アラサーはきっと片想いが楽しい

後ろに好きな人の気配を感じながら仕事をしている間ずっと考えていたことがある。

わたしの理想の男性像は、
山本文緒「きっと君は泣く」に出てくる中原先生だ。


決して医者が良いとかではなく、
美人がちょっかいを出しても、
あんなに好意を全開にしても、

全っ然なびかないところが最高なのだ。

大好き!!!!!


あれを読んでいた当時は大学生だったと思うけど、
あんなにゾクゾクした小説はないかもしれない。
「こんな男の人に出会ってみてえええ!!!!!」と興奮しながら読んでいた。(変態)

わたしもあんなふうに酔ってベロンベロンになって、
好きな人に好き好き言いまくって、
「なんでこんなに好きなのに振り向かないの!!!」
って逆ギレしても軽く流されて、
それでも介抱だけされてみたい。いまだに夢すぎる。
(「いやお前は若くも美人でもないからな!」というツッコミは聞こえていない)

余談だけどわたしの理想の死に方は、
好きな男と2人でお酒を飲んでベロンベロンになって、
好き好き言いまくっていい気分になったところで、 
わたしが見ていない隙にお酒に毒を盛ってもらって、
いい気分のまま眠るように死にたい。
…と初めて好きな人の工場に来たときも無意識に考えていたから、
やっぱりあの彼はいい線いっているんだと思う。勘。

わたしに恋愛経験がなさすぎるせいで、
殺すほうの男の気持ちなんて全く考慮されてない、
わたしに何の気持ちもないホストにでも簡単にできちゃいそうな殺し方ではあるけれど。
でも理想なのだ。
好きな人に殺されたいし、幸せなまま死にたい。
(やっぱり変態)



たぶんわたしは若い頃からずっと、

自分に全く興味のない男が好きなのだ。



わたしを女として見ない男に、
安心して好き好き言って甘えたいだけなのだ。


そしてそれはおそらく父性を浴びて育ってこなかったから。
わたしはとにかくキレやすくて、
自分の尻を触ってくる父親に、
安心して甘えることはできなかったから。
あぁ心の闇。女の子の人生は父親で決まるのだよ。
過去記事参照


だからわたしは昔から、
地味でおとなしそうな、あまりガツガツしていない(ように見える)男性が好きだ。
わたしが好きになるのはいつもそういう男だ。
だからいつもいろんな人に「あれのどこがいいの?」と真顔で言われるんだろう。

しかし地味でも大人しくても一見真面目そうでも、
彼らも中身はやっぱり男なので、
わたしは女として見られてしまうし、
女として求められてしまう。
それにドン引きして受け入れられないから、
わたしの恋はそこでいつも終わる。


だから中原先生はすげえなと思うのだ。



目の前で若い美女が自分のことを好きだと言ってベロンベロンに酔っていても、
手を出さないで冷静に怪我の手当だけして別々に寝るんだもん。 

果たして現実にそんな男性が存在するのだろうか。


やっぱり女性作家の作品だから女の理想が入っちゃってんのかなと大人になったわたしは思う。

今日も好きな人を見ていてふと、
この人も仲良くなったら、
「俺はやれるかどうかしか興味ないから」とか、
「〇万も使ったのに何もさせてくれない」
とか言うのかな、
わたしが好き好き言ったら当然の顔をしてホテルに連れて行くのかな、
きっとそうだよな男だもんと思ってしまった。
もうお互いアラサーだもん、
学生みたいな初々しい恋はしないだろう。
わたしは何も知らないほうが幸せなのかもしれない。

できれば彼には中原先生みたいに、
「君は男を誤解してる」とか、
「男は喜んで据え膳食うものだと思ってるだろう」
なんてあの声で言ってほしいけれど、

たぶん現実の男の人はそんなことは言わないのだ。
彼らはきっと喜んで据え膳を食うのだ。(想像)



春に美容室かどこかに行ったとき、

「なんで男の人って女が笑ってたら触っていいと思うんでしょうねぇ!」


とわたしが普通に笑って言ったら、
相手の女の人に絶句されたことがあった。
共感はしてもらえなかった。
え?違うの?
わたしが今まで出会ってきた男の人がおかしいのだろうか。そんなこともないような。

わたしは昔から八方美人だからか、
男の人はわたしが笑ってたら触ってくるし、
平気で酷いことも言ってくるし、
好きとかカッコいいとか言えば当然のようにホテルに連れて行かれるし、

わたしの現実に中原先生みたいな男の人は1人もいなかった。


だからたぶん今回の彼も、
きっと今までの男性と同じに違いないのだ。
わたしが選んだ男って時点でもうダメな気がする。
今はあんなにカッコよくても、
化けの皮が剥がれたら、
きっと言うこともやることも今までわたしが好きになった男性達と同じわけで、
それをわたしが再び見たいかとか、
今度こそ受け入れられるかとか考えたら、
もうそれは楽しくない気がする。
わたしは妄想は好きだけど人間関係は苦手だ。


「せかいで〜いちばん、すき〜なひとぉ♪♪♪」

スキマスイッチ「魔法がかかった日」

なーんて1人で鼻歌歌ってる今がもしかしたらいちばん幸せなのかもしれない。