を発揮してある程度のとこまで持っていく組織力はあるので、あとは選手それぞれが成長していくことに期待ですね。今季は世界クラブのために主力選手が広東に移籍して出場するとのことなので、その機会をぜひ活かして行って欲しいです。

　他にも気になるといえば、この時代にフロントオーダーを採用していた福建、MB🇨🇳鄭益昕のマルチな能力を活かすべくLと後衛OHとを交代するローテを設けるシステムを採用している広東などなどがあるのですが、話が肥大しすぎてしまうのでここまでにします。
　気になったらぜひぜひ試合を見てみてください。

《④ 全体の課題》

・中国人MBのブロック能力
　🇨🇳顔妮・🇨🇳袁心玥・🇨🇳張曉雅以外にブロックの判断も動きにも優れた選手が見当たりませんね。伸び盛り/伸びしろのありそうな若い選手、数字を出しているから代表入りしそうな選手はゴロゴロいるのですが、サボらずきちんとやるべきことをこなせている選手は先に挙げた3人以外にはほぼいません。
　中でも目立つのが、まずリードブロック(シー＆レスポンス)はしているけど判断から動き出しまでが遅いんですよね。🇯🇵岩坂みたいに判断も動きも鈍い選手は上位チームには少ないですが、行く方向がわかってから動き出しまでに結構無駄が多い。結果サイドへのヘルプが遅れて、同時に後衛レシーバーの負担も増えてしまってサイドの選手にいいように打たれてしまうと。原因はまず基本的な動作が無意識的にできるようになっていないのもあるでしょうが、それ以前にまず下半身の筋力が弱いからではないか？と思うのですよね。🇸🇮プラニンシェツと比べてみると一目瞭然なんですが、フットワークがまず全然違う。女子バレーの男子化が進み、トータルディフェンスの重要性がさらに高まった現在では、そのMBの一瞬の遅れが命取りになります。動きの基礎になるのはまず筋力ですから、どんな動作が必要になるかを体感するのと同時にさらなるフィジカル強化が必要だと思います。
　他に気になるのが間に合わないとわかった時にブロックを諦めるだけでなくその後のつなぎをしようとしないことですね。例えばライトへのブロックにSに振られるなりして遅れた場合、ネットから手を出そうという動きはせずサイドブロッカーに追随してフェイントのカバーに入る。それをやるならまだいいんですが、「その場面でフェイントしてくるわけないでしょ？」というところでも移動することが目的かのように繋ごうという姿勢を見せない選手が多すぎます。フェイントのカバーしようとしても結局コートど真ん中に落とされて触ることすらできずお見合いしてる始末。これはフロアをどう守るかというベンチの取り決めの問題でもありますが、ブロッカーとは相手の思い通りに攻撃を通らせないこと・味方がボールをつなぎやすくすることが仕事ですから、そこはきちんとできることをやってほしいと思いますね。まだまだ未熟ではありますが江蘇のMBなんかはブロックは上手くなくても、そのつなぎの部分は頑張っていますよ。そういう地味だけど欠かしてはならない努力をね、していってもらいたいです。

・Sのクイックへのセット
　これはもう🇨🇳中国永遠の命題みたいな部分なのですが、ぽっっと上げるようなセットがみんな苦手ですねー。1本うまく上げたかと思ったらすぐ低くなってドシャられたり、ふんわり浮くセットが長所だったSが短い低いセット連発してたり...。🇨🇳袁心玥のブロードを無敵化させるセットを上げる🇨🇳刁琳宇でさえもセットが低くなっていました。新ボールの影響なんでしょうか？
　中国はサイドへのセットに関してはもう大きな問題はないんですよね。幼い頃から大体ハイセット打つオープンバレーで育ってきた選手が多いので。まあレフト偏重を未だに引きずって某世界大会で恥かいたチームもありますが、ライトも活かそう・男子化のトレンドについていこうというチーム増えてきましたし。なのであとはMBをいかに活かすか。もともとMBを主体にあらゆる使い方をして相手コートを引っ掻き回すというのが中国の十八番だったはず。男子化したとはいえ、MBがスロットの概念を理解して逐一入り方を変えたり打点をコロコロ変えたりと、そういう引き出しの尽きないバレーが見てみたいですね。まあ若いSが多いのでそんなに多くを求めてはいけないのかもですが...。
　今の時代勝つためにはやはりMBの打数を増やして活かさなくてはならない。このことはどのSにも至上命題として意識してもらいたいです。

