読むべき。でも真似してはいけない『独裁体制から民主主義へ』

「100分DE名著」で紹介されていた『独裁体制から民主主義へ』を読みました。大変感銘を受けました。

100分で名著のテキストを読む前は、「今の時代に読むべきではない本」なんじゃないか、と疑っていました。理想主義的な平和活動論、市民運動・政治運動論なんじゃないか、と思っていたのです。

ところが読んでみればそうではなかった。テキストに続いてすぐに本書を手に入れて、読みました。

書かれていることは、簡単に言ってしまえば「独裁体制に非暴力的な手段で対抗して、民主主義体制を築こう。必要なのは計画、戦略、戦術と査定。つまり、マネジメントだ」ということです。そして計画や戦略の目標を「独裁体制の打倒」ではなく、「民主主義体制の確立」に置いていることが、本書をさらに素晴らしいものにしています。

「目標を立てて、マネジメントせよ」というのは、近年のマネジメントを学んだことがあれば、誰でも当たり前に思うことです。が、こと「政治」となると、人は現実的な取り組み方から離れて、理念に基づく愚直な取り組みを好んでしまうようです。
本書はそうした取り組み方をかなり強く批判しています。

思うに、日本の政治活動は、こういう現実的なマネジメントを取り入れるべきではないでしょうか。「市民派」とか「草の根」とか「リベラル」とか、コトバや理念が先行して、現実的な目標達成の取り組みが足りない。

政治に興味がある人は、本書を読むべきです。

ですが、真似してはいけない。なぜなら、日本は独裁体制ではなく、民主主義国家であるから。

「政府や自民党の政策にいいようにされているじゃないか」という意見もあるでしょう。
しかし、私が思うに、政府・自民党が独裁体制を敷いているのではなく、我々は強力な行政国家-手続が支配する国家-の中に生きているために、「自分たちの意見がなかなか反映されない」と感じてしまうのではないでしょうか。
むしろ、そこには個人的な権力者はおらず、政治的・行政的手続が政治・行政を動かしているのではないでしょうか(このあたり、マルクス主義者なら「疎外」という語を使うかもしれませんね)。

したがって、我々は、独裁体制と戦うつもりでこの本を読むのではなく、
「行政国家・手続が支配する政治・行政に対して、どうすれば勝利を納め、自分たちの望む政策を実現できるようになれるか」を学ぶために、現実的なマネジメントの考え方を知るために読むべきだと思うのです。

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