デッキは目的、カードは手段【赤白人間アグロ】
はじめに
MTGにハマってくれた友人のためと、三歩進めば考えてたことを忘れる自分のために、以前アドバイスを求められた赤白人間アグロ(以下、ボロス人間と表記)のマリガンとプレイングについてのメモ書きを残します。
参考デッキリストについて、若干の違いはあった気もしますが概ね同じだと思うので、晴れる屋さんの記事で紹介されていたものを使用します。
※注意:ただのMTG好きのメモ書きなのでそれ以上の効能はありません。
そもそもデッキとは
まず全デッキ共通で、マリガンやプレイングについて知る前に理解しておきたいのが、そのデッキが何を「目的」としたデッキかということです。
もちろん大体の場合は「勝利」を目指して組まれているワケなんですがより細かく、「どのように勝利を目指すのか」デッキコンセプトを自分で理解しているかどうかは、対戦中の戦略を考える上でとても重要です。
そしてその戦略を達成するための「手段」が、各カードになります。
スタンダード範囲だけでも非常に多種多様なカードプールの中から選ばれた選りすぐりの60枚+αは全て、この一貫した「目的」のためにあるのです。
そのデッキがどのように勝利条件の達成を目指して組まれたものなのか、各カードはそのためにどのような働きを期待されているのか──それを理解しておくことで、マリガンやプレイングに確固たる指針が生まれ、迷いにくくなります。
ボロス人間の「目的」
ではボロス人間はどのような目的で組まれているのでしょうか。
まず、このデッキはビートダウンデッキです。
ビートダウンの目的は「(主に)クリーチャーを使って相手のライフ20点を削りきって勝利する」となります。
では戦略はそれだけかといえば、もちろんそうではありません。
簡単に「ライフを削りきる」といってもそこには「速度感」があります。
大まかに「高速」「中速」「低速」に分けられるこの速度感はそれぞれ、その「速さ」と「質」をどう割り振るかで決まります。
ボロス人間はどうかというと、とにかく前のめりな低マナ域にカードを集中させ、相手が「質」を発揮してくるターンが来る前に「速さ」で勝負を決めてしまう「高速」デッキをコンセプトに組まれています。
つまりボロス人間の目的は
『(主に)クリーチャーを使って相手のライフ20点を速やかに削りきり、
相手がカードの質で勝負してくる前に勝利する』
となります。
ボロス人間の「手段」
ではボロス人間はこの目的を達成するためにどのような手段を用いているのか、各マナ域ごとにカードを確認していきましょう。
1マナ域
このマナ域のカードを大量に採用しているのが、高速デッキの特徴となります。
最高の「速度」と引き換えに「質」は最低限となるこのマナ域、その中でも選りすぐられたこれらは特に「打点」と「多用途」であることを重視されています。
「打点」なんて高いほどいいだろ」と言ってしまえばそうなのですが、これは低パワー帯(そしてそうなりやすい低マナ域)で特に重要となります。
例えば、相手ライフ20を削りきるのを前提とした時、パワー10とパワー11はどちらも2ターンクロックで正直大差ありません。
ですがパワー1とパワー2では20ターンクロックと10ターンクロック、なんと10ターン分も勝負を決する力に差があります。
1ターン目に放置できない戦力を出してスタートできるかどうかは、高速アグロデッキであるボロス人間にとって最重要なのです。
一方で「多用途」であるというのは実質「質」を求めているようなもので、話が違うじゃないかと思われるかもしれませんが、これはMTGが対戦ゲームであることに起因しています。
MTGがパワーの数値が20点に達するのを目指す一人用ゲームだったならパワーだけを見ていればいいのですがMTGには当然、対戦相手がいます。
そして対戦相手もゲームの勝利を目指して対面しているワケで、ようするに「目的」は妨害されるのが当たり前なのです。
ボロス人間の場合は、「速やかに勝利する」という目的を相手が指をくわえて見ているなんてこともなく、なんとかゲームの決着を遅らせようとしてくることが多いでしょう(速度勝負を挑んでくるデッキの場合もありますが)。
その際に勝負を決めきれればいいのですが、そうでない場合だって当然あります。
そうなると1マナ域のカードというのは質が最低限なワケで、活躍はかなり厳しいものになります。
それでも別の活用法がある「多用途」なカードを採用することで、「相手の妨害をくぐり抜ける」という第二の矢で「速やかに勝利する」という目的の達成を目指しているのです。
有望な信徒
単体だとパワー1だが、2,3ターン目に展開した戦力とともに攻められるとマナ域以上の打点を出せる。
2/2ブロッカーなど相手に徴兵士官なら殴りづらい状況でもサリアと一緒に殴れる点も優秀。
逆にいえば仲間を丁寧に処理されるとプレッシャーを与えにくく、かなり自分の動きだけを見ているカードとも言える。
ただブン回りオンリーではないのが下の置物除去能力の存在で、イクサラン参入で+1カウンターを置くカードが増えたのも追い風。