・バンチシフトを敷いていない
　そもそもそこまで組織的な攻撃をしてこない、サーブ戦術によって比較的楽に相手の選択肢を削ることができるとわかるようなチームが相手だというのもあるかもしれませんが、🇺🇸アメリカ女子のようなバンチシフトを敷いてるチーム、極少です。ほとんどがスプレッドシフト。ラリーになると相手レフトだと決めつけてライトの選手をスロCにステイさせるチームもあります。だから外国人サイド選手の、クイックやパイプ攻撃に対するヘルプのブロックが余計に目立つんですよねー。前衛が中国選手しかいない場合、普段のシフトから相手の複数攻撃に対して、例えばサイドに2枚とかクイックに2枚ちゃんと跳んでるチームほとんどないんじゃないかなー。単体のディフェンスを磨いてれば国内リーグではある程度勝てるので問題ないと考えているのかもしれませんが、このまま例えば欧州の上位クラブと交流試合したらボロ負けすると思うんですよね...。中国、ブロックシステムをきちんと構築できる指導者、いるのかなぁ...。

・フェイントが下手
　下手というよりは、ほとんどやらない。中途半端な威力のボールを返して簡単に切り返されてしまうボールばかり。フェイントですらない返球が多いと言うべきか。やったとしてもそのアタッカーが打てないとなった時にやることがフォームや癖からバレていてすぐに相手がインシステムに戻してしまうことがほとんどなんですね。嫌らしいとこに落とすでもないし。強打ですらあっという間にインシステムに戻してしまうような選手が増えてきているというのに、そこにチャンスボールを返すなんてもはや愚の骨頂。🇷🇸セルビア女子を見習って相手が嫌がるプレーというものを徹底研修するべきですね。バカ打ちを繰り返してればいつか決まるだろうという楽観的な思考の選手が多そうですが、そんなことやるより全力でない威力で返球位置を正確にコントロールするテクニックを身につけた方が生産的なのではないかと思います。

《⑤ 今後の展望》

　今季リーグのこの先の展望ですが、まず現時点で既に実力では上海と天津が突出しています。まあ🇺🇸ラーソンと🇨🇳朱婷がいるからと言ってしまえばそれまでなのですが、それもこれも彼らが前衛後衛関係なく攻守でその能力を発揮しているから。後衛でのスパイクレシーブ、前衛でのクロススパイクへの対応、サイドのブロックとそこからすぐに攻撃参加に移る早い切り替え、強打だけでなく軟打も織り交ぜてあらゆる手段を使って不利な状況でも相手コートを混乱させる引き出し...女子の一流と言われるOHの要素を既に持ち合わせています。特に🇨🇳朱婷は今年の代表シーズン、W杯を通してかなりクリエイティブなプレーを身につけてきました。去年の世界選手権あたりから出始めたこの部分を私は勝手に🇷🇸ミハイロビッチ化と呼んでいるのですが、ただ攻撃が強い・ブロックが高いだけではなく、相手の状態をよく見た駆け引きの部分で成長してきたなと。この要素、覚えたての🇨🇳朱婷と、既にモノにして色々な場面で戦ってきた🇺🇸ラーソン、この2人を要する津海対決は今季CVLの最大の注目ポイントの1つでしょう。
　この2チームは他にも、サーブが強い・トータルディフェンスが強い・決定力の高い選択肢を複数持っていることで共通しています。天津はまだまだ詰められる点/隙があり、それをサーブやサイドの決定力で掻き消している段階ですが、上海の方は先にも書いた通り既にトランジションのシステムの完成度が非常に高い。シーズン終盤にはどれほどのディフェンスシステムが築かれているのか、今から楽しみです。

