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タガラモリミチ...…農業技法         カムナガラノミチ 10           【直観物理と相似象 その 28】


タガラモリミチ……農業技法

 カタカムナの上古代には、既に高度の農業技法(タガラモリミチ)がつくられていました。カタカムナ人の植物育成に対する直観は、まず、土壌をつくる、というのが大原則でした。その理由が、以下の第65句、第66句に示されています。
 以下、楢崎皐月の解釈に従って、各句を解説して行きます。

第65句 タガ ヒラキ(土壌条件)

カムナガラ
 ササコネコジリ タガヒラキ
 トロサゴマジリ イケコヤシ
 タガラモリミチ ヤサカナリ


概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、笹や木の根を掘り返して(ササコネ コジリ)、田圃を開墾する時(タガ ヒラキ)、泥(トロ)に砂(サゴ)を交ぜ合わすこと(マジリ)、また、乾燥しない青草などの生の肥し(イケ コヤシ)を施すことが必要である。それは、自然の相互繁栄の法則(ヤサカ ナリ)に従った、農業技法(タガラ モリミチ)である。」

「相似象」第5号 289ページ

 <タガ>とは、田圃の意味です。「タ」には独立分離の意味があり、それが「田」の意味になったのは、一般的な大地から、人間の意志によって特別に分けられて割り当てられた場所という意味合いのためであります。

 この教示の基礎には、カタカムナ人に以下のようなサトリがあったためと考えられます。

  1.  田圃の泥に砂を混ぜて、多孔性の膠質こうしつ(コロイド)に変えると、膠質の異相界面を増大させ、肥養分の収着量を増すという効果がある。

  2.  イケコヤシ(活肥)によって、土壌条件の調整を行うこと。すなわち、植物の持つ有機質(炭素化合物)によって、土壌における「炭窒比率」や「珪バン比率」が植生に有利な条件となる。

 膠質(コロイド)とは、直径10~1000A(オングストローム、10⁻⁸
cm)の粒子が水のような媒体中に分散している状態(溶解しているのではない)のものです。
 コロイドは、粒子の大きさや性質によってさまざまな形態を取り、例えば、ソル(液体中の微粒子)、ゲル(固体状の粒子が液体中に拡散)、エマルジョン(液滴が液体中に分散)、フォーム(気泡が液体中に分散)などがあります。
 コロイドの特徴的な性質の一つに、ブラウン運動と呼ばれる現象です。ブラウン運動とは、液体中のコロイド粒子が無秩序に動き回ることを指します。この運動は、周囲の分子の衝突によって引き起こされます。
 コロイドという性質は多方面で応用されています。例えば、食品業界では乳製品の安定化や増粘剤として、医薬品業界では薬剤の送達システムとして、化粧品業界では化粧品のテクスチャーや安定性向上のために使用されています。また、自然界にもコロイドは存在します。霧や雲は、空気中の微小な水滴が分散したコロイドとして考えることができます。

 炭窒比率とは、炭素(C)と窒素(N)の含有比率であり、土壌の重要な条件です。太陽エネルギーの中でも最大のものは、CN転換のエネルギーであり、地球物質は、CとNの比率が1:8という条件の下で生産され、その条件下で植物の栄養代謝や、人間をはじめとした生物の生命が保たれています。

▶ 珪バン比率とは、シリコン(Si)とアルミニウム(Al)の含有比率であり、土壌は、Si > Al に保たれることが必要条件です。

 以上のように、カタカムナ人には、まず、「作物を作る基本条件としての土壌を調整し、まずはコロイド性に持って行く」という、植物生育に関する大きなサトリがあったのでした。

