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Happy Words Story 100 Vol.01

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「あなただけの癒し」のためのHappy Words Story 100 ~私を幸せにした100の言葉~。 完全オリジナル。 「何気ない言葉が人を幸せにする。」 そんな幸せを感…
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#はたらくってなんだろう

EP037. 私らは末広がりの人生を歩くんやで

「総務のあの子、寿やって。」 「えぇー、あの子まで…。あの子には勝てると思ってたのに…。」 「あと何人残ってた?」 「もう5人切ったんちゃう。」 「マジでー…。はぁ、私、どうなるんやろ。」 「もう、そんなに気ぃ落とさんときやぁ。」 この会社に入社して20年。 周りの女子たちには次々と彼氏ができたり結婚していくなか、私には全く浮いた話がなかった。 同期入社の女子は40人もいたのに。 気が付くと残り5名を切っているという事実。 「また一人売れてった。」 「人に

EP036. プレゼンとても良かったよ

今日は経営層向けのプレゼン。 新規事業を次のステップへと進めるためにはなんとしてもこの経営会議を通さなくてはいけない。 このプレゼンを取り仕切るのは私。チームリーダーとしてメンバーを率いて、厳しい条件を乗り越えながら半年間育ててきた案件だけに気合いが入る。 このプレゼンの準備はメンバー全員で取り組んできた。 しかし、最初から上手くチームがまとまっていたわけではない。 締め切りまで残り三週間の頃。 もう仕上げに入っても良い時期だというのに、なんと上層部から方針変更の指示

EP034. 家族を救っていただきありがとうございます

当社では年に数回、中途採用の募集をかけている。 私は人事部の採用責任者。 求人サイトの選定から広告、配属予定部門のリーダーと共に選考まで担当する。 今回は、次年度に進行予定のプロジェクトで中核メンバーとして期待できる人材を確保するために求人募集をかけた。 今日はその採用面接。6名の候補者で合同面接を行った。 面接のポイントはリーダー性と技術力。 裏付けのある技術力をもってリーディングできる人材かどうかだった。 「部長、今日の候補者はどうでした?6名の中で気になる人材は

EP032. それ以上頑張らなくてもいいですよ

「今回の改善はこれが限界かなぁ…。」 この部署では社内向けの業務改善コンサルを実施している。 私の担当はクリティカルな業務の分析や非効率な業務の効率化がメイン。 該当部署では気付かない、他部署からのまっさらな視点をもって各業務の必要性を一から見直す。 一発改善で大きな成果を上げると脚光を浴びるけど、多くの場合は小さな改善を積み重ねて成果を作っていく。実はなかなか泥臭くて地味な仕事。 業務改善ではマクロ的視点とミクロ的視点の両方からの分析が大切だけど、今回の仕事は特にミ

EP030. 僕はね、本当に期待してるよ

「なぜこうなるのよ!」 悔しい。 涙が止まらない。嗚咽が止まらない。 鳴き声を出さずにいるのが精一杯。 「私は会社のことを考えて提言しているのにひど過ぎる。」 涙をこらえて目を閉じるとまたあの光景が浮かんでくる。 何度でも何度でも浮かんでくる。 悔しさが何倍にも膨らんでいく。 あんなこと言われる筋合いはない。馬鹿にするにも程がある。 総合企画部長はいつもそう。 役員だからって自分がどれだけ偉いと思っているのか知らないけど、上から目線で人を馬鹿にして、メッタ斬りにす

EP029. あなたと話すだけで心が楽になるわ

高台の病院にあるガーデンは太平洋を一望できる。 海に向かってポツンと置かれている白いベンチ。 ここからの景色は最高だ。 ゆっくりと海を眺める。 ここには時間という流れはない。 この瞬間を切り取った「今」がただあるだけだ。 太陽の光を反射してきらめく広大な水面を見つめていると、光の破片が心の中に入り込んでくる。まるで心の闇をスキャンして取り除いてくれているようだ。 この感覚をいつまでも味わっていたくて、私は一日の大半をここで過ごす。 私は心の療養のためにここへ入院した

EP028. 負けるが勝ち、逃げるが勝ちだよ

今、私が働いているこの会社、主に官公庁と取引しているからか旧態依然の職場風土がまだ残っているところがあって、一部の人たちには男尊女卑の思想が強く根付いている。 私が所属する部署は比較的若い層の社員が多いので、女性が虐げられるようなことはないけど、仕事上で関わらないといけない他部署には、接触したくないタイプの社員がいる。 今日も嬉しくないことが起こった。 良かれと思って他部署の同僚に提案したら「女のお前が提案なんて生意気な!茶でも淹れてろ!」と罵声を浴びせられた。私も対抗

