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パンクな精神と水辺

文芸評論をする立場ではないが、とにかく感動した隅田川道中

隅田川道中といいうイベントが行われ、切腹ピストルズが隅田川の上下流をまたいで練り歩くという事件が2日間にわたって繰り広げられた。
実施したのは、トッピングイーストというNPO法人。これまでも隅田川怒涛ほくさい音楽祭など、東京の東側をフィールドに「音楽がまちなかでできることを拡張」してきた。

とにかく動画リンクから音声をマックスにして様子を見て欲しい。永代橋から下流に向かって練り歩いている様子である。10/30、時間は16:00すぎ。夕日が赤く空を染め始めて、ビルに反射した薄ピンク色が舞台を彩り始めた、隅田川である。

この練り歩きが、岩渕から勝どきまで、北区、荒川区、足立区、墨田区、台東区、江東区、中央区をまたいで、荒川下流河川事務所、東京都河川部の管理区分をまたいで、合法的に実施されたのです。

同日開催の川のイベントがたくさん催され、永代橋のたもとでは初開催となるdeep river marketがおこなわれていました。

行った時にはすでに売り切れ続出

2日間延べ10の関連イベントが河川敷で開催されていて、上下流を連携させる取り組みだったことがよくわかります。

自らかんがえ、自ら行動する

切腹ピストルズは、セックスピストルズとの関係が想像される通り、もともとはパンクロックバンドだったそうだ。パンクはファッションの一形態ともロックのカテゴリーともされるが、反体制だったり、反権力だったりすると同時に、自ら考えて自ら行動する哲学みたいなものだったりする。上にいわれるがままに、自分の考えをもたない規範人間が多いなか、自らの衝動に忠実で、「パンクは、楽器なんて触ったこともなかった若者たちが社会への怒りにまかせて衝動的に始めたもの。ろくすっぽ楽器が弾けないのに叫んでりゃいい、みたいな。」と切腹ピストルズの隊長、飯田さんは雑誌のインタビューで答えている。

ミズベリングでも、自ら考え自ら行動をおこすアクティビストの活動を称賛してきたが、似ているようでもあり、より個人の衝動への崇高さを大切にしているようでもある。


又の名を江戸一番隊


切腹ピストルズは現在の活動を、「日本を江戸にせよ!」を合言葉に、野良着を身にまとい、和太鼓、尺八、三味線、鉦鼓などの和楽器を演奏する、と称しています。西洋由来の楽器を捨て、日本の太鼓をもったのは、福島原発に向かって震災後に「バカヤロー」と声をあげ、練り歩きをして震災の地域に喝采をうけたことが現在の活動の原点になっている。

ニューヨークのタイムズスクエアでの占拠などを起こし、ニューヨーク公演を成功させるなど、まちなかでの表現で話題をつくってきた。

そんな彼らを呼んで、隅田川をつなぎたい。そう思ったトッピングイーストの清宮氏は、開催資金をあつめるためにたちあげたクラウドファンディングでこう伝えた。

隅田川流域のそこかしこで、音楽やアートを介して老若男女も国籍も問わず、さまざまな人々が混ざり合う姿が見たい!そんな水辺の景色を作りたい!

https://readyfor.jp/projects/sumidagawadouchu

隅田川全域を舞台にしたこの祭りから改めて、人と人との関わり合いを、水辺の未来の賑わいを、みなさんと一緒につくっていきたい。

https://readyfor.jp/projects/sumidagawadouchu

隅田川に太鼓の音は鳴り響いた

日曜日の夕方。普段だったら静かな休日のオフィス街に、遠方から徐々に太鼓の音が聞こえてくる。
秩序を切り裂くような音に予定調和さは一切ない。だけどその響きはあたたかく、その音を辿って、たくさんのひとたちが列をなす。
その列には多様な人々がいた。ずっとついてきている人も途中で離脱する人も分け隔てない。
川から船から楽しんでいる人たちもいる。同じ風景をみているようで視点が違う。
連れて行ったこどもも圧倒されて楽しんでいる。
まちの全員に望まれて生まれた表現ではない。だけど太鼓の音は身体に入ってくる。
パンクロックの刺々しさはない。まちがいなく日本のものだ。野良着に半纏。股引。東京の日常の喧騒や経済活動の前には吹き飛ぶかもしれないが、休日の静けさには十分インパクトがある。

まちがいなくパンクだし、表現である。それでいて一緒に寄り添いたくなる、そんな表現をみて、東京を江戸にするという意味を考えた。

また見たい

この事件は、上下流の隅田川の役所の区分境界を溶かした。そして、多くの人たちがこの事件を楽しんだ。
ふざけんな、うるさい!というひともいたに違いない。だけど、表現や衝動の崇高さも伝わったに違いない。


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