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病気の事 Vol.6

本格的な治療が始まったことは前回書いた。

リハビリが始まって、妻はどのようなことを行っているか
見学させてほしいと思うようになったそうだ。
それで、ある日、理学療法士の先生に聞いたところ
「患者以外はリハビリルームには入れません。」とのこと。
但し入り口のカーテンを開けておくので、そこから見えるでしょうと言われ
実際そのようにしてみた。

リハビリはまず入念なマッサージから始まる。
その後、片足ごとに1kgの重りを付けて歩くような感じで
椅子の上で右と左の膝を交互に上げる運動をする。
地味にキツイ。
タイマーがセットされ、担当の先生は別の患者を診ている。

それで妻は、もう動かないから適当にあしらっていると思ったらしい。

実はこれにはいろいろな意味がある。
特に自発性を強くしていく効果のためだと
先生に教えてもらった。

そんな日々が続き、ビタミンBの連続投与も終わったある日、突然、理学療法士の先生が
「歩いてみよう。」と言い出した。
何を言ってるんだと思ったけど、まずはやってみようと思った。

後ろから倒れそうになった時に車椅子が付いて行くので
危険を感じたらそこに座って欲しい、と言われた。

自分の乗っている車椅子から、すっくと立ちあがった。
「あれ、立てるんだ。」

まずは右足を前に次に左足を前に交互に出してみると歩けている。
その日は約5mほど歩いた。

次の日は一気に20m歩いた。
いつの間にか歩けるようになっていたのだ。

その頃、ボクの主治医の女医さんは、遅い夏休みをとっていた。
休み明けに出院して、読んだボクのカルテに驚いたそうだ。
ボクが歩けていると記載されていたからだ。

出院初日、ボクの歩いている姿を一刻も早く見たかったそうだ。

主治医は臨床医師なので、基本的には6時まで外来の治療室にいる。
その日は外来患者が少なかったらしい。
それで5:30頃、ボクの病室までやってきた。

開口一番「歩けるようになったんだって。歩くところをみせてくれないかな。今歩けますか?」と言われた。

ベッドから立ち上がり病室の出入り口まで歩いた。
「そこでターンできる?」
ターンは当時は難しかったが、何とかできる。
それでターンをしてみた。
主治医は「すごい。もう戻らないと」と言って帰っていった。
少し冷たくないかと思ったのだが、その理由が後で分かった。

主治医はエレベーターホールで大泣きしながら
エレベーターの向かいにあるナースステーションに向けて
「私たちやったよね、やったよね」
と言ったそうである。

ほんとうにそうだ。「やったのである。」

書けなかったけど、これ以外にもたくさんの出会いがあった。
ボク担当の看護師さんの事や、言語療法士の先生の事とか
いろいろあるが、今回はここで一旦終了です。

この後、リハビリ病院に転院したのだが、そのことはまたいつか書こうと思う。

長々とご拝読いただきありがとうございます。

ではまた。


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