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江戸城無血開城アンサング4

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オープニング3 焦土作戦
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【GM】
梓 玲、キミが小さなヴィジョンに遭遇し、江戸の町火消である新門辰五郎の記憶を得てしまった数日後。
道を歩いていると、ひとりの白人男性とすれ違った。
仮に忘れようと思ったとしても忘れられない顔、《秘術寺院》のリベレーター、サンジェルマン伯爵だ。

【レイ】
「……ッチ」
時折起きる白昼夢。
今までは、いつの時代か分からない侍のデジャヴだけだったが、違う記憶がするりと入り込んできた。
いつも通り煙草に火を付け、一服する。
しかし、火を見ると、どことなく焦燥感を感じる。
「……慣れねぇな。……後で話を聞くか」
そう、顔を上げた時、そいつは、サンジェルマン伯爵は視界に入って来た。
「!!」
思い返されるあの日の戦い。魂の奥底からの叫びが大きくなる。それを抑え、男を追跡することにする。

【GM】
キミが男を追おうとすると、彼は不意に振り向くとニヤリと笑った。
人差し指を口元に当て、静かに、という仕草をすると、次の瞬間、霧のようにその姿は掻き消えた。
周囲にいた人々は、忽然と人が消えた光景を目にしてざわつく。

【レイ】
じわりと冷や汗をかく。
「お前がいるって事は……そうか。クズどもが動き出したか」

【GM】
誰もいなくなった空間を睨みつけるキミに声を掛ける者がいる。

【鶴田】
「サンジェルマンを見なかったか?」
息を切らせて走ってきたのは先生だ。

【レイ】
「…………」
親指をくいっと動かし、通行人のざわめきの方を指し示す。
「見たさ。一瞬で消えやがったけどな」
胸ポケットに手を入れ、煙草を差し出した。存外、落ち着いているらしい。
「吸うか?」

【鶴田】
「あ、ああ……あ、いや、路上喫煙は禁止されている場所だ、って、そうじゃない。奴を見張っていたんだが、キミに気付かれて消えたということは……。遊ばれていたな……」

【レイ】
路上喫煙禁止と言われて火を着ける前に煙草を箱に戻す。
「苦労してるな、お前も。……遊び、か。あいつららしい」

【鶴田】
「苦労……か、文字通り身も心もすり減らして戦っているキミたちと比べるべくもないよ。それよりも……奴がわざわざキミに顔を見せたということは、だ。新たなメモリーを得たね?」

【レイ】
「あぁ。火を見ると、落ち着かない。これを機に禁煙してやろうかって思ってた所だ」

【鶴田】
「火を……? 具体的に尋ねよう、いつの時代のどこの記憶だった?」

【レイ】
「恐らく……そうだな。情景的には江戸時代……か? 少なくとも洋服を着ている奴はいなかったな」

【鶴田】
「幕末……か。江戸の街の記憶は無いか?」

【レイ】
「……江戸で間違いないな、”辰五郎”親分って呼ばれてた。火消しってやつだ。手下が沢山いたよ」

【鶴田】
「辰五郎……火消し……」
先生は手早くスマートフォンで検索をかけ、暗い表情を浮かべる。
「幕末の江戸の町火消しだそうだ……確定したな。予報士から東京でヴィジョンが発生することは聞いているね? 場所が一致した大規模ヴィジョンだ。しかも、仕掛け人はあのサンジェルマン伯爵」

【レイ】
チッと舌打ちを一つ。
「……穏やかじゃないな。だが考えようによっては……。奴に一泡吹かせてやる機会が訪れたって事だな」

【鶴田】
「……やる気でいてくれるのはありがたい。敵は《秘術寺院》だ。またぞろ実験と称してカタストロフを起こすに違いない。頼む。奴を止めてくれ」

【レイ】
「願ってもない、もちろんだ」
口ではそういいつつ、力の差は歴然。顎に手を当てて、考えを巡らせた。
「……して、人員は?」

【鶴田】
「大野君と、まだ若い神薙君……ああ、知り合いだったか。今のところキミを入れて三人だ」

【レイ】
「あぁ…あの死にたがりと、泣き虫か」
律儀に喫煙スペースに立ち寄り煙草に火を着ける。
「どうにかなる、どうにかするさ。お前は、お前に出来る事を」
そう言って拳を突き出した。

【鶴田】
苦笑しながら拳を上げる。
「もちろん他にも声は掛けている。だが、中枢に辿り着きやすいのは当時のメモリーを得てしまったキミたちだ。頼んだ」
こんと拳を当てた。

【レイ】
「覆してやるよ、クズどもの思惑をな」

【GM】
先生は力強く頷くと、それじゃあまた、と言って去って行った。

【レイ】
「さて……と」
火を消して、空を見上げる。
「……せめて、この手が届く場所は、守り切ってやる」
そう、呟いて歩き出した。

【GM】
翌日。大規模ヴィジョンは発生し、フラッシュバックがキミを襲う。
新門辰五郎の記憶が流れ込んだ。

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【GM】
火事と喧嘩は江戸の華。
そんな環境で花形の町火消として数十年生きてきたキミは耳を疑った。
目の前の幕府のお偉いさん、勝麟太郎はとんでもないことを言い出した。

【勝 海舟】
「つまりだ。俺が西郷の説得に失敗したら……。全部燃やしてくれ。江戸の町を。全部だ」

【GM】
キミは火消しに付け火を命じるとはどういう了見かと詰め寄る。棟梁として、決して呑める話ではない。

【勝 海舟】
「ちゃんと住民は避難させるさ。んで、真っ向戦ったんじゃ、どちらに転ぶかわからねぇ。そこで、フランスの英雄ナポレオンの快進撃を止めた焦土作戦ってのを仕掛けるのさ」

【GM】
戦のことはわからない。だが、新政府軍が江戸に攻め込めば少なからず町は燃えるだろう。
娘のお芳が縁あって将軍様の側室になったばかりだ。これは……断れない。
キミはしぶしぶ承諾する。
しかし、火を消す仕事を長年してきたのだ、大火をわざわざ引き起こす難しさも知っている。
疑問をぶつけると、麟太郎はカラリと笑って言った。

【勝 海舟】
「おう、戦支度で用意してある油と火薬がたっぷりだ。好きなだけ使いな」

【GM】
この言葉で、本気なのだと理解した。

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【GM】
意識が戻ると、キミは平屋の立ち並ぶ江戸の街に立っていた。
フラッシュバックが発生したので、フラッシュバック表のロールと浸蝕判定をお願いします。

【レイ】
1D6 > 2

【GM】
新門辰五郎の記憶から見て、今いる江戸は慶応4年3月。
官軍が幕府を制圧せんと江戸に向かっている差し迫った状況だ。

【レイ】
1D100<=50 > 52 > 失敗

【GM】
では1D6を振って抵抗値の減少をお願いします。

【レイ】
1D6 > 4

【カナエ】
お! 励起状態だ~

【GM】
では、レイさんは新門辰五郎のメモリーが励起状態となります。
意識はレイさんのままですが、記憶がだいぶ混じっている状態です。
というところで、オープニングを終えます。

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