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大学時代は親友で、卒業してきっかり知人になった友人が居た。
その子と2年ぶりに会った時、「実は子宮外妊娠があって、片方の卵巣がダメになった。もう子供無理かもしれない」という話を聞いた後、何を話したのか記憶に無かった。
私がその場で泣き崩れそうで、でもそんな資格あるわけもなくて、「いや〜枯れるんかなってくらい泣いたよね笑」と言える友人をどこか俯瞰的に見ていた。
そんな友人がこの春元気な娘を産んだ。
それを聞いた時にいよいよ泣いた。
それこそ喉が枯れるほど、心でおめでとうと叫んだ。


5月某日、実はひっそり流産した。
妊娠が分かった2週間後、「胎嚢が小さい。成長がおかしい。この子はもしかしたら…」と言われていたから、心の準備はしていた、つもりではあった。
でも心音を聞いた時、「陽水が少ないな…」という医師が案ずるコメントをすっ飛ばし、あまりの尊さに最悪の結末は脳内から吹っ飛んで、それはもう舞い上がって、名前なんにしよ?男の子かな、女の子かなとあれこれ妄想した。相反して、体調は日に日に悪くなった。


兄の地獄の結婚式が終わり、若干の出血があった。
血腫があったから、「ああこれか」と感じたが、一向に止まらない。それどころか、尋常じゃない量に増えていく。
心臓がヒヤっとした。色んな憶測が飛んだ。翌日職場に向かう。血は止まらない。それどころかどんどん増える。見たこともない、夥しい出血。
刺すような痛みがある。明らかにおかしい。子宮が動いている、良くない方向に。
「やばい」という直感があり、仕事を投げ捨ててトイレに走った。
「出た」と思った。そして出た。見たことのない血の塊だった、客観的に見れば。でもそれは赤ちゃんだと本能で分かった。生理ではなく、血腫でもない。便器に沈んでいく塊は、「これは私の子だ」と直感した。
理性のストッパーが外れて、手を突っ込もうとした。ギリで脳が正常に戻って辞めた。
数秒置いて、「流すしかないんだ」と理解した。ごめんね、ごめんねと唱えながら水栓を引いた。あの感覚は一生忘れないと思う。

例えば、側から見ればただの排泄物でしかない状態で、私が便器を指さして「これ私の子なんで、ちょっと置いてていいすか?」と周りに聞いたなら、多分、緑が豊かな心の病院に連れて行かれたかな。とか
『それは確かにお前の“子”ではあるやろ…』と下品なユーモアで返してくれるかな。とか
こんな状況においても、私の思考回路はそんな感じだった。

だから、会社を早退して向かった産科で「もう子宮になにもありません」と言われた時も、ただの音のようにその言葉を聞いていたし、冷酷にも医師から渡された空っぽの子宮のエコー写真も、経過流産の説明書きも、どこかフワフワして見ていた。
案外自分は冷静だ、大丈夫だと思ったし、なんなら「よっしゃ暴食で元気出すぞ」とアホみたいなサイズのロールケーキを買って帰った。
旦那には結果をLINEで告げず、自宅の前で待ち合わせて一緒に帰った。
オートロックを開けるとき、「赤ちゃんやっぱ駄目やったわぁ」といざ声に出してみて、堰を切ったように泣いた。
【もう枯れるくらい泣いた】の台詞を思い出した。蛇口を捻ったが如く出た。びびった。もはや思考回路や感情が追いついてない状態でひたすら流れた。こんな水分出て人体って大丈夫なの??と思ったりした。冷静なのかパニックなのか謎だった。

イかれたサイズのロールケーキを見て笑うに笑えない旦那は終始冷静に私を宥めていて、
それで逆に 貴様ァァ!!!親のくせに悲しくないのかァアァア!!!!!と尾を引く八つ当たりをしそうになったが、
よく考えれば男性は悪阻を経験せず、産科に同席させて貰えない場合は心臓音を聞く事もなく、私の場合に至っては沈みゆく血の塊である子を泣く泣く流した体験もないので、
そんな男に女と同じ熱量の悲しみを求める事はまぁまぁ酷であるように思う。案外こんな時も理性は働くもんだ🤔
ロールケーキは1/4余裕で喰った。(1/4は旦那)

変な表現になるが、流産の形が非常に良かったので(?)母体にほぼダメージは無かった。勢いよく、跡を濁さず、かつ潔く流れた我が子。うむ、なんか私によく似ている気がする。
体は恐ろしく健康なので、仕事する分には何ら影響は無かったが、周囲がドン引きする事も予想して流石に翌日は仕事を休んだ。

寝付く時も、起きた時も、料理中もYouTubeを見ても蛇口は締まらなかった。
上を向いても下を向いても流れ落ちて来るので途方に暮れた。
旦那に許可を取り、ロールケーキの残り1/2を喰った。

涙の止め方で悩んだ事が無かったので、あれこれ逡巡した結果、脳内画像切り替え(cf:白葱と胡麻油)を久々にやってみよう!と思った。
泣きそうになったタイミングで、とりあえずザコシの誇張しすぎたダイアン津田を思い浮かべる…ッ!

ぁ^~ ゴイゴイスー

駄目だ。弱い。余裕で泣きそう。

もっと強い映像でなきゃダメだ。世間を震撼させるくらいの。究極奥義だ。
誇張しすぎた真木よう子に頼るしかない。

見て欲しい物はティンコンカンコンティンコンカンコンデェ!!