▶ 「生肥(イケコヤシ)」については、別の教えとして、以下のような歌詞もあります。

  ヨロヅイワツナ ココロツチ
  イサコイハクサ イクヨハニ


概要の意味
「よろずの種などの植物も(イハツナ)、人間の側からばかりでなしに、すべて生命のあるものの心を伝えて、その身になって考え(ココロ ツチ)、雑草と呼ばれる草(イサコ イハクサ)も、無用のものとしてただ捨てるのではなく、そのモノとして生かすことを、考えるべきである。生かすとは、土(ハニ)に還してやれば、イハツナ(稲など)のミシロ(養ひ)となって生きてくることである。」

「相似象」第5号 291ページ

  田圃の雑草は害があるばかりと思われるかもしれませんが、実は稲の「根圧」を高める役割もあるのです。また、抜き取った雑草を逆さにしておけば、自然にハニ(土)にカへって稲の栄養(ミシロ)にもなり、土中に残った根は、稲の根に絡んで、雑草の根圧を高め、体勢を維持する助けとなります。このように、すべてのものは、互いに関わり合って、何かのミシロとなって、無駄なものとはならず、循環しているのです。

 日本の歴史教科書等からすると、日本に水田耕作が始まったのは約3000年前頃の弥生時代とされています。しかし、カタカムナの農業技法であるタガラモリミチによれば、すでに1万2000年以上前の上古代にカタカムナ人による稲作が行われていて、高度な農業技術が使われていたことになります。これ以降に出てくる、カタカムナ人達の生活の知恵や哲科学を考えると、古代日本の歴史に関する一般的認識、すなわち縄文時代以前は人々は狩猟生活で定住しなかった、というものは、まったく当てにならず、現代人よりもむしろ上古代の人々の方が、高い見識を持って生活していたのではないかと推測されるようなものまであります。古代史に対する考え方を根本的に見直し、上古代の人々の生活も高く評価し、多くの発明が私達の生活を合理的に、便利にしてくれると手放しの気分になっていることで、却って純粋性を失い、生命の尊厳を踏みにじっているという、反省点があることを認めるべきではないか、ということになります。


第66句 トロ クスミ(土壌の電氣保有増加)

カムナガラ
 アカシチクヌネ ヌルミトコ
 カザククキムロ トロクスミ
 タガラモリミチ ヤサカナリ


概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、土壌の電氣が持続的に発生する基(アカシ チクヌネ)や、田底の温度が高まる元(ヌルミ トコ)は、泥の内部に、空気泡(カサクク)を増加させる氣孔(キムロ)を多く造ることによって、泥の薬効分(クスミ)を増加させるところにある。それが、自然の相互繁栄の法則(ヤサカナリ)に従った、農業技法(タガラ モリミチ)である。」

「相似象」第5号 292ページ

 <アカシ チクヌネ>の、「アカシ」は「明らかな示し」、すなわち発生の意味です。「チクヌネ」は、「持続的に蓄えている目に見えぬ根」であり、蓄えているものは、暖かい田底(ヌルミトコ)の泥のキムロ、すなわち空気の泡の付いた土から発生する電氣(サヌキ アワ)であり、それが以下の「トロクスミ」になります。

 <トロ クスミ>とは、「泥の薬のミ」すなわち、植物の生育に必要な、泥の持つ薬効分のことです。

 <カザクク キムロ>とは、泥をコロイド状にすることです。そこに含まれる空気のたくさん含まれた泡を、氣室(キムロ)と呼びます。

 この教示の基となる、カタカムナ人のサトリは、以下のようなものであったと思われます。

  1.  泥のコロイド性を増せば、氣相、液相、個相の三相の界面が増加する。

  2.  氣相を含むコロイドは、田底の温度を高め、「温度落差」を増加させる。

▶ <アカシ チクヌネ>は、「界面電氣の発生」を意味します。泥だけでは固相であり、界面電氣は起きませんが、第65句に示したように、砂が雑じれば(トコサゴ マジリ)界面が増えます。そこへ、青草(イケコヤシ)を入れて、氣泡が加われば、土(固相)、水(液相)、空気(氣相)の三異相が交わって、界面が拡大されるのです。
 コロイドは、水溶液とは異なり、土、水、空気の分子がそのままくっ付き合って、混じりあっている「分散」の状態です。泥を「カザクク キムロ(氣相を含んだ異相コロイド)」の状態にすることで、「分散媒体」の性質を増し、界面電氣を活発に発生させ、ヌルミトコを保って、植物の生育が促進される、ということです。

