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江戸城無血開城アンサング8

【GM】
人っ気の無い不気味な夜の寺。
本来なら徳川慶喜が謹慎のために寝起きしているはず。厳重な警備があってしかるべきだ。

【マモル】
息を、気配を殺し、警戒を厳にして寺の中を探索する。

【GM】
では、気配を消して進むキミたちは人がひとり歩く音を耳にする。このまま待っていればこちらにやってきそうだ。

【マモル】
二人に目配せをし、隠れるように指示を出す。

【カナエ】
こくこくと頷き指示に従う。
(だだだ、大丈夫、足音がするということは足がある。足があるならお化けじゃない……お化けじゃないよね?)
涙目になりつつ息をひそめている。

【レイ】
ひっそりと、一番後ろに付いて、隠れた。

【GM】
キミたちが身を隠すと、酷く困惑した表情の男が歩いてきた。先ほどカナエが秘術で確認した男だ。

【カナエ】
「あっ……」
小さく息をのむ。
「あの人、あの人です。サンジェルマン伯爵の後にひとりだけ、ここに入った人」
小声でふたりにそう伝える。

【マモル】
「……ふむ。少しばかり話を聞きたいが……流石に危険を犯すのもなぁ」

【レイ】
「今もまだ生きているという事は……サンジェルマンには狙われていない……?」

【GM】
マモルとレイのメモリーに彼に関する記憶は無い。しかし、カナエの中の福沢諭吉が何かを思い出しつつある。

【カナエ】
(……なんだろう、なにか、なにか思い出せそうな……)

【GM】
カナエが意識を自分のものではない記憶に集中すると、不意に彼の名前を思い出した。
高橋泥舟だ。
勝海舟、高橋泥舟、山岡鉄舟。幕末の三舟と称えられる人物のひとり。
そう認識するや否や、福沢諭吉の記憶がフラッシュバックを起こす。

―――――――――――――――――――

【GM】
明治何年のことだったか。キミは久しぶりに麟太郎と再会した。
もちろん嬉しくなどない。

【勝 海舟】
「福沢君。キミ、学校をやってるんだってね」

【GM】
どこで聞きつけたのか、なんの用でやってきたのか。

【勝 海舟】
「相変わらず、つれないねえ。一緒にアメリカまで行った仲じゃないか。今日はキミが学生に話して聞かせられるように、山岡君、鉄舟の話をしにきたのさ。俺より先に山岡君が西郷と交渉してくれたお陰で、トントン拍子に和平の話が進んだわけよ」

【GM】
どうやら自慢話をしにきたわけではないらしい。

【勝 海舟】
「あの時の官軍側の要求は7つ。山岡君はその中の将軍の引き渡しに猛抗議してね、あの西郷が怯んだらしいよ。身柄引き渡しの件は一旦、西郷の一存で棚に上げて、他はもう合意できてたのさ。だから、俺の仕事は江戸を包囲してた連中に、とっとと帰れと一喝することだったわけだ。山岡君には悪いが、その時に事前の合意は骨抜きにしてやったけどな!」

【GM】
結局、自慢話が始まった……

―――――――――――――――――――

【GM】
フラッシュバックの発生による、フラッシュバック表のロールと浸蝕判定をどうぞ。

【カナエ】
1D6 > 3

【GM】
では、福沢諭吉の記憶をはっきりと思い出す。今近くにいる困惑している男は、記憶にあるよりも若いが高橋泥舟だ。
江戸城無血開城に貢献した幕末の三舟。勝海舟、高橋泥舟、山岡鉄舟のひとり。少なくとも、現状敵対するような立場にはないと思うだろう。

【カナエ】
ふむふむ、とりあえず続けて浸食判定いきます!

1D100<=45 > 41 > 成功
1D6 > 1

「……思い……出しました。高橋泥舟さん。……少なくとも、今は私たちの敵ではないはず、です」

【マモル】
「……そうか。なら、隠れている必要は無いな」

【レイ】
「あぁ、そうだな」

どうする、神薙さん行く? 諭吉関連っぽいし?

【カナエ】
ん~、励起してるか乗っ取り状態なら行こうかと思ってたんだけども……。
まあ見るからにビビりの女子が話しかけるほうが警戒も薄くなるやろ!

【マモル】
なお、後ろには武器を持ったイカツイ男女がいる模様。

【カナエ】
コワッ
完全にチョウチンアンコウじゃん。

自分の言葉を当たり前に信じてくれる二人の姿に、鼎は一つ、息を吐く。
……大丈夫。大丈夫だ。
「……あの、私、行きます」
そう囁いて鼎は物陰から身を離す。
「あ、あ、の……!」
緊張のあまり声がひっくり返る。
それでも、どうにか振り絞った声は彼に届いたはずだ。

【高橋 泥舟】
「!? おお! ようやく人に会えた。 お前は女中か? 皆どこへ行った? 上様は?」

続けざまに問い詰めてはくるが、夢の中の住人は相変わらず現代の服装を訝しむ様子は無い。

【カナエ】
「あ、あの、あの……」
そう言えばそもそもあまり男の人は得意ではなかったと、今さら気付く。
害意はなさそうだと言っても帯刀している声の大きな武士にすでに涙目になる。
「わ、わた、私は、神薙鼎、といいます。あなたは……!」
そこまで言ったところで、盛大にむせた。

【高橋 泥舟】
「かんなぎ? 巫女か? お前は聞いたか? あの声を。あの声が響いた後から、人の気配が消えた。こうして探して回ったが、誰一人いない……」

【カナエ】
「こ、声、ですか……?」
むせた息を整えて聞き返す。
「えぇと、私はその声は聴いていなくて……でもあの、中に人がいなくて、どうしようと思っていたらあなたがいたので……」
しどろもどろに応える。
「ええと、本当に他に誰もいないんですか……?」

【高橋 泥舟】
「そ、そうか……私より後から入って来たのか。私がここに来てすぐに、聞いたことのない男の声が響いた。『少し早く着いてしまった。面倒だ、時を進めよう』そんな妙な言葉だった」

【カナエ】
リベレーターのインチキ秘術だ!!!!

