【'20/21 🇨🇳中国女子リーグ】シーズン雑感〜中国バレー新陳代謝の予感

2020年12月22日 23:59

みなさん、こんにちは。
初めましての方は初めまして。

昨年に引き続き、垣花実樹さん企画の #バレーを語るアドベントカレンダー「バレーボール1」にエントリー＆記事を書かせていただきます、"10＝94" こと "戸隠（とがくし）" です。

気付けば前回のnoteを執筆したのがちょうど1年前のアドカレに参加したとき...。随分と長い間放置してしまいました。

寒い日が続いていますね。皆さんいかがお過ごしでしょうか。

本日12月22日担当の私がお話しさせていただくのは、これまた昨年と同じ🇨🇳中国女子バレーボールスーパーリーグ、通称CVLについてです。
今回は、今季CVLを見て感じた気になるチームの成長点、決勝戦江蘇 - 天津戦の振り返りを書いていきたいと思います。

今回も前回の記事に負けず劣らずの一人語りになっているかと思いますが、よろしくお願いします。🙇‍♀️

【1. はじめに】

今シーズンの🇨🇳中国女子リーグに関する情報を少しだけ紹介します。

詳細は中国協会のHPで公開されている資料も参照していただければと思いますが、簡単に試合に関する情報だけをまとめると

・今シーズンは 11月8日〜12月19日まで（⬅︎短っ！！）
　- 開幕前に検疫と練習日を設ける。
　- 第１, 第２Rが 11月12日〜27日
　- 少し間を開けて、第３Rプレーオフが12月4日〜18日

・参加するのは13チーム（コロナの影響を考慮して参加を辞退した八一だけが不参加）
・全試合完全無観客（会場にはネットで生観戦している人たちのライブリアクションを写す巨大モニターがある）
・リーグに参戦する外国人選手は全部で4人　（上海の🇺🇸ラーソン・🇩🇪リップマンと、広東の🇧🇬ラバジエバ・🇺🇸ロビンソン）
・リーグ開幕以降は、リーグが終了するまで国内選手の移籍は認められない
・全試合を咪咕视频が独占生配信

やはりというか、かなり簡素化されたリーグになりました。
もともと延期された五輪シーズンの前ということでまたリーグが短くなるということは予告されていましたが、まさかたった40日で終わってしまうとは...。
期間だけでなく、選手スタッフにも色々と制限がかかりました。
試合前/試合後も他チーム同士のタッチや握手はなしで、手を振るだけ。
無観客＋会場のモニターも映像のみで、音で作られる会場の雰囲気というものは存在しませんでした...。

【2. リーグ全体を見てみてのベスト６】

いきなりですが、今季のパフォーマンスを見ての個人的ベスト６を挙げてみます。

《個人的ベスト６（成長度）》

・S部門
🇨🇳刁琳宇＝チョウ・リンウ (江蘇6番) 182cm/26歳

　これまで彼女のことはひくはや色満載のセットアップを中心に随分と批判してきたのだけど、決勝戦に至るまでの強豪戦での組み立て面は素晴らしかった。国際経験も積んでいるベテランSなだけあって、BA含め真ん中を通し続けることを忘れない選手。今季はMB🇨🇳王辰玥とのコネクションを強化し、縦Bをどんな形でも通せるようになってた。隙あらばMBにより磨きがかかっていたように思う。実際、決勝戦で彼女のトスワークに天津は完全に浮き足立っていた。
　リーグ優勝あと一歩まで迫ったところで怪我に泣いた彼女。来年の全運会までにしっかりと治療して是非ともリベンジを果たしてもらいたい。

(次点：🇨🇳許晓婷＝キョ・ギョウテイ (上海18番) 183cm/22歳

　今季スタメン起用が増えた上海の若手S。去年は広東にレンタル移籍していたためあまり試合で見る機会がなかったが、明らかにベテランS🇨🇳卞雨倩よりも安定感があった。ネットギリギリの返球にワンハンドセットを多用する。経験が少ない分🇩🇪リップマンとのコネクションは完璧とはいかないものの、異なるリズムのセットをしっかり操ってる。加えて後衛での守備力がかなり高い。代表呼ばれるかはわからないが有望株として注目している)

・ OH部門
🇨🇳張常寧＝チョウ・ジョウネイ (江蘇2番) 196cm/25歳

　代表でもおなじみの張常寧。彼女は江蘇ではキャプテンとしてチームを率いているけれど、今季はどこか余裕のなかったこれまでと比べてだいぶ堂々構えていた印象を受けた。何よりコート上で笑顔が増えたな〜。劣勢時にもしっかり点を決め味方を鼓舞するし、シーソーゲームでラリーをとったときは誰よりも大きくはしゃいで盛り上げていた。
　こういう精神面に加えてプレー面でもかなり成長した気がする。特にレセプの脆さが結構改善されてきた。江蘇の攻守の軸として十分すぎるほどの活躍をしてくれてた。

