無茶苦茶自分勝手な医療訴訟(林田医療裁判)

これ、ネット上に堂々と公開されている文書なので、私がここに紹介しても悪いことは無いでしょう。まあ凄まじい言いがかりの医療裁判です。

そもそも長男は延命を希望していなかったんですよね。それなのに医者がユナシンを止めたから死んだって身勝手としか言いようが無い。大体長男が勝手に経鼻経管栄養を早めたって、殺してるようなものじゃ無いですか。本当の殺人犯は長男です。

ちなみにこう言うガボッと誤嚥して起きるのは、正確には誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)ではなく誤嚥性肺臓炎(aspiration pneumonitis)と言います。誤嚥性肺炎というのは口腔内の雑菌などが特に夜間、仰臥位で少しずつ誤嚥されて起こるもので、原因は細菌が主ですから治療は抗生剤を使います。一方こういう誤嚥性肺臓炎は一気に肺に入った流動栄養物が肺で化学的炎症を起こすので、少なくとも当初は細菌性ではありません。従って酸素吸入と絶食だけしておけば自然と落ち着きます。


ただしこの症例のようなフレイルなケースでは誤嚥性胰蔵炎から誤嚥性肺炎、つまり細菌性肺炎に移行する場合も多いので抗生剤を併用しても悪いわけではありません。起炎菌がはっきりする前のfirst choiceとしてユナシンはもっとも妥当です。
ちなみにこのユナシン、大切な抗生剤なのですが今全世界的に品不足で、なかなか手に入らないで困っています。何でも中国の工場で事故があったとか聞きますが。
ユナシン5日後に肺炎が改善したかどうかはここに示されたデータだけではなんとも言えません。WBC14,600ならまだかなりの炎症が続いていたと考えられます。1,600減ったぐらいはたまたまの増減の範囲内の可能性もあります。杆状核球はたいした意味はありません。好中球がどうなっていたかの方が炎症の程度を見るには適しています。むしろこういう患者の場合、白血球もCRPも大して当てになりませんから、肺炎が改善しているかどうか見るにはsPO2を指標にします。血中酸素飽和濃度。これがよくなってきていればある程度肺機能が改善していると見なせます。でもこういう状態で多少改善しても、元々の体力、免疫力が無いですから、いつでもコロッと急変しますけどね。


こういう、まだ炎症が強い段階で経腸栄養を再開するのは不適切ですから、主治医はそれはやらなかったんでしょう。しかしそもそも延命希望が無いなら、IVHだってやる必要はありません。通常の末梢点滴だけでお看取りコースで良かったと思います。そもそも延命希望が無かったというのですから、私ならこの時点で「おそらくもう助かりません」と説明します。


「主治医は嘔吐の原因を明らかにしないまま」なんて書いてありますが、この文面からは嘔吐は長男が勝手に経腸栄養を早めたのが原因とほぼ断定出来ます。延命希望が無いのにIVHは出来ませんが、ここで経鼻経管を入れてしまったのはちょっとマズかったですね。まだ炎症が続いているわけですから、誤嚥を起こしうる経鼻経管もやらない方が良かった。上に述べたように早々に延命不可能なことを説明して看取れば良かったんです。


「このように母親は回復傾向にありながら」は暴論。この経過からどこにも回復傾向は読み取れないし(素人の長女がどう思ったかはどうでもいい)、そもそも論からしてこういうケースは初めからend stageです。いつ死んでもおかしくない状態です。ファロムは厚労省が定める効能効果に「肺炎」とありますから法的にはこの患者に使って悪いことは無いですが、どのみちこういう状況になるとなんの抗生剤を使おうがほぼ助かりません。法律用語で言うなら「訴えの利益が無い」って奴です。


ともかく、そもそも延命を希望していなかった上、最初の嘔吐の原因は長男が勝手に経腸栄養を早めたことであるのがほぼ確実と考えられるのに、つまり長男こそ殺人犯なのに、医者が悪いのどうのなんて身勝手というか厚かましいというか、まあめちゃくちゃです。長男が素人だから責任問われないのかもしれませんが、もしこの長男が医療関係者であれば長男こそ殺人罪に問われてしかるべきです。全くとんでもない家族、とんでもない弁護士です。


しかし、89歳で、脳卒中で嚥下反射が低下して誤嚥が確実でものが食べられないという患者に、日本中でこの人みたいに経鼻経管が入れられたり、胃瘻が作られたり、IVHされたりしてるんですけど、それこそがそもそも「生命の本質」に反するんです。二千年前の中国の有名な医学古典「黄帝内経(日本語ではこうていだいけい、中国語ではフアンディネイジン)に、「胃気無き者は逆となす。逆はすなわち死す」とあって、食べられなくなったら生き延びられないと書いてある。昔の人は正しかったんだ。今はこういう食べられなくなった人に色々管を突っ込んで栄養入れて、寿命だけ延ばして平均寿命が延びたって言ってますが、こういう医療はもはや医療では無いです。その上管をひっここぬくからと患者の手を縛ったり(抑制)するに至ってはもう、何をか況んやです。だからって裁判でこの患者に管を入れていたのが悪いと主張しても日本中で当たり前に行われていることですから話は通りませんが、全くこういうend stageの人に管突っ込んで生きながらえさせて良いことは何一つ無い。もういい加減、そういうことは止めるべきですなあ。
https://hayariki.wixsite.com/hayashida/post/unasyn...

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