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外国人技能実習制度に対する思い

2022年8月5日の毎日新聞社説に「外国人の技能実習制度 廃止し人権守る仕組みに」を読んだ。これは以前から問題意識を持っており、2020年に毎日新聞に投稿したが掲載されなかった。

原文は社説:外国人の技能実習制度 廃止し人権守る仕組みに | 毎日新聞 (mainichi.jp)

ここで問題点として以下の事が挙げられている。
1.     外国人労働者の人権がないがしろにされている。:労働関係法律が守られていない。
 ● 低賃金
 ● 長時間労働
 ● 劣悪な職場環境
 ● 暴行

人権問題に関しては米国人身取引報告書や国連の人種差別撤廃委員会が問題視、懸念を表明している。

(私見)アメ公が昔行ってきた奴隷制度と同様の問題ではないのか?

2.     原則として転職できず失踪するケースが増加している。

技能実習制度や課題、技能実習生の人数の推移などについては、毎日新聞で挙げてある数字と齟齬はあるが、マイナビ 外国人採用サポネット 「最新版法務省統計|技能実習生の人数推移・国別割合と現状 人数枠についても解説」(2022年6月1日)最新版法務省統計|技能実習生の人数推移・国別割合と現状 人数枠についても解説 | 外国人採用サポネット | マイナビグローバル (mynavi.jp)

これには、上記問題のほか、以下の事項も指摘されている。

(1)  雇用している企業への監督を強化する措置を取って来たものの実効性は上がっていない。(毎日新聞社説から)

これはマイナビ 外国人採用サポネットによると、技能実習手続きの煩雑さも起因するのではないかという指摘です。
技能実習雇用主は以下の書類を備える必要がある。
 ● 労働法で定められた賃金台帳、出勤簿
 ●    毎日の活動を記録する技能実習日誌
 ●    講習実施記録

(私見)これらは書類作成に慣れていない、時間を割きたくないと思われる零細企業や農家などには相当壁が高いのではないか?

(2)  悪質な送出機関による違約金の徴収(マイナビ記事から)
送出機関とは、本国で技能実習生を募集し、日本企業へ紹介などをする機関で、失踪を防ぐためにあらかじめ違約金を取り、それが技能実習生の借金になっているケースもある。そのため、日本に来て失踪しても、そのまま帰国せずに不法滞在して働く人が出てくる。

(私見)人身売買と同じ。フィリピンホステスが日本で働く時、日本入国後パスポートを取り上げられるケースはよく聞く。これと同様の事が起きているケースもあるのではないか?

(3)  送出機関、監理団体の説明不足(マイナビ記事から)
送出機関と監理団体が、実習生面接時、仕事のきつさや残業時間の多さなどを適切に伝えていない。

技能実習生制度をもう一度考えてみよう
(1)  制度の目的:
人材育成を通じた開発途上地域等へ技能、技術又は知識の移転により国際協力を推進する。(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律。「技能実習法」)。
ただし、技能移転を目的としているため、技能実習生は3年もしくは5年たったら本国へ帰る必要がある「永住」のない在留資格

実情は
● 安い労働力、人手不足解消の手段で国際貢献に名を借りたまやかし制度

テレビ等で報道される農作業や加工食品業や裁縫作業に従事している技能実習生の様子を見ると概して楽しそうに働いているようには見えないし、何か作業の歯車にされているようで、とても一連の知識・経験・技能を得て帰国して、その国に新風を吹き込める体制になっているか大いに疑問を感じる。

中には単純に母国より賃金が高いというだけの理由だけで日本に来たがる“技能実習生”もいないとは断言できないが、1で書いたような条件下で日本の高い物価・家賃を払い、更に自分を犠牲にしてまでも国の家族の為に仕送りをしている彼らを尊敬・応援せずにはいられない。

遅ればせながら政府は技能実習生制度の見直しの議論を始めるため、年内に有識者会議を設置するという。

制度改革で望むことは、
 ● 日本でしかできない経験をたくさんして貰う
 ● 日本人の友人を作り、日本を好きになって帰ってもらう。
 ●    受入れ企業を始め、皆がそれらを意識するだけで「技能実習生」という名の日本のファンが増え、結果的に日本の将来が明るくなる。(マイナビ記事から)

付け加えるなら
 ● 風習・考え方はそれぞれの国で違う。雇用者側だけではなく、技能実習生側の風習・考え方を相互理解し、海外に行かない国際親善を行って欲しいと思う。

ただ一つだけ“有識者会議”に注文をつけたい。
 ● 「やってますよ」感だけで終わって欲しくない。

概して“有識者会議”というのは、政府の意向に沿って頭で考えた表面的な議論に終始し、現場からかけ離れた提言を行う場合が多いと感じている。
そう「やってますよ」感だ。
書類書式・記入方法も含め現場に入り込み、雇用側・現場の実情・問題点の洗い出しを体験し、それからどのように改善していくかを考えて欲しい。時として事前検証も必要。大体お役所制度は制度開始後に欠点が出てくる。

 ● 初めから経営側や役所の立場で考えてはならない。
それは、「外国人の就労拡大を掲げて導入された特定技能制度(2019年4月導入開始)を改善し発展させるべきでないか」という毎日新聞の社説を、その制度の実態調査・検証もせず、そのまま継承する事ではないと思う。

なお、「特定技能制度」の改革については、日本弁護士連合会 「技能実習制度の廃止と特定技能制度の改革に関する意見書」2022年(令和4年)4月15日技能実習制度の廃止と特定技能制度の改革に関する意見書 (nichibenren.or.jp)を参照されると興味深い。


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