　この2チームに追従しているチームとしては、北京でしょうね。昨季に続く🇺🇸ディクソンの活躍は言うに及びませんが、アメリカ代表のシステムがきちんと染み込んだOH＝🇺🇸バーチが🇺🇸ラーソンと同じ役割をコートで果たしてくれています。北京は若手をあまり使わずベテラン選手で固める傾向にありますが、それもあってかなりコートは安定してます。問題としてはSが若手の🇨🇳蔡雅倩であること、外国人選手が3人ベンチ入りするので🇺🇸アメリカ勢の2人を入れるとOPが🇨🇳曾春蕾になること、でしょうか。八一戦では🇨🇳曾春蕾のOHとOPの2パターンを試していましたが、このまま🇨🇳曾春蕾OPとなると勝負どころでは難しくなるかも？と思いました。北京がチャンスをつかめるとしたらやはり🇨🇳蔡雅倩-🇺🇸ディクソンラインが揺るぎないホットラインとなることが第一条件じゃないかと。あとは🇨🇳劉曉彤が神サーブを連発することですかね〜。

　ハイレベルチーム同士の上位争いはこんなところですが、突出したチームがありつつもその下の2番手勢が最後の4強の枠を争って拮抗しそうで楽しみですね。
　8強まで絞られた2次ラウンドの組み合わせとして私が予想しているのが、

　E組(AC)：北京・八一・上海・山東
　F組(BD)：天津・広東・遼寧・江蘇

なんですが、F組なんてまさに死の組。1次の成績を持ち越すシステム、さらには世界クラブ選手権に参加する選手の準備期間の問題等もあってなかなかもつれそうです。4強に来れなかったチーム同士でもなかなかカードとしては面白い組み合わせが生まれそうなので、5-8位のトーナメントも見逃せないかも。
　また下位争いも9-10位争いは注目の価値はあると思います。特に河南が外国選手と対峙した時にどう戦うのかと行ったところは注目です。

 【最後に】

　ということでまたダラダラと書いてきてしまいました。最後に今シーズンの順位予想を整理して終わりにしたいと思います。

　以前適当にTweetしたときは組み合わせのことを全く考慮していなかったので、今度はそれらを考慮していきますが、まず上位8強は初戦に勝利したチームで硬いでしょう。勝ったチームと負けたチームではボールをつなぐ技術、つまりはレセプションの能力・レシーブ力・ネット際のボール処理・リバウンドボールの繋ぎ方をはじめ、サーブの効果、パワー、ブロックの判断力の差は明らかでした。

　下位トーナメントは火力とSの力量を考えると浙江の一人勝ちかなと。ただリーグトップクラスのハードワーキングMB🇸🇮プラニンシェツの対角🇨🇳李瑩が前衛のときの穴を突いていけば隙はできるかもしれません。個人的には、若くて遊び心のある有望S🇨🇳張梓涵を据え、男子世界標準化を上位チーム相手に実践できていた河南には頑張って欲しいですが、個人の技術スキルも考えると9-10位決定戦に入り込めれば御の字かなー。あとは下位Tを制す可能性あるのは雲南。🇲🇪ペロビッチ以外の選手が得点源となるか、あるいは彼女のためにひたすら奉仕するチームになるかでまた分かれてきそうです。その他はほぼサーブ(レセプション)で決まってしまいそうなチームどうしなので、サーブのいい順になっていきそう。