駄目だ。これが効かないなら打つ手が無い。
ザコシの笑いを凌駕する悲しみなど戦争以外無いと思っていたが、それは間違いだったようだ…

同期に心配されつつ、僅か1日の有給を挟んで出社した。
だけど、誰1人として仲良くないはずの職場が、とても優しく居心地が良かった。
「仕事中絶対泣き出してしまう」と思いながら出社したが、作業を与えられ、自ずと頭を動かし、旦那以外の多くの人と関わって話すうちに、常に悲しみこそあれ、いつの間にか蛇口が閉まった。

その3日間で、沢山の人から励ましをもらった。恐ろしく暖かかったし、優しかった。
「その…言いづらいんやけど…私今妊娠9週目で、でももう何てLINEしたら良いかわからなくて…」と半泣きで電話をくれた親友、何でそっちがスイッチ入ってんねんと思わず笑ってしまったし、不妊治療の経過を聞いていたからこそ心の底からおめでとうと思ったし、なんならそれで更に泣いた。
そして多分私への励ましも兼ねて旅行を組んでくれたお馴染みのメンバー、何事も無かったように「さ、酒のもうや」と連絡くれた同期、「実はね、私も夫姉と夫の間にひとり流産してるんだ。だからどれだけ苦しいか分かるからね」と夫越しに連絡くれた義母、
そして完全に私に嫌われている事を理解しているのに、絶対マイナス効果なLINEや望まない電話攻撃を辞めない私の両親は一旦さておき、とにかくありがたみが半端なかった(ゴミのような語彙力)

ふと、旦那に「悲しくないの?」と思わず聞いてしまった時、「6週で“もうダメかも”と言われたのに、10週も頑張ってくれたんやで?」と言われて、より一層尊く愛しくなって、その時だけ必死に泣くのを耐えた。ザコシ抜きで。

そうだ、そうだな。
早期流産はただの染色体異常で、6人に1人は経験してて、父母の問題では無くて。ただそれでは割り切れない、計り知れないものがある。
でもこの子は間違いなく私の中に居てくれて、旅立ったにせよ、確実に生きていたんだなぁ。
10週も必死に耐えた。褒めて欲しかっただろう。
なのにオカンに号泣されたら、めっちゃ凹むかも。
褒めよう。めっちゃ褒めよう。そして未来永劫大事にしよう。来てくれてさんきゅーやで。

例えば子を亡くした人に、「ぼちぼち忘れました?」とか聞くカスがおらんのは、一生その悲しみが消えない事を理解出来るからであるけど、
俗に言う“乗り越える”は、忘れるではなく、背負う覚悟が出来たんだと思う。
今回の経験を背負う。忘れられるわけないし、決して忘れたくないから、背負う。背負ってる限り一緒に居られる。ずっと一緒だね✌︎('ω'✌︎ )

良識ある大人たちは絶対に話題を振ってこないけど、
「お腹が激痛や… もしやこれが流産の後遺症…!?」と思ったらえぐめの便秘やったとか、
「トイレ行きたいけど、尿検査あるかもしれんから我慢するか…」という形で流産後の経過観察で産科に行ったら、超音波で内臓確認した時に『あの… めっちゃ膀胱腫れてますけど…大丈夫ですか…?』と聞かれた等、それなりに小ネタは仕込んでおきましたので。準備万端です。いつでも振って下さい。
自分、目先の、小手先の笑いが欲しいです。


どうしてもつけたい名前があった。
男でも女でも、絶対この名前をあげたいと思っていた。だからその名前は、この子にあげた。
だからもし、将来子供を授かっても、もうその名前は必要ない。幻の第一子だけのもの。
気に入ってくれると良いなぁ。

ネットで、流産経験者の声を調べた。
「不妊治療の末に授かったのに…」「もう38歳なのに…」「2人続けて流れた。不育症治療に切り替える」など、悲鳴に近い書き込みを沢山見て、
でも皆だれも諦めてなくてかっこよかった。
命むずすぎワロタ。

私の前を向く、は、とにかく人と喋ってアホみたいに笑う事だと実感したので(但しコミュ障)
これからもより一層笑いに貪欲でありたい
私が笑ってたらあの子も笑うやろ、知らんけど。

それにしても、なんか自分自身の直感というか、本能というか、動物としての勘が割とすごい事に気付いた。
そしてその直感が、「なんかええ事起こりそう」と言ってるので、これからの人生もええ塩梅で行ける気がする。知らんけど。

「私の慰安旅行で、ぼのぼの聖地巡礼するから。ホテルはドーミーイン取るから。有給取って」と命令形で旦那に提案すると、旦那は即座に有給を申請していた。(旦那の慰安は兼ねてないの今気付いた)
2度目の仙台。待ってろ加美町🦦

18日は遂にTHE SECOND…!!!!
2年連続の金属バットも、密かに推してたガクテンソクも、旦那激推しのななまがりも………!!!
M-1同様、寿司でも取ってパーティするか🍣

そして6月は旅行も。楽しみやなぁ…( ´˂˃` )

クレーム対応で四時起きだった旦那に釣られて起きたら、金属バットのめざましじゃんけんとかいうイかれた奇跡を見れた

早速ええことあった



みんなありがとう、ほんとありがとう

そして、ビアードパパのロールケーキは美味いぞ
でかいけど。