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カーリングのマーケティングに懸けるもの

いくつかnoteに書きたいテーマがあったのですが、せっかくなのでどの話題に関心が持たれているのかアンケートを実施させていただきました(本当は自分のお尻を叩くため)。たくさんの投票(お尻たたき)、ありがとうございました。


圧倒的1位の結果に従い、とりあえず、寝ました(笑)

・・・すっきり目覚めたところで、「私がJCAのマーケティングを頑張る理由」について書くことにします。

人生の岐路・競技の前線を離れるとき


私自身がJCAのマーケティング委員になるに至った、ざっくりとした経緯は以前、プロフィールに書かせていただきました。

2018年からは仕事・学業・家庭の事情でカーリング競技の前線から離れたはずが、あり余るカーリングへの想いを抑えきれず、見かねた日本カーリング協会(JCA)担当役員の推薦を受けマーケティング委員としてJCAの活動に参画。以降、SNSアカウントの立ち上げ・運用、北京オリンピック期間にスタートしたYouTube配信「#カーリング沼 へようこそ!」の企画・進行などを担当する。

岩永直樹 - プロフィール

国内では2017年まで、社会人兼カーリングアスリートとして二足のワラジを履いて過ごしてました。当時のSC軽井沢クラブには勝てなかったまでも、2014年、2016年の日本選手権は決勝まで残り、カーリング専用施設のない東京に住んでいたという環境を思えば、頑張っていた部分もあるかと思います。
日本選手権準優勝の意味は実は重くて、実質・次年度のJCA強化指定Bチーム(JOCオリンピック強化指定選手)として過ごすこととセットであったりもします。(日本選手権の優勝&準優勝と3位以下は待遇に大きな隔たりがあります)

2017年の日本選手権は前年度準優勝チームとして出場するもなかなか噛み合わず
当時は自身として最後の日本選手権になるかもしれないとは思っていなかった

一方で、妻も企業勤めで(しかも将来を期待される立場)、2度の産休・育休を通じて自身の時間・キャリアをある種、犠牲にしてくれていたような状況でした(私にはそのように感じられた)。

特に2017年3月に第二子が産まれたタイミングは私の人生にとって大きな岐路であったと今振り返っても感じます。

二足、三足、四足のワラジを履くような状況で、さすがに役目を果たせないと自分自身が感じることも増えてきました。

自分たちが競技で出した結果で掴んだものであるとはいえ、JCA・JOCの強化指定という境遇を活かしきれていないことに対する申し訳なさ、やるせなさ。妻がキャリアを犠牲にしてくれている中で、私だけが掴めるかわからない夢を追いかけていることに対する申し訳なさ。このまま続けると、チームの活動も足を引っ張ってしまう。
板挟みになって、色んな人に頭を下げて、申し訳なさにまみれる生活の先が見えなくて、競技の前線を離れることを決めました。

2017年4月、通勤途中に、平昌オリンピックの出場を決めたSC軽井沢クラブのニュースがJR山手線の車内モニターに映されたのを見て、ようやく日本の男子カーリングが1歩進んだことに対する嬉しさと、なんだか妙に他人事のような寂しさと、悔しいと思えないことに対するやるせなさが入り混じった気持ちになったのを今でも覚えています。

電車に揺られながら、手を伸ばして撮影したのでブレている


カーリングファンとはじめて向き合う


そして、競技から離れて過ごす中で迎えた2018年の平昌オリンピック。

日本選手権の会場でメディアの方ともたびたび接する機会があったのがきっかけで、朝日新聞さんから「平昌オリンピックの速報記事を書くのに協力してくれないか」との依頼を受けました。
「東大式」というやや色物のキャッチコピーではありましたが、少しでも一般の方の目を引くようなコンテンツになればと思い(担当の方は非常に真摯で私たちも納得してやっていました)、仕事帰りに朝日新聞本社に直行、試合が終わった夜遅くにタクシーで帰宅するようなオリンピックを過ごしていました。

朝日新聞デジタルということで、テキストでカーリングを伝えるというなかなか難しいことをしていたと思うのですが、「#東大カーリング」のハッシュタグでカーリングファンの質問を拾いながら、記事を展開していくのはなかなか面白く、「#カーリング沼」の原型はこのときにあったのかなとも思います。

「#東大カーリング」のコミュニケーションはオリンピック後にも続き、Twitter上では「#カーリング平昌組」、「#CurlingFanArt」といったハッシュタグを使ったコミュニケーションも盛んになり、だんだんとカーリングファンのクラスターが形成されていきます。(もともとあったのを私が認識したということかもしれません)
私自身もカーリングを良く知っている立場として質問に答えたりして、選手時代にはあまり意識することの無かった、「一人一人のカーリングファン」を意識することになりました。そして少しずつ、今までのアスリートとしての立場だけではなく、一般のカーリングファンの視点からもカーリングのことを考えようとするようになります。