　次に上位トーナメント。
　第一に、国内選手だけで固め、旧い戦術を引っ張っているチームは優勝争いから脱落と見ました。外国籍選手を獲得して積極的に起用するチームが増えたこともありますが、OPの決定力が乏しいチームに結果は出せないでしょう。そうなるとまず、MBおよび🇨🇳劉晏含の個人技に頼りっきりかつライト側からの攻撃がめっぽう弱い八一は厳しい。あとは全体的にいろいろと手は出しているけれど個々の技術が低くて"広く浅い"感じになってしまっている山東も厳しそう。能力のある選手はいるのですが、なにぶん火力が足りない。あっても場面場面でしっかりと活かす采配ができる領域にはまだ達していない印象です。「ライト側を攻撃でしっかりと機能させる」というポリシーを掲げ、言葉通りじゃんじゃんバックアタックを打たせている監督なので期待はしていますが、ディフェンス面でまだ穴が多い。なので形になるのにはもう少し時間がかかるかなと。

　こうやって可能性を消していくと、自ずと4強のうちの3つは天津・上海・北京で固いと思います。ブロッキング能力が高い選手を揃え、サイドに火力と高さを揃えた大砲がおり、個々の技術も高く、なおかつ男子化のトレンドを理解している選手がいる。しかも穴らしい穴を試合中に采配と相手を崩すサーブによってほぼ隠すことができている。いわば準備と采配を合理的に行える。この条件を揃えてるので（🇺🇸アメリカ代表の経験がある選手の戦術理解度の高さがまんま反映されているようにも見えますが）。
　問題は残る1枠。遼寧・広東・江蘇のうちどこが入るかですね〜。
　これらのチームはある程度強豪チームなら当たり前に持っている要素が備わっているので、各々の弱点で差が出ると言えそうです。
1stラウンド1Legを観た限りのそれぞれの弱点を簡単にまとめると、

・江蘇：両MBのブロック判断が遅い。サイドの火力がちょっと物足りない。
・広東：🇨🇳栗垚および🇨🇳鄭益昕/🇧🇬ラバジエバが並ぶレセプションの脆さ。Sの組み立て＝MBが空気になる(前衛レフト偏重が発生する)こと。
・遼寧：🇨🇳段放/🇨🇳王一梅のレセプションおよび前衛での決定力

　これらのうち致命的なのはレセプションでしょうね。🇨🇳中国では「一传是生命線吧」という言い方をされますが、レセプションはある程度返らなければそもそも話になりません。よって1Legの天津戦でだいたいどの選手のサーブにもAパスを返せなくなってあっという間に前衛レフト偏重へと追い込まれてしまった広東の4強は難しいと思いました。サーブであっという間にMBを攻撃から消され、トランジションでもほぼ前衛レフトだけ。前の試合ではようやくコートに復活した🇷🇺コシェレワが自慢の切れ味鋭い長いコースのスパイクを披露していましたが、最後には攻略されてしまいましたし、あれぐらいの守備力は今季の上位チームならばどこも揃えて来ます。🇧🇬ラバジエバがアクシデントでしばらく戦線離脱してしまうことになったそうなので、もう1人大砲が覚醒するか、Sが化けるかしないと難しいでしょう。
　一方同じレセプが弱点である遼寧は🇨🇳段放/王一梅という、外国人選手枠の使用人数の制限上必ずコート上に立つことになるOH選手が穴になっていますが、今季🇨🇳顔妮-🇨🇳胡銘媛の代表MB対角に加えて前衛にも常にOP🇦🇿マーマドワもしくはS🇨🇳丁霞がいるため、かなりブロックが強くなっています。なのでワンタッチかけてしまえば🇨🇳丁霞の華麗な組み立てによって切り返すパターンに持ち込んで試合の主導権を引き寄せるということは十分できそう。ここまでの試合で🇨🇳胡銘媛はMBとしてのスコアラーランクNo.1、打数もNo.1ですし、ゆったりトスを上げればどうにでもしてくれるOP🇦🇿マーマドワがいてくれるのも心強い。使える強力なカードが多い＋Sがうまいとなると遼寧が有利かなと。
　それに対して江蘇はレセプは非常に安定していますが、火力(＝決定力)とMBのブロックの能力に欠けています。江蘇は代表の主力級選手を多く据えながら伝統的に国内選手だけで固めているチームですがなにぶんMBが穴...。ネット際の繋ぎはいいのに肝心のブロッキングと得点能力、あと守備が残念ですね。いくらスーパーリベロ🇨🇳倪非凡がいてもブロックが崩壊していては今は勝ち残れません。昨季も4強に進みはしましたが、準決勝以降ブロックが崩壊して🇨🇳李盈瑩にズンバカ決められまくって4位に終わってしまいました。非常に若い選手でメンバーを固めながらずっと優秀な代表選手輩出に一役買っているチームですし、今季は代表の攻守の要となった🇨🇳張常寧・龔翔宇が郎平監督の教えをきちんとチームに還元してる印象を受けるので、ネックになっているMBの能力の成長次第では4強入りが見えてくるかと。
　こうやって比べると有利なのはやっぱりSがしっかりしてる遼寧かなぁ...何より🇨🇳丁霞がSというのが4強入りのライバルとの差になりそうです。

