見出し画像

ニコニコ自作ゲームフェスの審査意図

※本記事はゲーム制作者が自由な記事を作る Advent Calendar 2021の12/9参加記事になります。

こんにちは。伊予柑と申します。インターネットのゲームに関連するあれこれをやっています。
ゲームだと「異世界の主役は我々だ!」「ルチアーノ同盟」のプロデュース、「ぶきあつめ」Steam販売のプロデュース(共同)を担当しています。あとは「自作ゲームフェス」というのを立ち上げて運営してきました。

このたび「作っちゃうおじさん」さんにお招きいただき「ゲームにまつわる記事」を書くことになりました。
「誰に向けて」「何を」書いてみるのがいいのかなとおもったのですが、「自作ゲームフェス」というコンテスト運営をしていた身として内実などを書いてみようとおもいます。ここ3年ほど審査にタッチしていないので、あくまで設立時の設計意図としてお聞きください。

要するに「いいゲームが生まれる環境をつくりたーい!」というかんじでつくられてます。

■自作ゲームフェスとはなにか
「ニコニコ自作ゲームフェス」は、「ゲームを作るひと」「遊ぶひと」「二次創作をするひと」をつなぎ、個人で作ったゲームがもっと多くのひとにプレイされるようになることを目指すお祭りです。
基本的にはドワンゴや協賛社のもちだしによって成立している非商業的なコンテストで、愛がないと即座に終わる危うさをもっています。でも、界隈の愛でなんとかもっています。

この企画の設計には3つの狙いがありました。

■1つめの狙い:ネットの力を使ってヒット率を上げる。

狙いはまさに「ゲームを作るひと」「遊ぶひと」「二次創作をするひと」をつなぐというものです。
現在の「ゲームのヒット」を考えると、インターネットの力をどれだけうまくつかうかというのが大事です。
壺おじさんやピコパークといったインディゲームは「ゲーム実況」の力によって伸びましたし、
東方Projectは「二次創作」によって伸びました。

そういったネットの力をうまくつかってヒット率をあげたいひと向けというのが自作ゲームフェスの一つ目の狙いです。
そのため自作ゲームフェス投稿作品は「有料無料を問わず実況OK」というのが参加条件になっています。

■2つめの狙い:多様な視点でゲームに光をあてる

ゲームというのは複合的な著作物です。
絵が素敵、ルールが素敵、操作感が素敵、エフェクトが素敵、テキストが素敵。いろいろな魅力があります。
人によって評価軸は様々なので、できるだけいろんな視点で評価をしたいとおもいました。

そんなわけで毎回10社以上の協賛社のかたがたにご参加いただき、「ここが俺は好きだ!」という視点で評価をしてもらっています。
協賛社のかたがたは忙しいなかお時間を使ってゲームをプレイしていただき、そして講評の文章を書いてもらっています。
あらゆるコンテストのなかでも珍しいくらいに手間をかけているコンテストだとおもいます。

また、「敢闘賞」というのが異様に沢山あるのも自作ゲームフェスの特徴です。
これも、ゲームの色々な魅力に焦点をあてたいというもので、ドワンゴの審査スタッフのなかで1名でも「俺はこれのここがスゴイと思う!」という主張があれば敢闘賞が出るというものになっています。全てのゲームに対して最低でも2名、基本的に4名以上の人が何らかのチェックをして「ここがいい!」というのを加点式で拾っています。参加数が多いと「嬉しい悲鳴」な状況になります。

■3つめの狙い:新しいゲームデザインを評価する

自作ゲームフェスの大賞は「よくできた」ゲームではなく「よくわからん」ゲームが受賞します。
よくできたゲームというのは、既存のゲームデザインの範囲内で素材(アセット)やゲームバランス、ゲームボリュームが優れたものとなりがちです。アイディアというよりも、いかに手間をかけたかという勝負になりがちです。自作ゲームフェスは手間の数をあまり評価したくない。執念とか魂に近い何かを観たい。

ということで自作ゲームフェスでは「根本的に新しい何か」をもったものを過剰に高く評価するようにしています。
「根本的に新しい何か」というのは凄く主観的で、評価が難しいです。
なので「よくわからん」とおもわれがちです。それはしょうがないことだとおもっています。
審査スタッフは毎回喧々諤々と「これが良いゲームである」ということをそれぞれの信念をもとに話して、決めています。

■その他の特徴

毎年変わるコンテストです。
コンテストというのはルールや評価軸が同じだと「賢い参加者にハック」されてしまうんですね。最適解が見つかって、いかにも受賞しそうな作品が作られるようになる。そうならないように、できるだけ新しい才能を優遇するように毎年軸を変えています。

本質的にはオフ会が大事です。
自作ゲームフェスの評価というのは単体ではあまり価値がなくて、受賞者のかたがたが「オフ会」をして横に繋がることが一番大事だとおもっています。そのことにより作品の品質が上がったり、チームができたり、パブリッシュにつながったりと、「次」に繋がることが重要です。この部分はコロナによりとても制限されてしまいましたが、今後は復活できるんじゃないかとおもいます。

新しくて面白い作品を全員愛しています。
たまに「どうやったら受賞するの?」と聞かれるんですが、それはもう「新しくて面白い作品を作れば絶対大丈夫だよ!」と答えるしかないです。こんな手間のかかるコンテストに関与しているひとたちは、ただただ「新しくて面白い作品」をもとめているに決まっています。その新しさや面白さの基準は人それぞれなので正解はないのですが、とにかく、新しくて面白い作品が正義だとおもいます。

■おわりに
前回の自作ゲームフェスは過去最高投稿数を記録したとのことです。すごい(自分は関与してないので担当者すごい)

そして学生向けの自作ゲーム文化祭もやるそうです!(これも関与してないが宣伝です!)

ここ数年インディゲームを支援するコンテストや会社が増えて、業界がもりあがってすごくいいことだなと嬉しいです。ヒット作うまれてくれ~~~!
たぶん業界がガンガンあがるなか、自作ゲームフェスは淡々と「いいゲームが生まれる環境をつくる」というのを目指すのではないかとおもっています。

新しくて面白いゲームが生まれることを願って!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?