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知らないから怖くない。でも、ひとのことは言えない。
随分昔のことですが、6月の南アルプス(鳳凰)を登った時のこと。
夕方、山小屋に入ったら、中で若い男がふるえていた。
話を聞くと防寒着を全然持ってきていない。
都会は既にかなり暑くなっていたので、何の用意もしてこなかったようです。でも、当然ながら、山にはまだ雪が残っていた。
彼は身体を小さく丸く縮めて、歯をガチガチ鳴らせていました。
標高で1000メートル上がる毎に気温は6度下がるそうです。
標高2500メートルなら、東京あたりと比べれば理論上は15度低い。
寒いわけです。
しかし、昼間、日が出ているとかなり暑い。
だから、初めて山に行った人は、暑い昼間には夜の寒さが想像できないかもしれない。
知らないから、平気でやれるわけです。
全く別の時ですが、谷川岳を下っている途中で、オジサンとオバサンにすれ違いました。2人は全くの手ぶらで、荷物を全然持っていない。
すれ違う時に、オバサンが「余計な水、もっていませんよね?」と言います。
喉が渇いているけど、水が欲しいとは言いにくかったんでしょう。
しかし、喉が渇いていたのはオバサンじゃなくてオジサンの方。
オジサンが苦しそうな顔をしています。
私の相棒は1L位水を持っていたけど、オジサンは水筒ももっていない。
だから、その場でガブガブ飲んでもらった。
すぐにまた喉が渇くのは分かっているけど、他に方法はない。
そして、その時空は晴れていたけど、雲が湧いていて雨が降る可能性が強かった。
なので、私は「雨が降るかもしれないから、下りた方が良いですよ」と言ったけど、彼らはまた登っていきました。
それから2時間位山道を下っていたら雨になりました。
あのオジサンとオバサンは多分ビショビショになったでしょう。
これも山では雨具が必需品だとは知らないから怖くなかったんですね。
知らないことは怖ろしい。
でも、こういう人たちをバカだと片付けるわけにもいかない。
なぜなら、私も、少し考えれば、やってはいけないと分かることをやってヤバかった経験があるから。
誰でもそういうことありませんかね?
私の場合は、後から考えたら、何かに守ってもらったとしか思えないこともあった。
多分、すべてに通じることだろうけど、結果を予見することは難しい。
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