6.手ぶら

ほとんど俺は手ぶらで歩きたい。
仕事の時も、買い物の時も、飲みに出る時も。
最低限の持ち物で歩きたい。
少しばかりのお金や、鍵や、文庫本がポケットの中にあればそれだけでいい。

何かを持ってると、何かを運ぶ人になる。
手ぶらの人は、歩いてる人だ。
街を歩く人。
俺は、街を歩く人でいたい。

これから何かを持つことになるかもしれない。
誰かと歩くことになるかも。
持たされる人になるかもしれないし、持たない人のまま帰路につくかも。
そんな可能性を胸に抱えながら、街を歩くのはいい。

雨の日は濡れても傘を持たない。
寒くなると分かっていても上着を持たない。
街を歩く人は、予期せず、準備しない。

手ぶらで歩く。
昼の街も夜の街も。
「シャララ」で始まる鼻歌を歌いながら。
歌ってのは、手ぶらでも歌えるのがいい。

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