▶ 「温度落差」は、植物の生育に重大な影響を持つ条件の一つです。昼間に温められた土中の温度をできるだけ保てば(ヌルミトコ)、夜半から朝にかけて、空中気温との間に落差が生じます。稲や野菜類の生育は、この温度落差に比例して促進されるのです。カタカムナ人は、この温度落差を作るために、土に積極的に空気を入れて、コロイド状のヌルミトコを作る技法を、更に示しています(第69句参照)。


第67句 タシロ カキ(ドロネリ...…水密作業)

カムナガラ
 ツユシモヤハタ タシロカキ
 タマナリカタメ ミトクマリ
 タガラモリミチ ヤサカナリ


概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、田圃(タガラ)が、露や霜の害を受けて漏水することを防ぐために(ツユシモ ヤハタ)、タシロカキ(泥和作業)によって、田の間(タマ)のナリ(甫場の状態)を水漏れのないように固める水密作業(ミト クマリ)が必要である。それが、自然の相互繁栄の法則(ヤサカナリ)に従った、農業技法(タガラ モリミチ)である。」

「相似象」第5号 292ページ

 <ヤハタ>とは、露や霜によって「破れた田」の意味で、「タシロカキ」すなわち泥を練り混ぜる作業で、そのようになることを防いでいるのです。

 <ミト クマリ>は、水の戸(ミト)をクマリ(限ること)。すなわち水漏れをなくす意です。また、ここには出て来ませんが<ミト クバリ>という言葉もあり、こちらは排水という意味となります。

 この教示は、次のような悟りに基いているものと思われます。

  1.  泥練り(タシロカキ)を続ければ、泥や水に多くの空気が入り込んで、土や砂が固まらずに微細になって、異相界面が一層拡大され、分散媒としての泥和、すなわち空気を水に溶解させ、コロイドに分散させる利点がある。

  2.  泥和(タシロカキ)した土によって、田圃の破れを固め、水漏れを防ぐ効果がある。

 俗にドロネリという作業ですが、練り混ぜることで粒子が細かくなり、三相の異相界面が増し、電氣的密着の度を増すのです。
 焼き物をつくる時に、材料となる土を丹念にこねるのも、それによって焼き上げる際の温度を高め、密着度を増して、高度を上げるためなのです。
 パンの粉をこねるのも、同様の理由によります。


第68句 オトシ ホシ(地力の老朽防止)

カムナガラ
 カヤナリトヨチ ミタツタガ
 ヒムケヒビワレ オトシホシ
 タガラモリミチ ヤサカナリ


概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、カヤナリ(稔り)を豊かに(トヨ)持続する(チ)、熟成田(ミタツ タガ)を作るには、田圃の水を落として乾しあげ(オトシ ホシ)、太陽の光に当てて(ヒムケ)、田底にヒビワレを生じさせる必要がある。それは自然の相互繁栄の法則(ヤサカナリ)に従った、農業技法(タガラ モリミチ)である。」

