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電波戦隊スイハンジャー#196 サンちゃんメタちゃんよろしくね

第10章 高天原、We are legal alien!

サンちゃんメタちゃんよろしくね


紺野蓮太郎が大天使メタトロンと人差し指の先を合わせて友好的な挨拶をしていた同時刻。

京都鴨川沿いの川床付き屋敷、ミュラー邸のインターホンがぴんぽーん♪と鳴り、ミュラー夫人上條孝子が15、6才位の清楚な感じの少女をモニター越しに見て…

あ、この娘さん人間でないお客さんの方だわ。
と判断して
「まあまあ今度はどちらの大天使さんで?」とにこやかに応対する程夫人は非日常に慣れきってしまっていた。

「わたくし、大天使ガブリエルの代理で榎本葉子さまのケア担当を仰せつかりました天使サンダルフォンでし」

と髪の前半分を頬の辺りでカットした70年代から80年代の少女漫画で流行った姫カットと呼ばれる長い白髪にルビーのように紅い瞳を持つ美少女天使は黒いセーター、タータンチェックの膝丈スカートにざっくりした毛糸編みの白ニーハイという今時のギャルという出で立ちをしていた。

が、西欧の貴族階級みたいに優雅な仕草で「ガブリエルお姉さまの依頼で降臨致しました、以後お見知りおきを」とスカートの両端をつまんでお辞儀をしたので、

降臨時にハンマー一振りでこの邸を吹っ飛ばしたウリエル。

「自分で自分に仰せつかったから来た」とのたまいながら巨大な海外旅行用トランクを肩に担いで現れたガブリエル。

に比べると…

やっと常識的な子が来た。

と世界的指揮者クラウス・フォン・ミュラー夫妻と孫娘の榎本葉子は胸を撫で下ろし、
「サンダルフォンはん、我々一家はあんたを歓迎するで」

とこころもち両手を広げて和やかな気持ちで油断してたのがいけなかった。

こちらこそ、と両足を肩幅に広げ、踏ん張った姿勢になった姫カット美少女は大きく息を吸い込むと…

「よろしく、よろしく、よろしくねええええーーーーーっ♪♪♪」

申し送り時にガブリエルお姉さまから教わった人間界での礼儀その一、笑顔で元気いっぱい挨拶。

を体内の空気を全て使った高周波過ぎるソプラノで放ち実践した。

きいいぃぃぃん…と内耳を震わせる振動にたまらず一家は耳を塞ぎ、電球から一個五万のバカラのグラスに至るまでの邸内にある全てのガラスというガラスが砕け散った…

こうして
保護観察対象児童観音族榎本葉子の心身のケアの為に京都鴨川に降臨した大天使サンダルフォン。

天界の歌を司るとんでもなくめんどくさい天使がミュラー邸にやって来たのである。


「へぇー、サンちゃんとメタちゃんって双子の姉弟なんだぁー」

とミュラー邸のリビングの革ソファーで勝沼悟特製チャーハンをパクつくのは戦隊のきららホワイトこと音大生小岩川きらら。

ミュラーから緊急支援要請を受けた悟の頼みで重箱12箱ぶんの
「勝沼フーズとコラボしたあのホテルグルメリュウチェンチャーハンがお手軽に出来る特製たれ」
で味付けしたチャーハンをデリバリーして家中の割れたガラスの修復魔法を行ったスクナビコナ族の子供たち25体にエネルギー補給をしているのである。

「あー、働いたらお腹空くべー」
「わーい、山盛りチャーハンだべ。ちゃんと玉子もチャーシューも入ってるべ」
「こ、これがアメリカンデリバリーを代表する海外ドラマで白い箱に入っているチャイナフーズの中身か…」
がつがつがつがつがつ。

身長7.5センチのちび小人たちリビングの中央の大皿山盛り5杯のチャーハンをたった15分で食べ尽くした。

その様はスズメバチの巣を数で押し包んで食らい尽くすグンタイアリの早回しの映像さながらであった。

恐るべし、魔法も使える超知的生命体スクナビコナの健啖家っぷりなのである。

ポーションミルクの容器で食後のウーロン茶を飲んでひと息つく小人たちに「よしよし、食ったら帰って寝るでよ」と促す長老ハガクレの指揮の元、スクナビコナひよこ組の児童たちは仕事をして謝礼代わりの飯を平らげたらとっとと高台寺地下にある小人幼年寺子屋の寮に戻って行った。

騒音、事故、修復作業を終えて食後の杏仁豆腐(冷たい牛乳入れたらすぐ固まるタイプ)とウーロン茶でひと息付くミュラー一家ときらら。そして白髪紅目の美少女美少年の双子天使、サンダルフォンとメタトロン。

彼女と彼は他の大天使たちが六年に一度の休眠状態に入っている間天界から降臨し、下界での仕事をたった二人で片付けてしまえる程の処理能力を霊力を持つすんごい天使。なのだが、

二人が履いているニーハイが姉のサンダルフォンは白、弟のメタトロンは黒なのでこれからはこの子たちを

白ニーハイと黒ニーハイ

と心の中で呼ぼう、ときららは思った。

だって大学の後期試験も終わって後はバイトと年末のお給料と年末年始の北海道の実家への帰省以外難しい事は考えたくないホワイトきららであった。

「んじゃあサンちゃんはガブさんが使ってたゲストルームに寝てもらってええかな?」

出会ってたった一時間でこれだけ爪痕を残した天使、サンダルフォンを世界のマエストロミュラーは既にサンちゃん呼ばわりしていた。

「ええっ?ガブリエルお姉さまの匂いのするお部屋に入ってお姉さまの使っていたパジャマを纏ってお姉さまが寝ていらしたシーツにくるまって寝る。だなんて…幸せ…」

姫カット小娘は両手を組み合わせてまるで神に感謝するような仕草でうっとりと笑みを浮かべた。

その様子を普通に見ていた弟メタトロンは

「つまりはこうでし、サンダルフォンはガブリエルお姉さまに百合なんでし」

と簡潔に姉の高揚っぷりを説明した。

その台詞は
英訳したら西洋人にウケそうなジョークやな。

とドイツ系アメリカ人のミュラーは思った…

辞令

大天使サンダルフォン
大天使メタトロン

休眠期に入った大天使たちの代理の業務の一切の遂行を一任する。

大天使ラジエル

という内容の古代ルーン文字が刻まれたクリスタルを昔のドラマの黄門さまの如くかざしてウリエルよりも破壊力強そうな双子天使は極めて邪気の無い笑顔で、

「と、言うことでよろしく、よろしく、よろしくね♪」

とソファから立ち上がり互いに高くあげた右手を合わせて歌い回りながらのたもうた。

もちろんサンダルフォンの喉元には声で破壊行為を行わないよう黒革のチョーカーが付けられていた。

きららは思った。

うん、杏仁豆腐食べ終わったら帰って寝よう。
今日の業務これで終わり。

後記
余計な事を深く考えないのがきららの処世術。ちなみに双子天使の振り付けは「サウスポー」byピンク•レディーである。







































































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