一言役割:ブン回りアタッカー兼置物対策
徴兵士官
4枚採用のカードから先に紹介。
単体でパワー2、先鋒として申し分ない上にゲームが不本意に長引いてしまった場合にそのフィルタリング能力で中長期戦を支えてくれる、このデッキのエース。
一言役割:先鋒兼補給要員
月皇の古参兵
1/1で最もか弱い存在。
一見ボロス人間の目的に合っていないようだが、「人間」であることとその「多用途性」に支えられて2枚採用されている。
このカードは人間であることにより、銅纏いの先兵の恩恵を受けることができ、最低限の打点を確保できるのが大きい。
また、このカードは最低限の戦闘力だが2枚分の戦力として働き、回復能力を持っている。
総じて同じような目的を持った高速デッキに対して強く、気軽に相打ちを行う要員として扱える。
コイツが立っているところに徴兵士官で殴っていく気がするかという話だ。
一言役割:使い減りしにくい第二戦力
内なる空の管理人
クリーチャー3体をタップして強化、殴ると強化されるというデッキコンセプトに合致した有望な信徒と比べて、なんだお前はと思うかもしれないが、このカードならではの強みもある。
例えば相手に3/3などを立てられてしまい、仲間含めて誰も殴れないという状況で、有望な信徒は何の価値も発生させられないままデッキは目的達成から遠ざかっていく。
しかし管理人の場合は展開しただけのクリーチャーでも自身の強化に充て、サイズと回避能力の両面から状況突破能力を得るだけでなく、なんなら占術で除去などの状況打開手段を探すことができるという、「相手の妨害をくぐり抜けて速やかに勝利する」二の矢に特化した性能を持っている。
人間なのでパワー2にでき、打点がまるでダメというワケでもない。
ただ複数枚引いてしまうと能力を発揮しきれず、二の矢を充実させすぎるのも本末転倒なので採用枚数は2枚となっている。
一言役割:サブプランアタッカー
2マナ域
他の速度感のデッキではよくスタートラインになるマナ域。
高速デッキでは早くも強烈な攻めとなるのを目指して採用されており、「打点」も「多用途性」も両取りしたようなカードが並んでいます。
銅纏いの先兵
打点と妨害耐性を兼ね備えた、「人間デッキ」にする大きな理由。
当然エースカードだが性質上、真っ先に除去が飛んでくる。
2ターン目に目先の打点を1点向上させるために出すのではなく、サリアを優先してから後詰めとして出すなどの戦略が必要な場合もある。
一言役割:後詰めサポーター
スレイベンの守護者、サリア
相手からの除去効率を落とすだけでなく、相手のデッキタイプによっては機能不全に陥らせることもあり得る妨害耐性と妨害能力を兼ね備えた最高クラスの小型クリーチャー。
パワー2先制攻撃で戦闘力も高く、まるで隙がない。
一言役割:攻防一体型エース
太陽の執事長、インティ
友人からよく分からない扱いを受けていたかわいそうな新顔。
実際このメンツの中では少々特殊な使い方が必要なカードだが、その実は打点と多用途性を両立した期待の新人である。
打点の面ではこのカードしか成しえない状況が存在し、それはトランプルを与えるという点。
白の高速デッキで時折ある負けパターンの例に、高パワーのエーデリンをチャンプブロック(弱いクリーチャーで一方的に打ち取られても構わないというブロック)で凌がれている間に打開策を立てられて逆転負けするというものがある。
白が持ちえない突破力を与えるこのカードは赤を足す理由となっている。
また多用途性の面でこのカードの真価が発揮されるのは、主に出した次以降のターンとなる。
土地をアンタップし、さぁ攻め続けるぞと攻撃を宣言するその前に手札を確認する。
使いたいカードばかりなら問題ないが、MTGは常にそういうワケではなく、「賞味期限が切れそうな1マナのカード」「もう戦場に出ている伝説のカード」「必要以上に引いてしまった土地」などが混ざっているものだ。
このカードは攻撃をトリガーに打点向上を行うだけでなく、そういった手札の「不要牌」を別のカードに変換する機会を与えてくれる。
この能力は高速デッキと相性がよく、このボロス人間には3マナさえあれば使用不能なカードは存在しないため、実質タダで打点向上と不要牌交換を行える非常に強力なものとなっている。
このカードを使う上での注意点が一つ、能力を使うターンの戦闘前メインフェイズ中に、不用意に手札から土地を置かない方がいい。
このカードの能力で土地がめくれてしまった際に、置けたはずのそれを置く権利を失ってしまうからだ。
一言役割:突破力サポーター兼潤滑油
勇敢な旅人、ケラン
確か友人のデッキでは呪文書売りか何かだったので軽く紹介。
2/3という単純に殴りやすいサイズとアドバンテージ獲得能力で採用されている枠。
強くデッキを後押しするカードではないので実際呪文書売りなどと入れ替わっても不思議ではない。
呪文書売りの場合はマナを余計に食うので少し中長期戦を見据えた感じになる。
一言役割:戦闘・補給要員
3マナ域
このデッキの最高到達点。
ダメ押しを担うカードで、自身の高打点と面展開で無理やりにでも押し切る能力を両立している。