「相似象」第5号 296ページ

 この教示は、次のような悟りに基いているものと思われます。

  1.  田圃の水をたびたび落として乾燥させ、田底にヒビワレを生じさせることは、泥土に空気を送入させ、空気の拡散により、有効水の保持増大を図ることができる。

  2.  空気の新陳代謝によって、有効水の保持拡大を図ることができる。

▶ 以下は、楢崎皐月氏による考察です。

 稲草は、根の呼吸が本来性であり、水中にある根元に空気(酸素)が充分蓄積される必要がある。そのためには、稲草の生育期間中、田の底の泥に、氣相コロイドが保持されるように、空気の溶けた水を長く留める施策が必要となる。その観点から、刈り取り後の田は、雪の積る前に太陽に当ててヒビワレさせ(オトシホシ)、また深耕(ホシカヘシ)して、ミタツタガ(成熟田)にしておくと共に、その後も、稲の移植の後や出穂の後等に、できるだけオトシホシをし、その上で水を張ることを教えている。このことも、67句で述べた、土のコロイド化による、「分散媒的溶媒処置」の技法であり、現在のコロイド科学の見地からも、妥当な支持と考えられる。
 現在では、人手がないとか水の不足とかいうことで、刈り取りのあとしか乾燥させず、一度水を張ったままにしているが、それでは土は老朽化し、地力は低下して、肥養分があっても薬効(クスミ)とはならず、水は無効水となる。
 しかしこの示しのように、少なくとも年に3度はオトシホシをしていれば、何千年使い居続けても、土は老朽化することはない。地力が低下するという事は、肥料が無いという事ではなく、土に電氣がなくなる、ということであり、その為に新陳代謝が絶えて腐敗するのである。土に電氣(チクヌネ)が無ければ、いくら肥養分があっても、植物は、それを取り入れて身の養い(クスミ)とする力が出ないのである。地力の老朽化を防ぎ熟成田(ミタツタガ)を維持するには、どうしても多くの手が必要である。このことを別の歌詞で
  トロチオホゲツ モロテナリ
といっている。「豊かな大地を保つには、天然の恵みに、多くの手が加わって、はじめて成る」という意味である。現代人もこの物性を正しく弁えれば、単に目前の省力化、機械化、化学肥料の為に地力を低下させ、病害虫の発生を農薬に頼る、という悪循環の幣を改めて、大地の力を老朽化させることなしに、機械化、省力化を薦める工夫がなされ得る筈である。

「相似象」第5号 297ページ


第69句 ヌルミ サカヒヘ(温度落差)

カムナガラ
 タケサトヨタナ トヨミムス
 ヌルミサカヒヘ ヨノアマサ
 タガラモリミチ ヤサカナリ


概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、健全な穂(タケホ)を豊かに(トヨ)着けるタナ(田のすなわち稲草のこと)の生育や、収量の多い実(トヨミ)を発生する(ムス)働きは、田底の温度が高く(ヌルミ)、逆に気温が冷える(サカヒヘ)、夜間から朝にかけての間(ヨノマ アサ)に行われる。従って夜間の「温度落差」が、最も必要な条件となるのである。それは自然の相互繁栄の法則(ヤサカナリ)に従った、農業技法(タガラ モリミチ)である。」

「相似象」第5号 298ページ

 「相似象」第5号によりますと、この教示は、次のような悟りに基いているものと思われる、とあります。

  1.  稲草の成長の実態は、夜間から朝にかけての「温度落差の持続」に関係が深く、落差の大きい方が成長が早い。

  2.  田づくりの手段は、温度落差を持続する方向に向けられるべきである。

▶ 「温度落差」とは、夜間の根元の泥の温度の低下と、葉先上面の気温の低下との、温度差のことです。泥の温度が高く保たれる時間が長いほど、肥養分の上昇の勢いが強くなるという関係があります。しかし、現在の慣行農法では、昼夜の気温差だけを「比較差」として測定するのみですが、温度落差については、等閑視あるいは無視しています。しかし、カムナガラのミチには、「豊作は日照時間によるのではなく、温度落差(ヌルミ サカヒヘ)の持続時間に比例する」という、驚くべき直観が示されているのです。すなわち、稲の成長に良いのは、夏がただ暑ければよいと言うのではなく、夜間の気温が冷えて、土中の温度との間に落差ができるというのが、重要な条件となるのであって、できるだけ泥の温度が保たれるように、技術管理が必要なことを教えています。