アスリートとしてカーリングを追いかけられなくなった自分として、居場所を見つけたような気がしたのだと思います。きっと今でもそうですね。

当時のJCAのコミュニケーションは、ホームページ掲示、Facebook投稿が一般向けの手段で、ファンやアスリートとしっかりコミュニケーションを取って、信頼感を醸成するという部分を感じづらい状況でした。鼻息の荒かった当時の(今も?)私は、筋の通っていないように見えた部分に、食ってかかるようなところがありました。
コミュニケーションへの課題意識を一部のJCAのメンバーが持っていたのか(あるいは、どうにか岩永を黙らせないといけないと思ったのか)、結果としてJCAのマーケティング委員のメンバーとして迎え入れられ、JCAとしてのコミュニケーションを考え、作っていく長い旅路が始まったのでした。

カーリングのマーケティング その先にあるもの


JCAマーケティング委員としてのSNSの立ち上げ・運用、最近の「#カーリング沼」の話はいずれまた別の投稿で書ける部分は書きたいと思うのですが、ここでは、いったいマーケティングした先に何を見ているのかという部分について、所信表明というか人生哲学的なことだけ書こうと思います。

2018年の初夏、ちょうどマーケティング委員になった頃、自分の身の回りでとても悲しいことが起きて、「生きていく意味ってどうやって見出していったらいいんだろうか」と考える日々が続きました。(ちょっと全体的に話が重めですみません)

自分がこの先、社会人として30-40年くらい仕事(会社なりJCAなりで)をするチャンスがあるとして、そのときの日本の状況を想像すると、日本経済も右肩上がりで行くとも思えず、独り世帯も増えていき、高齢化も極まっていくということで、なかなか明るいことが多いとは言えないかも知れないと。
一方で、なかなか厳しい状況であることは間違いないのですが、その中で、どうにか幸せを感じて前向いて生きていくことができないかというと、そこは気持ちの持ちようなのかもしれないと思ったりもしています。

2013年にカナダのブリティッシュコロンビア州ビクトリアでの大会に出場する機会がありました。
そこではカーリングの大会を観にたくさんのご年配の方がいらっしゃっていて、試合の間の時間に、ちょうど同時期にやっていた世界選手権のテレビ中継を観ながら「このRachel Homanはカナダ選手権を戦っていたときとは別人、ダメね」とか、カーリング論議を展開していて、まあなんだか楽しそうだなと。
思い返せば、アルバータ州に合宿に行ったときも、日本で言うところのゲートボール、ボウリング感覚でご年配の方が集まっていて、軽食・ビール片手にカーリングを観ているような(観ていないような)時間を楽しげに過ごしていらっしゃいました。
要するに、楽しみにしている大会があったり、気になる選手がいたり、集まれる場所があったりすることで、この方たちは、毎日がとても楽しいのだろうなと。

近所のExmoor Curling Clubもカーリングを見ながらゆったりできるスペースがある
写真は大会中だったので少しかしこまった感じですが

もちろんカーリングが全てを受け止められるなんてことはあり得ないけれども、私はカーリング競技ってどこまででも楽しめる奥深さと、信じてのめり込んでいい誠実さみたいなものがあると信じていて(スポーツとして真剣に取り組むアスリートがそこにはいる)、しかも日本人の気質にも合っているところもあるかと感じています。

「あの試合があるから、あの選手が頑張っているから、あの場所に行けばみんなに会えるから、楽しみに生きよう」って一人でも多くの人に感じてもらえたら素敵だなと。

なので、私がカーリングのマーケティングの先に見ているもの、何とか人生をかけて成し遂げたいと思っていることのひとつは、「一人でも多くの人が、明日のカーリングを楽しみに生きている」です。

大会のために準備と鍛錬を重ねるアスリートも尊いですが、同じくらいに、大会や、場合によってはYouTube配信のようなイベントまで楽しみにしてくれているファンの方々の姿を感じることができることは、生きがいを感じる瞬間です。

アスリートの競技環境を整えること、カーリングの体験できる場所を増やすこと、カーリングの放映機会やメディア露出を増やすこと、デジタルやソーシャルメディアを活用すること、スポンサーやファンディングを募ること、どれも大事でどこから手を付けたらいいのか、自分なんかに何ができるのかと途方に暮れることもありますが、少しずつしっかり、自分にできることを取り組んでいきたいと思っています。

最後に


何でカーリングのマーケティングに取り組んでいるのだろうかと、振り返って、本音ベースで書いてみると、なんだかまとまりがない長文になってしまいました。読んでいただきありがとうございました。

いつもソーシャルメディア(Twitter、note、YouTube)などを通じ、優しいお声かけをいただき、ありがとうございます。リプ、コメント、チャットコメント、全て拝読しています。

私の独りよがりでは決して前に進まないので、声援、フィードバック、とてもありがたいです。今後ともよろしくお願いいたします。


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