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【雑文】農園公開にやってきた、自然農のおばさんの話

Googleの「株式会社イーキウイ」の情報欄より

10月3日に、株式会社イーキウイが農園整備完成の披露を兼ねて、住民説明会を開催していました。
堂々と農園を見学する絶好の機会でしたが、この時期は多くの農家が稲刈りの真っ最中で、私も忙殺しており説明会には行けませんでした。

ところが、長野地区の近くに住む農家の知人とたまたま会った時、説明会に行っていたことが判明。住民説明会であった印象的な出来事について、さらっと教えてくれました。

この知人は、農地の提供者でもなく、説明会の案内が届くような関係者ではないけれど、数日前から「説明会がある」と近所から話を聞き軽い気持ちで見に行ったそうです。
本人は耕作放棄地の大規模整備は興味深く見守っていたらしく、もちろん参政党の言う「中国資本」云々のデマは眉唾だったそうです。


JA東予園芸との関係

説明会は地元の農家の他、ローカルテレビ局の取材陣や、説明会開催を要望していた西条市長が出席。
また選果費用の問題で仲が悪くなったと噂されていたJA東予園芸の関係者が幾人か来ていたそうです。
JA組合長も出席しており、社長のヤン・ベネス氏と会談したり、農園完成記念の「だるま」に黒目を入れる役目を担っていたそうです。

以下、筆者所管

報道や農業委員会の議事録では、JAは「資材の販売とか情報交換は続けていく。必要な情報は組合員にも還元する」と説明しているそうで、イーキウイとJAとの関係が今も継続していることを示しています。

この問題の原点とも言える、ジャーナリスト山口氏の記事に書いてある「法人設立に協力した地元農協とは関係が決裂した」という文章。あれはいったい何だったのでしょうか。

別の農協関係者も言う。
「現在、周辺住民と井戸の掘削でトラブルになっていることを把握している。正直なところ、組合としてイーキウイとは付き合いたくない」

「外資の農地取得が進む過疎地でトラブル発生!」 より抜粋

そもそもこの記事、イーキウイ社には取材しておらず、農協関係者というのも実際はどの程度の「関係者」なのかはっきりしない(政治記事における「政府関係者」「閣僚経験者」くらい怪しい)。
前々から思っていたのですが、記事としては取材源に偏りがあり信頼性に疑義があるのではないでしょうか。


灌水方法について

だるまの目入れや、ゼスプリゴールド(これは日本産ではなく、ニュージーランド産だったそうだ)の試食などのセレモニーのあと、ネットを貼った農園内に案内され、整然と定植されたキウイを見ながら、栽培方法説明を受けたそうです。
地下水の心配の問題に触れ、周辺の民家はだいたい10mくらいの地下水を使っているが、イーキウイの井戸は地下70mくらいの深さから取っており、帯水層が違うので周辺の民家には影響は出ないでしょう、という説明があったそうです。
また、樹木への灌水方法は、ハンガースプレーという器具をキウイの果樹1本に1つずつ取り付け、根本に必要なときに必要なだけ散水するようになっているそうです。これを利用すると、少ない水で効率的に果樹に灌水できるそうです。
知人も果樹をしているので、こういう資材があることは知っていたそうです。

GREEN JAPANのサイトから引用

このあたりの果樹農家は普通、土地改良区のハタカン(畑作灌水)を使って、上から雨のように散水するのですが、散水にムラがあったり、大量の水を使います。
民家の浅井戸とは違う帯水層の深井戸を掘ること、ハンガースプレーを導入することで、周辺への影響を最小限に抑え、限られた水資源を有効的に使う栽培方法をしているのだと、知人は感じたそうです。


某政党の関係者? 自然農を語るおばさんの登場

イーキウイ側の説明の中で、「土作りに、地元の畜産業者から堆肥を仕入れて撒いている。有機的な方法をしている」という説明がありました。
そこで、参加者の中から質問が出たそうです。

「今の家畜は抗生物質を注射しているので、牛糞にも抗生物質が残ります。それを堆肥に使うと土が汚染されます。そのことをどうお考えですか!? 牛糞堆肥を使わないキウイ作りはしないのですか!?」
ある中高年の女性が挙手をし、非難するような感じでそのような質問をしたそうです。
そのような質問が出たことに、知人は嫌な予感がしたそうです。

質問と返事の応酬がしばらく続いて、
「堆肥を使うなというのであれば、化成肥料を使えということですか?」
と、イーキウイ側の社員(ヤン・ベネス社長の通訳の人)が反論すると

「いいえ、使わなくてもできます! できます!」
と、女性が語気を荒めて言い返したそうです。

(セリフはあくまで、知人から聞いた内容に基づいて再現したものです)

安全で環境負荷も少ない、畜産堆肥を使った栽培方法をアピールされたことに対し、他の有機農業者も使うような家畜の堆肥も「抗生物質が残っている」から使うな、化成肥料などもってのほかだと、この女性は主張しているのです。
いわゆる、無農薬無肥料、外から何も入れず自然のままに栽培する自然農でゼスプリキウイを作りなさいというのです。

それが可能かどうかはわかりません。が、知人や、周りの農家の反応は、

(うちも牛糞堆肥使っているのに、悪者扱いされてるみたいだな…)

(そもそもニュージーランドでの成功例を持ち込んでやろうっていうのに、それを変えろって無茶苦茶な…)

(まずお前が無肥料でキウイを作ってから言えや)

といった感じでドン引き、うんざりな空気だったそうです。
説明会に集まった近隣農家は、JAに出荷するため基準内の農薬・肥料を使う慣行農家がほとんどだと思うので、そのような凍りついた空気になるのも当然。

結局この中高年女性、説明会終了後もベネス社長や通訳の元に行って、何やら喋っていたそうです。
この女性の近くに、ずっとビデオカメラで撮影を続けている人が付き添っていたのも、知人は気になったそうです。
この一行が「マスクをしてなかった」のも印象に残ったとか。

某政党がYoutubeに農園突撃の様子でも上げていないか気になりましたが、私は今のところ見つけていません。


参考:家畜の抗生物質は、堆肥化の仮定で分解されるので問題ない

「家畜に施した抗生物質が堆肥化した糞にも残留し、農地に使用することで抗生物質が土地の微生物を死滅させ農地を荒廃させる」という主張が、自然農支持者からあがることはよくあります。

しかし、農研機構の研究などで、堆肥化の過程で抗生物質はほぼ完全に分解されるということが分かっています。

抗生物質そのものではなく、抗生物質耐性菌の影響を問題視し、堆肥化の際に十分な発酵熱が必要であることを指摘する研究結果もあります。

下記のPDF資料も参考になるかと思います。

動物用医薬品は堆肥化で分解する
一般財団法人生物化学安全研究所 碓井典子氏