EP025. いつも笑っていて感じがいいわね

そろそろ次の予約の時間だ。 週末の夜は予約で一杯になるこのお店、今からが忙しい時間。 「いらっしゃいませ。」 しっとりとお客様をお迎えする。 よくある居酒屋式は嫌いじゃないんだけど、このお店はお客様の年齢層が高めな上にお忍びで来られる方も少なくないので、大人の雰囲気作りでもてなしている。 私はしっとり感はもちろん、お食事を済ませて帰るときにはエネルギーにも満たされていて欲しくて、精一杯の笑顔で接客することを心がけていた。 笑顔は私の自慢。唯一誰にも負けないと自慢でき

EP024. あなたの人柄、とても好きですよ

「あぁー、今日はオンライン模擬面接だー。苦手なんだよなー。」 今日は面接指導の日。大学の先生が相手の模擬面接。 対面なら得意って訳ではないけど、どうしてもオンライン面接は好きになれなくて苦手だ。どんな顔して相手のディスプレイに映っているのかと思うとゾッとする。 とりあえず上半身だけ着替えて面接に挑む。下半身は映らないから着替えなくても大丈夫。そんな考えだと上手くいかないなんて精神論は却下。スカートにまたアイロンをかけないといけなくなるのは大変だ。 メールで通知されていたI

EP023. 何でも出来るからどこに行っても大丈夫だね

私は某企業で管理職をしている。 世界に拠点があり総社員数はグループ全体で数万人にもなる会社だ。 私が管理部門では初めての女性管理職ということで、理想の女性上司だと話題になったのはもう随分前のこと。最近は日々の管理業務追われていて、なかなかこの組織でやりたかった仕事をできていない。せっかくの出世が自分の成長につながっていないのが辛く面白くなかった。 会社はというと、近年のマーケットの変化に十分追従ができておらず、ここ数年は右肩下がりで業績が悪化している。規模の大きさが幸

EP022. やっぱりね、君もやればできると思ってたよ

「すみません…。気を付けます。」 今日も失敗した。 先輩に叱られない日はない。 十分注意しているのに、なぜかミスをしてしまう。 「ほんと、なんでだろう。頭では分かっているのに。気付いたらミスしてる…。」 嫌になるくらい不注意のようだ。 分からないでミスしているならまだ対処はできるかも知れないけど、分かっていてミスしてしまうからタチが悪い。 以前はそうでもなかったのに、この部署に配属されて以来ずっとミスが続いている。ミスは自分の責任。でも毎日叱られていると、叱る先輩

EP021. ケーキ買ってあるから降りといで

私が一人暮らしをすると言って家を出たのはもう2年前。大学に入って2年目のことだ。一人娘の一人暮らしなんて認められないと父も母も大反対したけれど、家賃はもちろん、生活にかかる費用は全て自分で賄うからと、何度も何度も繰り返し両親を説得してようやく家を出た。 両親に不満はなかったんだけど、どうしても学生の内に一人暮らしがしたかった。自立してみたかったのだ。 一人暮らしは快適だった。 好きな時間に起きて、好きな時間に寝て、講義があれば大学へ行って、空いてる時間はバイトに入る。私

EP018. 好き嫌いでもいいんじゃないですか

頑張る自分へのご褒美と癒しと身体的・精神的デトックスを兼ねて、週に一度はこの整体サロンへお邪魔している。整体院とリフレクソロジーサロンがミックスしたような所。オシャレなだけじゃなく、技術力もしっかりしている。 今週はいつになくカラダが疲れていた。 仕事がとってもストレスに感じていた。 望まない方向に向かっている気がしていた。 「あのとき『嫌だ』ってはっきり言っておくべきだったな…。」 同僚が嫌だと拒否した仕事が私に回ってきた。本当なら指示された同僚がやるべきなのに。

EP017. 先輩のやさしさに癒されました

晴れた日には気分転換に屋上へ行く。 遠くを見渡せる屋上にいると、私の心をもやもやさせる考えがちっぽけに感じて、嫌なことはどこかへ消えていく。まるで屋上を抜ける風が吹き消すように。 今日もまた気分を変えようと屋上まで上がってきた。 背伸びをしながらぐるっと見渡すと、ベンチに腰をかけて、背中を丸めてうなだれている男性がいる。よく見ると私が研修を担当した後輩くんだった。 「あれ?屋上にいるなんて珍しいわね。どうかしたの?」 「あぁ、先輩…。」 やけに元気がない。 そう