見出し画像

人に向かうWhyとシステムに向かうWhyの差とは

あなたは「なぜ?」をどう使っていますか?

・なんで、また○○したの?
・なんで、まだできないの?

例えば忘れ物を繰り返す子どもや生徒、指示した仕事がなかなか完了しない部下に対して、こんな質問を投げかけたり、もしくは現場に遭遇したりすることはありませんか?

このような Why を使った問いかけは「問いの定義と機能について」で紹介をしたとおり、形式としては原因を問う疑問形ですが、問いを投げかけられた側が「なぜ私はまた忘れ物をしたのだろうか?」と原因の分析や内省に結びつかず、むしろ、その場しのぎの言い訳をどうしようか、という気持ちになってしまいそうです。

Whyを五回繰り返して見えてくるもの

一方で、課題を分析するのに「Whyを5回繰り返しましょう」というトヨタ式の5W1Hは、有名で多くの企業で実践されています。つまり「Why」が機能する場合と、まったく機能しない場合があるのですが、その差はどこから来るのでしょうか?

原因の1つは、Whyがどこに向かって問いかけているか?という差にあります。Whyが向かう場所が「人」っている場合と、「システム」に向かっている差です。

例えば「何度も忘れ物をする」という事象に対して、「なぜ、あなたは忘れ物を繰り返すのか?」という「人に向かうWhy」と、「なぜ忘れ物を繰り返すという現象が発生するのか?その現象が発生・再現する構造的な問題はどこにあるのか?」という「システムに向かうWhy」では、対話の質が変わっていきます。

もし工場で製造した商品の中で不良品が出てしまった場合、製造工程に関わったスタッフに対して「なぜ、あなたは作業をミスしたのか?」と人に向かった Why を5回も繰り返すと、最後の方はただの個人攻撃や人間性の否定までつながるリスクがあります。

改善すべきは「個人」だけではなく、その個人のミスを誘発するような職場環境や制度上のミス、社内ルールの不徹底などが原因かもしれません。では、個人に向かう Why 以外にも原因があるでしょうか?

感情表現を「問い」の形で伝えてしまうリスク

もう1つの原因は、「何度も忘れ物を繰り返されて、私は悲しい」といった感情の表現を「なぜ?」に込めてしまっているケースです。そういった攻撃的な感情が「問いかけ」に込められてしまった場合、問われた側は防衛モードになってしまっても、致し方ないでしょう。

もちろん人間ですので、悲しいことや悔しいこと、腹の立つこともあります。しかしその感情表現を「なぜなの!?」と、ネガティブな感情も含めて発信していますと、問いかけのロールモデルとして悪い方向で定着する可能性があります。

「感情の伝達」と「原因分析の問いかけ」を切り離す

ここで言いたいのは「感情を伝えるな」ということではなく、「感情の伝達」と「原因分析の問いかけ」は、切り離して伝えましょう、ということです。

・何度も忘れ物を繰り返されることで、いま私は悲しんでいる。
・繰り返す原因がどこにあるのか一緒に考えたいので、いくつかの質問をしてもいいかな?

例えば上記の場合は、「感情を伝える」フレーズと「原因分析の問い」は、切り離して進めています。さらに「なぜなのかを一緒に考えたいので質問をしても良いか?」と、原因を分析する質問をすることに対する同意も取っています。

このように「あなたを攻撃する意思はない」ということを、明確に伝えていくことも大事なポイントです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?