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アクアピア芥川(2023/1/7)

1.初めに

 こんにちは。こんばんは。今回は、アクアピア芥川へ行ってきました。高槻市の運営する自然博物館になります。この博物館へ行き、面白かった点について説明していきます。

2.展示構成

 まず、アクアピア芥川は、1階~4階までの構成になっています。1階は、昆虫、鳥、哺乳類の標本の展示が中心になっています。2階は、ミニ水族館となっており、芥川に住む淡水魚とカメなどの生体が展示されています。3階は、2階の吹き抜けとなっており、図書室、事務所が併設され、ここで調べものができるようになっています。

3.入口展示

 1階から入館した時に私達を出迎えてくれるのは、「樹木の標本」です。樹皮の違いが目の前にあるため、どの木とどの木がどう違うのかが分かる実物展示となっていました。木々を並べると「こんなに違うのか」と驚きます。

 もう一つ、面白いと思ったのは、「プレートテクニクス」になります。これは、「展示の仕方」が面白いと感じました。そもそも「プレートテクトニクス」は、海側のプレートが沈み込むことで、陸のプレートもつられ、時間が経つと陸側のプレートが跳ね上がり、地震が起こるというものです。この現象の説明は、映像や縮小展示でボタンを押せば、再現できる展示が多いです。しかし、ここでは、「プレートテクトニクス」の海側のプレートが、沈み込む様子を回して再現します。つまり、展示が手作りで体験型ということです。手作りというだけでなく、自分の体でという所が面白く、ここは、子供連れが多く、彼らが学びの場としては、地球の現象がどういうものかが学びやすい展示になっていると思いました。 

赤枠部分を回すと、海側のプレートが沈み込みます。職員やボランティアの方々の作り込みに感服します。

4.1階展示

 1階の展示は、標本がメインの展示になっており、様々な展示が私達を出迎えており、今回は、その中から、面白かった点を紹介します。

ミサゴのハンターの目がいいですね。ゴイサギの狩りをする所がカッコいいデすね。ノコギリクワガタがずり落ちるという珍事態オオサンショウウオの骨って、かなりごついですね。

 まずは、鳥の羽の付き方です。皆さんは、鳥の羽は、どうついているか知ってますか?正解は、「骨に直接ついている」になります。飛んでる時にぽrポロ羽が落ちてしまってはいけないため、骨に直接くっつけ、簡単に抜けないようになっています。

私は、この知識をこの展示で知りました。

 次は、アメンボの匂いになります。アメンボは、実は、目レベルにはなりますが、カメムシの仲間になります。カメムシというと「臭い」つまり、匂いをイメージすると思いますが、アメンボも匂いを発します。主に、仲間とのコミュニケーションをとるために匂いを発します。ここでは、カップの中にアメンボの匂いを再現した化学物質で再現され、匂いをかぐことができます。私は、嗅ぎました。カメムシのような匂いではないものの刺激や臭さはありましたが、かなり希釈されたものになっていたと感じます。

 チョウの標本ですが、「傷のある」チョウの標本になります。ここにあるものは、天敵である鳥などに襲われ傷のついたものが展示されています。多くの昆虫展示では、きれいな状態のものが多く展示されています。しかし、破れたものを展示することで、彼らが生きていた生々しい記録の痕跡が体に残るので、どういう生き方をしていたのかを想像することができ、どういう生き方をしていたのかを考えることが面白いです。 

クロアゲハとルリタテハです。ルリタテハは、何回も襲われたのか、ちぎれた箇所が多くて印象に残りました。

 最後は、「ポンポンメクラチビゴミムシ」になります。これは、多分ここでしか見ることのできない貴重な昆虫標本だと思います。まず、ボンボン山には、開成皇子によって創建された神峯山寺、本山寺があり、歴史の古い寺であることが分かります。本山寺の種変異は、大阪府では珍しいモミ林・ツガ林・アカガミ林が広がり、大坂では珍しい自然が広がっています。その上、二次林によって、里山的な環境が残されています。以上の点から、ここに住む動物、とくに昆虫は、非常に多様なものとなっています。水辺の環境、渓流があるということから、ここでは、オニヤンマの生息が確認されています。