輝かしい聖戦士、エーデリン
タフネスが高く確定除去以外で退場しにくいフィニッシャー。
その攻撃性を活かせるように1,2ターン目から隙間なく展開していきたい。
先兵から繋げれば出てくるトークンも2/1で、相手にとって無視できないカードが横並びするのでかなりの勝ちパターン。
一言役割:最強フィニッシャー
千番目の月、アニム・パカル
追加のエーデリン。
そちらより初期サイズが小さくトークンも人間サポートを受けられないので次点といった感じだが、一応+1カウンター関連とのシナジーがあるなどこちらだけの特長もある。
一言役割:フィニッシャー2号
補助スペル
「高速デッキなので序盤からクリーチャーを順番に出して勝ちます」が達成できればそれは一番ですが常にそう都合よくもいきません。
主役はクリーチャーですが、早期決着を目指すための補助スペルも少量必要です。
失せろ
かなり万能に近い除去。
突破できないブロッカーのこじ開けやジャマな置物の排除などを最小限のマナ消費で行える。
このデッキの場合、目的の「早期決着」で地図トークンを使わせないうちに相手を倒してしまうという点で噛み合っている。
マナ基盤
たかが土地、されど土地、マナに関する話は深く複雑な話になるのでサッと説明だけしましょう。
このデッキは極端に言えば土地3枚で十分のデッキです。
2+2や3+2マナのカードで攻めたい場合もありますが、それを加味しても4,5枚あればよく、それ以上は引いただけムダになってしまいます。
そのため一般的なデッキに必要とされる土地24枚より少なめとなっています。
また、赤白のデッキですが「山」は採用されていません。
1ターン目からの展開が重要なデッキなので、白マナを出せないカードはそれだけでマイナス要因となります。
同様の理由で、タップインとなる土地は日没の道1枚に抑えられています。
白マナが出ないカードですが、それでもミシュラの鋳造所と英雄の公有地は採用されています。
それだけ、土地でありながら戦力になったりスペル能力を発揮してマナ基盤以外の役割を持つカードは強力ということです。
「土地は必要だが外れ枠」というMTGの基本概念を破っている存在ですから(英雄の公有地は実質赤マナと少量の白マナも生み出せる)。
このように土地の選択も、そのデッキの目的に合致したものとなっています。
ボロス人間の「マリガン」
説明が長くなってしまいましたが本題です。
ボロス人間のマリガンはどのように行うべきでしょうか。
とはいえここまで長~い説明をしてきたおかげで、答えは非常にシンプルなものになります。
このデッキの目的は「クリーチャーを使って相手のライフ20点を速やかに削りきり、相手がカードの質で勝負してくる前に勝利する」になりますから、マリガンもそれに準ずるのは当然です。
つまり、速やかに削りきれる手札であるかどうかが焦点となります。
強力だからといってエーデリンとアニム・パカルだけの手札をキープしても中々勝てません。
このデッキは1・2・3とキレイに動けるかどうか、「テンポ面」が非常に重視されます。
そう都合よくいかなくとも、1マナ域とサリア・先兵+αといった相手が妨害しづらく押し切れそうな手札などもキープに値します。
大切なのは、「数ターン後、自分はどのような盤面を構築できているのか」「目的達成のためのビジョンが描けているか」といったところです。
ボロス人間の「プレイング」
こちらもまた、ここまでのカードごとの説明である程度行っている上に、マリガンはその後のプレイングを加味して行うことから半分説明し終わっているような状態ですが、さらに細かい部分について。
相打ちするべきか、何体か討ち死にしてでも攻撃するべきかといった判断の分岐点は、特にこのデッキではよく起こります。
そういった場合でも1,2ターン後、お互いの盤面とライフはどうなっているかと想定することや、「エーデリンや失せろを引いてきたらどうなるか」と考えるなど、ビジョンを描けているかが重要になります。
あらゆるプレイングは「状況による」と言えてしまうので一言で説明は難しいですが、考えておきたいのは「自分のカードの価値を最大化し、相手のカードの価値を最小化する」を目指すという点です。
そしてこの価値は、デッキの目的によってそれぞれ変わります。
だからデッキの目的を把握し、どのようなカードを達成の手段として用いているのか、理解が重要となるワケです。
おわりに
つらつらと書き連ねてみましたが、やはり考えていることをそのまま書き出そうとすると非常に膨大で複雑化してしまうので分かりやすく必要な分だけまとめるのが難しかったですね。
実際に回しているのを動画で配信するなどがしたくなりました。
また、実際にプレイするMTGは、「こんなに考えないといけないのか」ではなく「こんなに考えることもできるのか」といったゲームなので、興味ある分だけ話半分に聞き流して、楽しく遊んでくれたらうれしいです。
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