🇨🇳李盈瑩＝リ・エイエイ (天津1番) 192cm/20歳

　成長著しい李盈瑩はやっぱり外せない。NTできっといい経験を積めてきたのだろう、スパイクの威力の強化と助走の切り替えスピードの高速化ができていた。サーブでも徹底して狙われながらしっかりレセプ返せてた。ハイセットをどんな形で処理してくれるのかを見るのも楽しみだったな。後衛の守備力は改善点がみられたものの、パスの正確性に課題ありという感じ。
　天津は早く彼女を海外に放ってほしい。彼女のような若手を育ててみたい指導者きっと山ほどいるだろう。

(次点：🇨🇳钱靖雯＝セン・セイブン (山東4番) 183cm/22歳

世代交代をしてから山東の選手層の厚さを支えるOHの一角。なかなか控えに甘んじることが多かったものの、今季は持ち前のパワーで相手レシーバーを吹っ飛ばすプレーを多く見せてくれた。"女子バレーもパワー"という時代のトレンドに沿っている中国では数少ないサイド選手。一応2017年に代表経験あるんだよな〜。

・ MB部門
🇨🇳張倩＝チョウ・サイ (山東3番) 194cm/23歳

　山東のセンター線の安定感を支える、今年の代表にも追加招集された山東の若手MB。中国選手で唯一と言ってもいい"コミットしても止まらない11"を標準装備した選手。🇨🇳梅笑寒とのコネクションは抜群で、あらゆる状況から強力なクイックで点を取ってくれる。ブロック判断は今一つな部分はあれど、国内選手相手にブロックをさせたら🇨🇳王媛媛より強いかもしれない。派手には目立たないけど、確実に仕留めるべきところを仕留めていくいいMB。(大林素子に似てるとか言ってはいけない。絶対)

🇨🇳薛翼枝＝セツ・ヨクシ (北京) 191cm/23歳

　コロナの関係で合流の遅れた🇺🇸ディクソンの代わりにスタメンを掴んだ新鋭MB。中国で最も欧米のMBに近い火力(打ち方)を持っている選手。今季の途中からOP起用もされ、その火力を生かして得点を量産してきた。ブロックでの見切り癖が玉に瑕。今季は若いSを固定して初のシーズンだったので、これからどんどんコネクションが改善されていくのを期待。

(次点：🇨🇳楊涵玉＝ヨウ・カンギョク (山東) 196cm/21歳

🇨🇳袁心玥/🇨🇳顔妮に続く(と思っている)若手MB。昨季よりもブロック移動の無駄が減った気がする。ブロード攻撃の強化が目下の課題。

・ OP部門

🇨🇳龔翔宇＝ゴン・ショウウ (江蘇) 186cm/23歳

　こちらも代表でおなじみ🇨🇳龔翔宇。攻撃面の進化が著しかった。特にZ5,Z6の境界あたりの、後衛のレシーバーが絶対デフォルトで構えていられないような奥のエリアにBAを叩き込む回数が増えた。前々から攻撃力の低さが穴と言われてたけど、だんだんその穴も埋まりつつあるのかな。
　今季は最後の最後でセッターにコンバートして1試合やってのけた。

(次点：🇩🇪ルイーザ・リップマン (上海) 191cm/26歳)

　もはや説明不要、世界で5本の指に入る大砲OP。自慢の機動力の高さとパワフルな攻撃力を生かし、どんな状況でも必ず攻撃に入って点をとってくれる頼もしい選手。強いて言うならば勝負どころのサーブミスは減らしたい。

・ L部門
🇨🇳倪非凡＝ニ・ヒハン (江蘇) 177cm/19歳

　今季の中国リーグで最も成長した選手がこの倪非凡。江蘇の今季の躍進の陰にはこの選手の個人技の成長がある。🇨🇳張常寧がレセプの負担を減らせているのも、🇨🇳龔翔宇がより攻撃にウェイトを割けるようになったのも、🇨🇳刁琳宇が速いセットを上げられまくるのも、🇨🇳許若業がハイセットを気持ちよく打ち切りまくれるのも、全てこの選手が誰よりも早く先回りして守⇨攻のリズムを整えてくれるから。レセプで任される範囲が広がったり、あの🇨🇳朱婷の強力ヒットを何度も直接上げたりとディグ力も向上している。
　もはや私の中国No.1の推し。間違いなく来年は代表入りするので、この選手のプレーを少しでも多くの人に見てほしい。
　ひょっとしたら東京五輪の中国代表リベロは彼女になるかもしれない。

(次点：🇨🇳王唯漪＝オウ・イイ (上海) 175cm/25歳)

伝統的に守備力に定評のある上海の後衛の守備の要。相手のダイレクトや力だけあってコースの甘いスパイクは確実に上げてくれる。フェイントへの対応力がとても高い。第２Rの遼寧戦ではディグでマッチポイントをとってた。