*開成皇子について知りたい方は、こちらのサイトをご覧ください。

オニヤンマ、カッコいいですね。
ヤゴの飼育が夢です。

 そして、この山から、「ポンポンメクラチビゴミムシ」が見つかっています。3~4㎜ほどしかない非常に小さなゴミムシになり、渓流周辺の地下30㎝~1mの石や土の隙間に生息します。そのため、目がなくなり、「感覚毛」と言われる毛が体中に生え、周りの変化を感じています。
 ポンポンメクラチビゴミムシの生息に関して、京都府レッドリストには以下のように記述されています。「スギ林+渓流」が大切で、きれいな水があればいいわけでもなく、植物相も相まって彼らは生息できているということになります。つまり、デリケートな環境に生息する虫であるということになります。

二次林あるいはスギ植林中を流れる渓流沿いが生息地になっているので、現存している生息地の環境は比較的良好である。

https://www.pref.kyoto.jp/kankyo/rdb/bio/db/ins0306.htmlより引用
これが、ポンポンメクラチビゴミムシです。
非常に小さく、下手したら、見逃していたかもしれません。
標本箱の左上に展示されています。

5.2階展示 

 ここでは、カメと淡水魚を中心とした生体が展示されています。
 一つの見所は、大水槽になります。ここでは、前からカワムツ、オイカワ、コイの順に展示されています。カワムツは、繁殖が容易なためか、勝手に繁殖し、小さいものが増えています。

大水槽になります。
上流から下流への
ここに写っている小さなものすべてがカワムツの稚魚です。
こちらがカワムツになります。

 この芥川に生息するすべての生物ではありませんが、各種類ごとに水槽を用意し、1種類ごとに展示されていました。1種類ごとにしっかり見てほしいと感じました。

ウナギです。
とても大きく、食うには、十分に肥えてます。
カワヒガイです。
石の中にじっとしており、なかなか出てきてくれませんでした。

 この博物館のアイドルは、「ムギツク」になります。ここでは、「ムギちゃん」との愛称の博物館のマスコットがいます。彼らの面白い所は、「托卵」という生態、つまり、他の魚の産卵場に産卵し、自身の卵を守ってもらう生態をもつことになります。オヤニラミ、ドンコ、ヌマチチブなどの魚に托卵をします。

ムギツクです。
石の中に隠れ、私を警戒していました。
解説パネルには、このムギちゃんがいます。
探してみてください。

 現在、問題になっている外来種問題に関する展示もされています。ここでは、ブラックバス、ブルーギルだけでなく、タウナギ、カダヤシなど、日本を代表する外来種の生体が展示されています。それら外来種の中でも最も象徴的な展示は、「カミツキガメ」「スッポンモドキ」になります。

なかなかいい写真をが撮れなかったです…

 「カミツキガメ」と「スッポンモドキ」の両者の共通点は、「ペット目的で日本に持ち込まれた」という点になります。
 カミツキガメは、売られていた時は、ワンコイン程度の大きさで可愛いものが売られていたが、大きくなり、怪我をする危険もあることから、大量に逃がされ、生態系を破壊する問題が出たため、現在、特定外来生物に指定されています。
 一方のスッポンモドキも大きくなります。ただ、ニューギニアやオーストラリアなどの温暖な環境に生息するため、日本には定着できません。しかし、ペット目的とした需要ゆえに乱獲され、現在、ワシントン条約の附属書Ⅱに指定されています。

カミツキガメになります。
居眠りしていました。
スッポンモドキになります。
豚鼻もいいですが、目がウルウルしていました。

 この2種から分かる問題は、ペット需要が、「日本だけでなく、現地の自然を破壊する」ということになります。外国の生き物を逃がすことで、日本の生態系を破壊するだけでなく、現地の生き物を取りすぎて現地の生態系が破壊されるということになります。つまり、ペット需要の負の影響が現れていることがこの2種から分かります。このような問題を抱えていることから、今、ペットと自然の在り方が見直されなければならない時にあるといえます。
 ただ、外来種の悪い面ばかりではなく、ここでは、「大切な仲間」として扱われています。ここで展示されているカミツキガメは、淀川で獲れたものになり、博物館実習来た学生にとても可愛がられていました。彼らは、「カッコいい」や「可愛い」と感じています。特に、エサをねだる所が、可愛く、全くごつくない所を見せてくれるそうです。また、博物館実習に来た学生たちの外来種問題をまとめたパネルが展示されています。それを読みに行くものいいと思います。

