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最高なお弁当

山国育ちのせいか、魚全般が苦手だった。
特に焼きたてでも、青魚が苦手だった。
それをお弁当の主菜にするなんて、
当時、考えただけでも気持ち悪くなっていた。

やがて妻になる女性が住んでいるところの近くには、
軽いハイキング程度ができるくらいの山しかない。
その女性から誘われて、その山に行ってみた。
小学生でも登れる山だよと言われて行ってみた。
もうかれこれ30年くらいの前の話だ。
これが珍道中になるのだが、それはまたにしよう。

頂上に着き、さあ昼食だということになった。
お弁当は、妻が用意してきた。
丁寧に持って来ていたので、とても期待していた。

渡されたお弁当の蓋を開けてみて驚いた。
どーんとご飯のわきに焼き魚がある。
そのお弁当のメインデッシュが焼き魚である。
ちなみにお弁当の魚が苦手だと伝えてあったはずだ。

かなり困ったけど、せっかく作ってくれたので
食べてみることにした。

その魚、サバなのだけどボクの苦手だった魚だ。
けれど一口食べて驚いた。
サバがもろみに漬けてあったのを焼いているのだけど、
冷えた焼き魚特有の臭みがない。
脂がのっているサバのしつこさを、見事にもろみが中和している。
いや、むしろうまみが増している。

そのお弁当は、最高なお弁当としてボクの記憶に書き込まれた。

今では大好きな魚料理のひとつがこの「サバのもろみ漬け」だ。

その頃の妻にお礼を言いたい。
新しい味覚の感性を呼び起こしてくれてありがとうと。

ではまた。

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