【レイ】
面倒だ、じゃないんだよ!!

【マモル】
時間を加速するんじゃねえ!

【GM】
ヴィジョンは夢みたいなものですからね、リベレーターなら秘術である程度操作できます。

【高橋 泥舟】
「その声の直後から、寺から人の気配が消えてな……どこにも誰もいなかった……」

【カナエ】
「そ、そんな……」
(ええと、男の人の声って、多分サンジェルマン伯爵、だよね……?)
「それまでは普通に人もいたんですよ、ね……? う、上様、も……皆さん、一体どこへ……」

【GM】
泥舟が何か口を開きかけたその時、キミたちは視界がぐらりと歪むのを感じた。
微かにサンジェルマン伯爵の声を聞いたような気がし、目の前にいた高橋泥舟はいなくなっている。
ヴィジョンは夢の世界だ。時間や場所が急に飛ぶこともある。そして、そんな急変は大抵の場合、悪夢へと繋がる。
ヴィジョンの大きな変化がキミたちのメモリーを強く刺激した。
全員、浸蝕判定をどうぞ。

【Pマモル】
1D100<=49 > 12 > 成功
1D6 > 3

【カナエ】
1D100<=46 > 1 > 成功
1D6 > 6

【レイ】
1D100<=45 > 26 > 成功
1D6 > 6

【カナエ】
1! 無駄クリティカルだ!!!

【GM】
残念ながら浸蝕判定にクリティカルとファンブルは無いのです。

このタイミングで福沢諭吉のメモリーを持つカナエは勝海舟のホラ話のひとつを思い出す。死んだ人間と話したことがあると言っていた。
そんな時、寺の入り口の方が騒がしくなる。

【カナエ】
「……え?」
目の前で人間が掻き消えたこと、記憶が流れ込んできたことに目を見開き絶句している。

【マモル】
「さて、鬼が出るか、バケモノが出るか……どう思う?」

【レイ】
「そのどちらでもぶちのめす。単純明快で良い」

【マモル】
「そうだな、実にシンプルだ。所詮、守るとか何とか言ってるが……最後にモノを言うのは、力だからな。……さて、と。鼎ちゃん、そっちは……?」

【カナエ】
はくはくと口を開閉していたがその言葉にようやく我に返る。
「あ、あの、あのあのあの、何でかいきなり高橋さんが消えちゃって。夢かな? 多分夢じゃないかなって思うんですけど勝さんは死んだ人に会ったみたいで……あれ、え、え?????」
パニックに陥っている。

【マモル】
混乱している鼎ちゃんの傍らに行き、そっと、彼女の頭に自身の手を乗せる。

【カナエ】
「ふぁ!?」
突然の感触にびくりと大袈裟に体が跳ねる。
「え、なに、なん、お、大野さん???」

【マモル】
そのまま何も答えず、優しく鼎ちゃんの頭を撫で続ける。

【カナエ】
「……あ、あぅ…」
その感触と視線に、徐々に落ち着いてくる。
そして自分の状況をようやく客観視する。
「……っ!! はわ、はわわ……。大野さ、大野さんありがとうございます! 落ち着きました! 私すっごく落ち着いたので!」
言葉以外でどう止めていいものかわからず、謎に動く手はまるで奇妙な踊りにも見えたかもしれない。

【マモル】
「……そうか」
彼女の頭を撫でる手を止め、ゆっくりと彼女の頭から降ろす。
「……慣れない記憶やヴィジョンに触れて混乱するだろうけどさ。どこまでいっても、それはかつて生きた人の夢なんだ。……夢に踊らされて、自分自身を見失わないように、な?」
そこまで言った後にほんの少しだけ微笑み、指先で鼎ちゃんの頬をチョンとつつく。

【カナエ】
乙女ゲームやってたっけ????

「ぴゃ!?」
大袈裟に首がのけぞる。疲れた頬がひどく熱い気がして、わたわたとそこに触れる。
「ひゃ……ひゃい……」
なるほど、これが現実だ。鼎の、鼎だけの体験で、記憶だ。
「う、うぅう……」
でも、もう少し刺激の少ないやり方もあったのではないかとこっそり恨めし気な瞳を大野に向ける。
「気を付けましゅ……」
けれど言葉にしたらもっと恐ろしいことになる気がして、結局それだけを音にした。

【マモル】
「……さて、行くか。どうやら、この旅の終わりが近いようだしな」
そう言ってゆっくりと歩き出す。

【レイ】
ちょうど煙草を一本吸い終えた。
「噛みしめろ、自分って奴を。手放すな、お前が生きた証をな」
そう鼎に言うと、同じく歩き出す。

【カナエ】
目前を歩く二人の後ろ姿を数瞬、呆然と見送ってから、弾かれたようにそのあとを追う。
「は……はい…!」
見えていないことなどわかり切っているのに頷く。何度も、何度も。

【GM】
こうして、キミたちは悪夢へと立ち向かう。

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