このカミツキガメの骨格標本は、昔、アクアピア芥川で飼育されていた個体です。
亡くなって終わりではなく、生きた証を残しています。

 他にも、「ハカセの部屋」というという魚の研究部屋の再現展示があります。ここでは、「魚の標本」作りで、どのようにして作られているのかが解説されています。

ハカセの部屋全体です。
このようなホルマリン漬けの標本を作ります。

 標本づくりの全ては説明できませんが、一部だけ説明します。
 まず、ホルマリン漬けにすると、魚が固まってしまいます。その時に、鰭と体がくっついてはいけないため、すべての鰭を立てる「ヒレたて」を行います。

本物のキッチンのような所でヒレたてを行います。

 他にも、標本につけるべきラベルや魚を捕まえる道具、どのような文献で勉強しているのかなどの本の展示もありました。まさに、研究部屋でした。

私もこんな部屋を持ってみたいです。

6.3階展示

 ここで面白かった点は、2階の大水槽が別視点で見れることになります。2階からだと、魚を見ることがメインになっていますが、3階では、上流・中流・下流の違いが分かるようになっており、植物相の変化が上から分かるようになっています。また、このアクアピア芥川は、中流域に位置するそうです。また、2階が吹き抜けになっており、2階の展示が見れます。

左から、上流から下流へとなっています。
スッポンモドキとカミツキガメが見えます。

 実物ではありませんが、芥川に関係する歴史のパネル展示があります。今城塚古墳、三好長慶、高山右近などになります。何が書いてあるのかは、是非、アクアピア芥川へ行き、確認しましょう。
 そして、アクアピア芥川を中心に部活として市民と一体化した活動を行ています。芥川で外来種の駆除、虫を捕まえる、鳥の剥製の作成…などと非常に活動が多かったです。

ここにあるものすべてが活動の紹介になっています。

7.企画展示

 私が、入館し時は、企画展示として、「たかつきのどんぐり」の展示が行われていました。どんぐりとは何か、どのような種類があるのか、どんぐりの一生、利用者との戦い、人間との利用…などと様々な展示が行われていました。(*現在は、終了)
 まず、どんぐりとは何者でしょうか?どんぐりは、「果実」でそこから芽が出ることで、植物として成長します。また、どんぐりと言われるものは、ブナ科の木の実であり、全部で22種類あります。ここでは、コナラ属、シイ属、オニガシ属をどんぐりとし、高槻市では、13種が確認されてます。また、どんぐりは、山の中でないと見つからないわけではなく、街路や公園で見つかるもの、山でしか見つからないもの、町でも山でも見かけるものなど実は、生息が色々とあります。

高槻市のどんぐりです。

 この企画展示で面白かった点を紹介します。
 どんぐりは、できるのに時間がかかるということです。実を作るのに1年のものと2年かかるものがあります。カブトムシのやってくる木であるクヌギでは2年、コナラだと1年かかります。じっくりと木の実を作っているということです。

今年落とすものと同時に来年のものを作るのに驚きました。
今のものを作りつつ次のものを作るのは、ウサギの繁殖みたいでした。

 次は、どんぐりの形が多様であるということです。クヌギのように太いもの、スタジイやコナラのようにスリムで小さいもの、大きいがスリムなマテバシイなどと果実そのものの形がさまざなにあるということです。また、どんぐりが被るかんむりももじゃもじゃな帽子であったり、うろこのようなペットりとしたものなどかんむりだけ見ても形は多様です。