 また、楢崎らは、このような条件を踏まえて実験を行った結果を、以下のようになったことを報告しています。
 
 ◆稲の場合には、夜間の温度落差8℃と、その持続時間数を掛け合わせた積に、太陽の日照時間を加えた和が 300 に達すれば結実する。

 ◆トマトでは、落差温度 10 ~ 12℃と、その持続時間数との積と日照時間との和が 165 に達すれば、結実する。

 等々です。

 多くの実験から、夜間の土のヌルミを保つことによって結実を早め、茨城県においても二毛作が可能となったことが示されています。

 以上のことを弁えて、楢崎は、寒い夏の冷害も防ぐことができ、答礼地での短期間の栽培等に、新しい技術が開発されるだろう、と結論しています。


第70句 ネハシ キリ(損傷電位)

カムナガラ
 ハヤメハヤタマ タケホイネ
 ワカツククナネ ネハシキリ
 タガラモリミチ ヤサカナリ


概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、稲の成長を促進して(ハヤメ ハヤタマ)、健全に稲草を作るには(タケホ イネ)、分訣する個々の自由な根(ワカツ ククナネ)の先端を切り落とすことである(ネハシ キリ)。それは自然の相互繁栄の法則(ヤサカナリ)に従った、農業技法(タガラ モリミチ)である。」

「相似象」第5号 300ページ

 <ハヤメ ハヤタマ>とは、「早く芽が出て、早く根がタマ(株)になる」という意味です。一般にこの語は神名として使われていますが、その名の使われた理由については、タガラモリミチのこの着眼から、はじめてその理由が明らかになったわけです。
 
 この句の教示は、次のような悟りに基いているものと思われます。

  1.  損傷電位を利用して、稲草の成長点や肥大点の移行が行える。

  2.  植物個体の下方部(根毛等)に損傷を与えれば、成長点(電氣的にはマイナス電位で、栄養物質の集中する点)が個体の上部に移行し、栄養分の上昇の勢いを増して、生育が促進されるという効果がある。

▶ また、植物個体の上部先端に損傷を与えると、肥大点(電氣的にマイナス電位帯)が植物個体の下端に集約される効果があります。したがって、このような損傷電位の構成を利用して、稲等の穂型の植物には下部に(ネハシキリ)、イモ等の根茎型には上部に、損傷を与える技法が開発されています。


第71句 イナホ タカチホ(穂長穂重型品種)

カムナガラ
 イナホタカチホ オモホツミ
 シツエワキカブ キザミタチ
 タガラモリミチ ヤサカナリ


概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、稲穂の長く伸びた(イナホ タカチホ)重い実の着く(オモホ)稲草の個々(ツミ)を作るには、下方の枝葉(シヅエ)腋株(ワキカブ)を、段々に下から伸びてくるにつれて断ち落とす(キサミタチ)必要がある。それは自然の相互繁栄の法則(ヤサカナリ)に従った、農業技法(タガラ モリミチ)である。」

「相似象」第5号 302ページ

  
 この句の教示は、次のようなサトリに基いているものと思われます。

  1.  稲の長い穂に(穂長型)充実した籾(穂重型)をつけるには、下方の枝葉が葉の付け根に分生する腋葉芽(ワキカゲ)を、切り除く必要がある。

  2.  それは、稲の分生繁殖性を抑制して、種子繁殖性に転換させることであり、稲の収穫量を増加させる合理的手段である。

▶ 植物の繁殖は、種子によるものと、根株(分訣)によるものがあり、放置すると下方から出た腋株に種が付くのです。これが度を超えると、根による分訣繁殖の為にエネルギーが割かれてしまい、穂が貧弱になってしまいます。分訣を抑えて、草丈の短い、種子の充実した「穗長穂重型品種」を作るために、エネルギーを上方に移動させる必要があるのです。

3.下方の脇株が出てくるにつれ、段階的に切り落とすのは、損傷電位(第69句)を利用したもので、植物下部を損傷させることによって、上部に陽電子を集中させて、根の分訣エネルギーを、種子の充実に向ける。