　ということで4強は天津・上海・北京・遼寧！
　で、決勝にはとにかくチームの核たるOH選手の攻守のバランスが非常に優れていて、かつリベロの能力が高く、なおかつサイドに大砲を擁した男子世界標準のシステムを取れている上海vs天津。🇩🇪リップマンvs🇺🇸フッカー、🇨🇳朱婷vs🇺🇸ラーソンという世界トップレベルのスター対決も見てみたい！
3位は穴の少なさで北京。優勝は天津でいこう！

《戸隠的🇨🇳2019-2020 CVL 順位予想》

🥇優勝：天津
🥈準優勝：上海
🥉3位：北京
4位：遼寧
5位：江蘇
6位：広東
7位：山東
8位：八一
9位：浙江
10位：河南
11位：雲南
12位：福建
13位：四川
14位：河北

　長々と書いてきましたが、今季の🇨🇳CVLは例年よりもかなりハイレベルです。
　今週末11/16(土)からはまたLeg2の試合が始まります。Twitterでの私のつぶやき等でもし🇨🇳CVLに興味を持ってくださった方はぜひぜひのぞいてみて下さいね🌟

それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました！(*ᴗ ˬ ᴗ)⁾⁾

note更新はまたいつか！！

〜　とがくしメモ　Vol.07〜

🇨🇳中国リーグに来た外国人選手にどうして今季中国でのプレーを選んだのか？を聞いてみるとそれぞれ独特の理由があって面白いです。一部ですが、私が見聞きしたことだけ挙げてみます。

🇧🇬ラバジエバ：🇹🇷フェネルでプレーもしてみて、コーチやチームとの相性を考えた時、広東のがいいと思ったから。

🇷🇺コシェレワ：自らのキャリアアップのため、伝統的に強く、最近では更に力をつけてきている🇨🇳中国のことを知りたかったし、欧州では有名な🇨🇳方岩監督の下でプレーもしてみたかったから。(🇨🇳方岩氏は欧州の名門🇫🇷カンヌの監督を長年つとめた、中国屈指の海外で実績を積んだ著名な指導者。欧州CLも2度制覇。🇷🇸ラシッチや🇷🇸ミハイロビッチなどの世界トップ選手ほか🇯🇵江畑も彼の下でのプレー経験がある)

🇺🇸ラーソン：年齢のことも考慮し、長い代表シーズン⇨クラブシーズンの連続でのバーンアウト防止のため、比較的短期で終息するリーグを選んだ。上海にしたのは、チームメイトだった🇺🇸マーフィーや🇰🇷ヨンギョンに「とてもいいところだよ」と教わったから。

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