左がクヌギで右がマテバシイになります。
どんぐりを適当にとって並べて見ました。
一言でどんぐりと言っても形が違うものが多いですね。

 そして、どんぐりの利用者との戦い、どんぐり戦争です。そもそもどんぐりは果実です。つまり、次の世代へとつなげるための命のバトンです。そのようなどんぐりは、そう簡単に食べられるわけにはいきません。そして、どんぐりを食べようと狙う生き物は、ネズミやリスがイメージされますが、彼らだけでなく、ゾウムシのような虫、鳥、クマ、人間と立派な樹木になるためには、逃れなければならない敵が多くいます。

どんぐりを狙う猛者達す。

 よって、彼らに食べられないよう対抗手段を持っています。一番有名なものは、「貯蓄するクセのある動物に埋めてもらうことで、そこから芽を出す」というものや「豊作になる年と凶作になる年がバラバラにある」というものになります。しかし、これらだけではありません。殻を厚くすることで、小動物には食べられないようにしています。さらに、どんぐりの芽の部分は絶対に食べられてはいけないため、その部分だけは、不味くすることで、ゾウムシなどの虫に食べられないようにしています。さらに、タンニンという物質を持っており、苦くて渋い味がするだけでなく、多量に摂取すると死亡することのある危険なものでもあります。このタンニンを持つことで、「あんな不味いもの食わない」となるようにしています。 
 以上のことからいえることは、私たちの目では決して見ることできない食う・食われる戦いが起こっており、次の世代へつなぐためにどんぐりは、天敵たちと戦争をしているということです。つまり、これから感じる時は、「あぁ、秋が来た」ではなく、「これから捕食者たちと生き残りをかけた戦場へ行っているのだ」ということです。
(*タンニンについては、下記参照)

実験では、アカネズミにミズナラのドングリだけ与えて飼育すると10日以内に大半が死亡します。しかし、餌に少しずつタンニンを混ぜてタンニンに馴らした後にドングリだけ与えて飼育すると、ほとんどが死亡せずに健康な状態を維持します。

https://center.shiretoko.or.jp/natureblog/2014/10/5414.htmlより引用

 では、人間は、どんぐりを見て「秋が来た」と思うだけなのでしょうか?決してそういうことはなく、人間もどんぐりからたくさんの恩恵を受けています。縄文時代の遺跡からコナラやトチノキなどの樹木やそれに関係した木の実が見つかり、食用として利用していたこともわかっています。食べるだけでなく、どんぐりが成長した後の樹木も生活の道具として文化の面でもどんぐりの利用が多様であることが分かります。

薪として、カンナの材料に、染料の材料に、そして、クッキーとして…
つまり、使い方は、非常に多様であると言えます。

 (*下記論文より、縄文時代の食用利用についてわかります。)
(国立歴史民俗博物館学術情報リポジトリ (nii.ac.jp))

 以上の点から、どんぐりを見つけたから「秋が来た」だけではないことが分かると思います。私たちの生活や文化とも密接に関わっていることが分かります。そして、どんぐりは、捕食者に食べられないように戦っていますが、どんぐりが食べられるからこそ、動物たちも命を繋ぐことができます。つまり、私たちの生活と動物の命を支えるための縁下の力持ちのような存在でもあります。

8.まとめ

 市営の博物館で、市の自然、特に河川の環境に特化した博物館であるとの印象を持ちました。他の博物館とも共通する展示はありますが、ポンポンメクラチビゴミムシを代表するようにここにしかない展示もあり、「どこへ行っても同じ」博物館とは決して言えないものでした。
 全体の展示で共通して面白かったものは、「手作り」が多かったことです。プレートテクトニクスの展示を代表として、壁に絵をかいたり、その絵はクイズになっていること、展示を一から作ることなどして非常に個性の強い展示であったと言えます。つまり、あるものを有効に使うことで展示は面白くできるということになります。

バードウォッチングで使う望遠鏡が手作りでできています。
どういう所に住んでいるのかを背景にしている所が絵で描かれている所が味があります。
クイズみたいになっている所が面白いです。

 最後になりますが、このアクアピア芥川は、企画展示を含め入場料は「無料」になっています。もし、遊びに行く機会があれば、是非、足を運んでみてください。
 以上になります。最後まで読んでくださりありがとうございます。

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