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アイドルという熱狂 ― 8月27日 トー横広場

歌舞伎町を散策するつもりが、気づけばアイドルのライブに夢中になっていた。

8月27日、歌舞伎町のシネシティ(トー横)広場にふらっと行ったところ、ちょうどアイドルのライブをやっていた。入場は無料。どうやら「日本駆け込み寺」が共催したイベントのようだ。

もともとアイドルに興味はなかった。「青さをアイデンティティに売る」というビジネスの構図が好きになれない。それでも、力強い重低音を鳴らすライトアップされたステージには、通りすがりを引きずり込む魅力がある。

広場で繰り広げられていたのは、たくさんの「熱狂」だ。小柄な少女が、爆音に負けじと叫び、自分たちの存在を目の前の観客に訴えかける。

けして有名なグループではない。いわゆる「地下アイドル」と呼ばれる類だ。彼女たちは、少しでも新規ファンを獲得するためか、会場でもチラシや名刺を一人一人に配っていた。

音楽が次第に盛り上がると、観客は好き勝手に踊り出した。あふれるエネルギーをぶちまけるかのように踊り狂う長髪の男のサンダルが、会場の外まで飛んでいく。

海外観光客と思わしきスキンヘッドの男二人も、つられるように手を振り出した。英語を話す少年は、アイドルと撮影したチェキを片手に、興奮した様子で連れの肩を叩いている。

アイドルは15分足らずで別のアイドルに交代する。けっきょく、2時間近くあるイベントを、ほとんど最後まで眺めていた。

広場の外に出て飲み物を買いに行くと、自販機の横には段ボールが敷かれていて、目のすわったタンクトップの男が寝転がっていた。その近くでは、黒いゴシックの少女や、青い髪の青年がぱらぱらと集まり、囁くように会話していた。少し遠くから、二人の警察官が彼らを見張っている。

帰り際、ちかくの映画館に宮崎駿の「君たちはどう生きるか」のパンフレットがあったから、買った。820円もしたが、内容はあまり頭に入らなかったので、また後で読み返そうと思う。


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