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大学教授、ゼミ生を連れてアメリカに渡る①〜JALの呪い編〜

≪プロローグ~羽田を走る~≫

羽田空港国内線ターミナルを走る10人の旅客。女性空港職員がトップを独走し,

「お客様ぁ~,43分のモノレールに乗りま~す!」

と,割と大きめの荷物を抱えた我々を鼓舞します。ただ今の時刻は日本時間の2月5日の18時40分。17時10分伊丹空港発羽田行きの便が30分ほど遅れたために実現した羽田空港障害物レース(中距離)。無事乗り込んだモノレールの車内にて,これまで先頭集団を引っ張ってきた空港職員が携帯電話で何かを話した後,力なく告げるのです。

「LA便には間に合いません…」

先頭争いを繰り広げていた米国人男性は怒りを押し殺し,

「でぃざすたぁ!(Disaster!!)」

と溜め息と共に吐き捨てます。国際線ロビーを疾走してみたところで結論は一緒。そりゃぁ国際線出発時刻の30分前にアメリカン航空(AA)のカウンターに着いたところで乗せてくれるわけないよね,米国人って意外と律儀だし。ちなみに,預入荷物が一つもなかった男性客一人だけは搭乗可能ということで

「お客様,いかがなさいますか?」

との悪魔のお誘い。

「獅子は我が子を千尋の谷に突き落とすらしいし,ゼミ生5人を置いて一人でLAに行っちゃおうかしら…」

と子悪魔の声が一瞬聴こえたものの,学部長室に呼び出される姿が,否,もっと偉い人の前で学部長と横並びで深々と謝罪する映像が脳裏を過り,あえなく断念。そこから羽田での長い一日が始まるのです。

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¥ 300

ゼミ生と酒盛りします。