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病気の事 Vol.1

それはある日突然だった。

左側を下にして寝ていたのだが、しびれを感じて寝返りをしようとした。
でも、体が全く動かない。
10分程度頑張ってみたが、何も変わらない。
そこで横に寝ていた妻には申し訳なかったけど
声をかけて起きてもらい、背中を押してもらって何とか向きを変えることができた。

その日から、いわゆる寝たきりになってしまった。
四肢が動いてくれない。
トイレには何とか柱や壁を伝っていくことはできたが
どんどん運動能力が欠損していく。

妻は、このままではボクが死んでしまうと思って、
当時通っていた病院に泣きながら電話をしてくれたそうで
何日か後にその病院に行くことになっていた。

その年はお盆まで猛暑で、エアコンをつけていても
当然のことながら、水分補給をしなければならない。
ところが手の動きが極めて悪く、
寝ている横に置いておいてあるコーラを飲むのも難儀で
何本も倒してこぼしてしまった。
汗拭き用のタオルで拭くのだが、きれいに拭くことなんてできない。

それでも何とかトイレに行ったのだが
トイレのある横の洗面所と廊下の間にあるたった10cm程度の高さの敷居がまたげない。
敷居に足を取られ、激しく転んで膝を大きく擦りむいた。
もう動くのはこれ以上は無理だった。
力が全く出てこない。
はいはいすらできない。

「ああ、ここで熱中症で死ぬんだな」と妙な覚悟を決めた。
寝ていれば逝けるのだろうと思って、目を閉じた。

しばらくすると玄関のカギを開ける音がした。

毎日、定期的に妻とケータイメールなどで連絡をとっていたのだが
その連絡が途絶えたわけである。
妻は何か良くないことが発生していると考えたらしい。
大正解だ。

妻は自分の両親に電話をして、勤務先まで来てもらい
家の鍵を渡して、そのカギをもって義母が様子を見にきてくれた。

何とかエアコンがきいている洋間まで、
四苦八苦しながらつれていってもらった。
少し意識混濁が発生していたようで、何が起こっているのか
よくわからなかった。
そもそも自分の体がどういう様な格好になっているかもわからなかった。
ただ音の聴こえてくる感触だけは明確に覚えている。
プールの水の中に入っているような感じで良く聞こえなかった。
とても怖かった。

いったいボクの体に何が発生したのだろう。
その時には、命が危機的状況にあるとは思ってもいなかった。

その日から闘病生活が始まった。
この後の状況は、またあとで。

ではまた。

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