 また、「相似象」第5号には、品種改良のために穂長穂重型の強い稲を作る、古い技法が紹介されています。

 稲の品種改良の目的で、豊葦原で「カラシメ」を行ったという古い技法も伝えられている。それは、生物が、死に瀕した時、生命の延長を必死にはかろうとする、その力を利用した方法である。芦の中で稲を育てると、芦は分訣性が強いので、稲もその影響を受け分訣性が強くなる。しかし芦の方が勢力が旺盛なので、稲は負けて枯れ死しそうになる。そのまさに枯れんとする寸前、稲は子孫を残そうと必死に種子をつくる。この趣旨を豊かな土地に植えて育てると、きびしい条件に堪えた稲は、穂長穂重型品種に優進するのである。
 これもまさに、自然のナリ(本来性)に従った、「アラカミチ」であり、この原理は、現代も、正月用の盆栽仕立ての秘法などとして伝えられている。

「相似象」第5号 303ページ

 

第72句 カザチヨリ(空気中のイオン調整)

カムナガラ
 ハヤマムシトメ トヨカサミ
 トガリサホサシ カザチヨリ
 タガラモリミチ ヤサカナリ


概要の意味
「カムナガラのサトリによれば、稲草に対する虫害や鳥害を防ぎ(ハヤマ ムシトメ)、稔りの収穫を増すには(トヨ カサミ)、尖端装備の竿(トガイサホ)を田圃周辺に差したてて、空気イオンを調整する(カサチ ヨリ)必要がある。それは自然の相互繁栄の法則(ヤサカナリ)に従った、農業技法(タガラ モリミチ)である。」

「相似象」第5号 302ページ

 <ハヤマ>とは、田の上に集まる小鳥をさす古語です。

 <カザチ ヨリ>の、カザチとは、空氣(カサ)の電氣性(チ)、すなわち、空気のイオンの意。また、ヨリは選り分ける調整の意です。

 <トガリサホ>は、先端を尖らせたサホの意。
 
 この句の教示は、次のようなサトリに基いているものと思われます。

  1.  稲草は、空氣の陰イオンを吸収して生育する特性がある。その結果、田圃上空の空氣では、陽イオンの濃度が増す。

  2.  空氣の陽イオン濃度が増せば、菌類、虫類の繁殖が加速する。そして、虫を食べる小鳥類が増え、鳥害も増すことになる。

  3.  竿の先端を尖った形にし、その竿を田圃周辺に立てる「トガリザホ」の役割は、空中に陰イオンを発生させて、頻繁に陰陽イオン比率を改善させるためです。

 「トガリザホ」は、稲のみでなく、畑作物、果樹、庭木等にも効果は著しく表れます。植物生理(同化作用による酸素の生産と、個体保持の生命作用としての酸素の消費)にとって、環境の電氣イオン状態は、最も必要な基本条件です。
 また、めでたいと喜ばれる「松・竹・梅」は、陽イオンを吸収して、陰イオンを発生させるという、人間にとって有益な植物です。反対に、陽イオンを盛んに出す植物には、イチジク、ビワ、ザクロ等があります。

 楢崎皐月は、このカムナガラのサトリに基いて、「植物波農法」を開発しました。大地電氣や植物生理に基いた、この新しい理学農法は、戦後、全国的に目覚ましい実践成績を挙げたのですが、それは、当持、増産のための化学肥料、農薬の使用をひたすら奨励する農林省(現農水省)の方針に真っ向から対立するものであったために、各方面からことごとく反対や弾圧にあい、数年間で消滅させられてしまった、という事です。今になって、食の安全が唱えられ、化学肥料や農薬を使用しない自然農法について、多くの人が関心を向けるようになったのですが、画期的な農法も、当時は、顧みられることなく、努力も空しい結果に終わってしまったわけです。

 尚、植物波農法について楢崎氏らが行った実践結果については、「相似象」第7号(1974年刊行)に詳しい資料が載っていますので、それについては、別途掲載したいと思います、


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