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#9 信越トレイルを歩く【5日目】 赤池テントサイトから斑尾山、そして森の家へ

信越トレイル最終日。この日の正規距離は8.5km。実際は袴田岳を抜かしたので5km程度だった。これまでとは比較にならない短い距離を最後に残したのは、その日中に仙台に帰りたかったこと、また仙台に変える前に森の家(信越トレイル事務局)に寄りたかったからだ。そのためには午前9時前にはハイクを終わらせたかった。

赤池テントサイト

朝6時テントサイトを出発。袴田岳のある西には向かわず、袴湿原トレイルを通って南下した。まだ暗い中ブナ林を進む。少し遠くから、木の枝をバキバキと折るような音が聞こえてくる。すでに太陽は上がっているとはいえ、日差しが入らず薄暗いのでなかなか不気味だ。

斑尾山へ

一時間もかからず万坂峠に出た。ここで、ついに「斑尾山」の文字が道標に見えた。体中に力が漲ってくる。最後のひと踏ん張りだ。だが実際はここから永遠と2km以上の急登が続く。アプリの等高線を見ながら「鬼だ」と思うことが何度もあった。この斑尾山のコースはスキー場のゲレンデだった。麓にペンションや温泉街、コース上にはリフトもあった。眺望は開け、遠く美しい山々が広がる。野尻湖も雄大に青い水を湛えていた。この野尻湖の下辺を通るのがあまとみトレイルである。斑尾山と長野駅を起点とするトレイルで信越トレイルとも接続、昨年9月に開通し先月マップブックの販売が開始した。ぜひ歩いてみたいトレイルだ。

ついに斑尾山の文字!
黒姫山とタングラム斑尾?
野尻湖も一望できた

そして山頂へ

万坂峠からの上りはただひたすらきつい道のりで何度もめげそうになったけれど、なんとか一時間半かけて上りきった。しんどかったーという気持ちとやっと終わったーという気持ちでいっぱいになった。正直縦走に入ってからは修行のつもりで歩くことが多かったので、終わった安堵感が何にも増して強かった。でも、充実感はひとしおにあった。

山頂には一人先客がいた。聞くと、日帰りで富倉峠まで歩くと言う。富倉峠というのは上杉が陣を張った辺りの峠を言う。距離は38kmと言っていた。「38km!?」と声を出して驚いてしまった。30kmでひいひい言っていた自分がバカみたいだ。それからもう一人、大きめのバックパックを背負った人がやってきた。この人とは話をしなかったけれど、もしかしたらこれから信越トレイルを歩くのかもしれない。二人に「頑張ってください」と声をかけて山頂を後にした。

ついに斑尾山山頂に着いた!

山頂からは一旦ルートを引き返す。10分ぐらい歩けば、斑尾高原のペンション街へと降りる「かえでの木トレイル」と接続する場所があり、この分岐点で信越トレイルとはおさらばだ。ちなみに、この分岐点はなかなか便利な場所だった。自分の場合、斑尾山山頂に向かうとき、ここに重いバックパックと簡単なメモを置いて向かった。正直、縦走に入ってからは結構大変で修行だと思いながら歩くことも多かったけれど、最後に体を身軽にして楽しく終えれたのは正解だった。

分岐点。結局戻ってくるので荷物を置いた。杖もここでおさらば

下山と帰路

下山から森の家までの行程をささっと書こうと思う。
かえでの木トレイルを歩いてまだらお高原ホテルまでが一時間。10時ちょっと前に着いたので、ぎりぎり温泉に入ることができ(10時から清掃だった)四日分の汗を流した。温泉に入った後は「オブセ牛乳」という牛乳を飲んだ。もしかしたら二日目に通った妙法育成牧場の牛乳かとも思ったが、違った。オブセとは小布施町のこと。でもコクがあっておしかった。

まだらお高原ホテルへ
オブセ牛乳

11時15分、タクシーで飯山駅へ向かう。数日前から下山したらおいしいものをたらふく食べたいとばかり考えていたので、駅周辺近くの「いなりや」へと直接行ってもらった。食べきれないほどの量が通常価格で出てくるので、腹をすかしたハイカーには正に天国と言える場所だ。

これで通常サイズ。やばい

13:10飯山駅から長電バスの乗り合いタクシーに乗車し森の家に向かう。事前予約が必要だから注意しよう。自分以外に飯山駅で乗車したのが一人、途中もう一人乗車してきたが、それからの記憶はない。約1時間の道のりの間、ずっと寝ていた。

乗り合いタクシー温井線に乗って森の家へ

森の家では、信越トレイルのガイドブックとハングタグの購入、それと一部抜かしてしまったが全線踏破証を発行してもらった。また知人経由で連絡を取り合っていた事務局スタッフのSさんと話をした。いろいろな話をしたが、延伸ルートがどのように決まったかの話がとても印象的だった。また、僕のように信越トレイルを(主に関田山脈の縦走路が)修行のように感じる人もいれば、楽しい縦走路と捉える人もいて、それがやはり時間的に余裕があるかないかでだいぶ感じ方が違うのではないかという意見を聞いて、なるほどと思った。
長電バス 斑尾高原ホテル~飯山駅 ※季節限定
長電バス 乗り合いタクシー温井線時刻表

最後に

今回信越トレイルを歩いて、本格的な縦走というものを初めて知った。僕にとって初めての縦走は苦しいものだったが、きっとこれは時間を気にしたせいで楽しいものも苦しいものにしてしまったのだろうと思う。今度歩くときは、もっと自由に、心を解放して歩きたいと思った。また前半の秋山郷から森宮野原までの道のりは、人との交流を含めて最高だった。縦走と里歩き、そして登山、信越トレイルはいろんな歩き方が一つのトレイルで体験できるトレイルだった。嫌なことも嬉しいことも自分次第。信越トレイルが教えてくれた気がする。

#10に続く