【3. 決勝戦と今後の展望】

#中国女排 #chinavolleyballleague
2020-21🇨🇳中国女排超级联赛

【最終順位】
🥇天津
🥈江蘇
🥉上海
④ 広東
⑤ 山東
⑥ 遼寧
⑦ 北京
⑧ 浙江
⑨ 雲南
⑩ 福建
11 河南
12 四川
13 河北

天津が13回目のリーグ優勝！
— 10＝94 🏐🌟🌏 (@IZis10ga94vbmin) December 18, 2020

次に、今季を観戦してみて私が感じた、昨季よりも変わったなと思った点を挙げてみます。

①サーブが強化された

これは全てのチームに対して感じたことです。
ボールが新しくなってからやや重く感じられるようになったとか、変化が少なくなった等言われていますが、そういう受ける側の"とりにくさ"を抜きにして単純に球速が速くなったように見えました。もしかしたらコツを掴んだ選手が多いのかも(普段からレセプのお粗末な選手がいたりとかしてサーブポイントではただでさえ多いのですが)。
🇯🇵Vと比較するのは難しいですが、私がみたところJTの🇺🇸ドリューズ選手くらいのサーブを打ってる選手がかなり多いですね。

しかも天津・江蘇・山東あたりの上位チームは、強力なサーブだけでなく、展開に応じてショートサーブを巧みに使い分けるようになっていました。
中国代表のサーブ戦術への注力っぷりが地元チームにも反映されているのでしょうか。

②個人技が成長した選手が増えた＆格差が開いた

今年は代表では国際試合が一切なかった＋リーグも短縮化されたため、選手たちが実戦経験をなかなか積めないのではないかと懸念されていましたが、むしろその分鍛錬の時間ができたことで、個人技を向上させてきた選手が結構みられました。
それがチーム成績に結びついたチーム(山東や江蘇)と、そうはならなかったチーム(北京や河南)はありましたが、それでも自分が知らなかったところで選手が成長してきたというのはやはり見れると嬉しいものですね。
ただ残念なのはそういう成長がみられたチームに共通しているのがほぼメンバー固定のチームであるということ。そのためベスメンの能力はすごく高い＋選手の数はいるけれど、1人欠けると途端に実力が落ちてしまう。
こういう状態が上位のチームでもあるという課題は残ったままです...。

前回のアドカレでも書きましたが、中国リーグは競技レベルとしてはそれほど高いわけではありません。特にブロックシステムなんかはまともに海外の強豪とやりあえるほどの知見も存在していないし、教えられる人材もいないでしょう(郎平氏を除いて)。たぶん最先端の🇮🇹イタリアとかからは10年ほど遅れていると思います。
そしてその中で、代表に選ばれるようなずば抜けた個人技を持った選手を集めてタイトルを総なめにして絶対王者というブランドを手に入れているのが天津です。

ただ中国リーグとて全てのチームが全てのチームで時代遅れというわけではありません。古い時代のバレーで染まり切りながら勝ってる天津に対して、現代バレーを象徴するようなチームが、今回そのアップデートされたコンセプトをもって決勝戦まで勝ち上がってきた江蘇です。1st Tempoの4人シンクロ攻撃を標準装備。サーブが強い。Lの1stも常に高い。
特にこの2チームがぶつかりあった決勝戦は、旧時代の女子バレーと男子化した現代バレーの対決となりました。
試合展開にしても一瞬も気を緩められないほどの痺れる場面続き。間違いなく今シーズンのベストゲームだったと思います。

もしお時間のある方は、決勝の第１試合だけでも観ていただきたいです。

【4. さいごに】

最後まで読んでいただきありがとうございました！

私自身、今年はコロナ禍の混乱に合わせて社会人1年目を迎えることになり、いろいろと忙しい日々が続き、なかなかバレー観戦に注ぐ時間がとれなくなってしまいました。

やはり１度離れてみて初めてその価値に気づくというか、観られることが幸せだなというのは思えるものですね...。
これからも、バレーを観られることに感謝をしつつ、時間を見つけてちょくちょく発信していきたいと思います。

いつも以上に駄文になってしまいましたが、私からはこれで〆とさせていただきます。

それでは、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました！(*ᴗ ˬ ᴗ)⁾⁾

〜　とがくしメモ　Vol.09〜

　今回はCVLの決勝戦をピックアップしましたが、🇨🇳中国リーグにはまだまだ面白いバレーを展開するチームがあります。
　
　非公式ではありますが、今季のリーグのフルマッチアーカイヴ映像はYouTubeにアップされていたりしますので、興味がある方は是非観てみてください。
「中国女排超级联赛」と検索すればヒットします。

🌟個人的にオススメの試合🌟
　・第一阶段　遼寧 - 山東
　・第一阶段　遼寧 - 上海
　・第二阶段　上海 - 江蘇
　・第三阶段　

　上海・江蘇・山東が絡む試合はだいたい面白いです！

※ ちなみに、よく似ていますがCVLとは別に「全国女排锦标赛」と呼ばれる大会もあります。こちらも気になる方はぜひ！！

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