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私の即興音楽のルーツは「レゴ」にあった気がする

子供の頃にレゴで遊んだ事がある人はどのぐらいいるでしょう?

私が子供の頃(幼稚園~小学1・2年生の時)、我が家にはレゴの色々なブロックが詰め込まれたバスケットがありました。

レゴにはお城シリーズとか、スターウォーズシリーズなど、特定の対象物をつくるためのセットが多く販売されていますが、我が家にあったのは雑多なブロックの寄せ集め。

レゴ お城シリーズ

我が家のバスケットの中は黄色のブロックばかりあったので、中身のベースは上の写真のようなセットだったと思われます。

問題なのは、我が家のレゴは決定的なピースを含むいくつかのブロックが紛失した、いわゆる「お下がり」のセットの寄せ集めであったこと。

通常は何かしらのセットを買うと、「箱」に完成予想図が大きく描かれ、中には組み立ての説明書が入っています。

イメージとしては、こんな感じ。

「箱」で完成品のイメージを訴求

レゴ ハリーポッター

パーツごとの組み立て手順が書かれた「説明書」

レゴ ハリーポッター 説明書

残念ながら、我が家のレゴには、このどちらもありませんでした。

もし、上記のような新品セットをプレゼントされたら、ハリーポッター好きの子供なら説明書を片手にワクワクしながら制作に没頭するでしょう。(子どもならず、大人でもテンションが上がる人は少なくないと思います。)

しかし、我が家のレゴは完成予想図も、組み立ての説明書もなく、その上いくつかのピースが欠落した三重苦の状態。(まあ、「お下がり」なので文句も言えません・・・)

これがジグソーパズルであれば完全に詰んでしまう所ですが、そこで終わらず自由な遊びを展開できるのがレゴの良い所です。

これを実現するのは、「ポッチとチューブの連結」という単純かつ最強の仕組であり、これによりブロック同士を色々つなげたり、違うセットの梱包物を組み合わせる事が可能になります。

ポッチ チューブ

ありもののブロックを組み合わせるだけで、自由な創作を楽しめるのもレゴであり、私のレゴ体験はここから始まりました。

一般的なレゴへの順応プロセスは、既定の完成形に向かって、説明書の手順を追ってブロックを積んでいく「計画的な遊び」から入り、それに飽き足らず自らのイメージの実現するための「自由創作」へとステップアップするのでしょう。

これに対して、我が家の場合は、前者に必要な「完成予想図」、「手順の説明書」、「必要なパーツ」が全て抜け落ちています。そもそも論として、完成形という概念がないのです。

したがって、私にとってのレゴは「完成形を目指す計画的な遊び」ではなく、「適当に組み合わせたら何かが出来る偶発的な遊び」でした。しかしながら、この少し変わったレゴ体験が、私の即興的音楽スタイルに大きな影響を与えていた事に、最近あるきっかけで気付かされました。

きっかけになったのはこの本。

■レゴはなぜ世界で愛され続けているのか

レゴはなぜ世界で愛されているのか

これがすごく面白く、内容としては企業としてのレゴのストーリーが語られたビジネス書で、このブックレビューについてはアメブロで違う記事として投稿しているので興味ある方はぜひそちらも読んで欲しいのですが、今回のnote投稿では、音楽家としての視点から発信していきます。(アメブロ記事については、本ブログの最後にリンクを載せておきます。)

「音楽」と「レゴ」の共通点は、その構造にあり!

「レゴ」が「ブロック」の連結により構成されるように、「音楽」は「※音程」の組み合わせにより成り立っています。

※音程=2音の間の距離(Interval)

「音程」をブロックに見立てれば、これらをタテに重ねれば「ハーモニー」になり、ヨコにつなげれば「メロディー」になります。

「レゴ」はポッチとチューブがカチッとハマりさえすれば、何でも繋げることができるので自由度の高い造形が可能ですが、「音程」はそれ以上に自由な組み合わせが可能です。

ただしデタラメに組み合わせても良いものが生まれないのは両者に共通しています。

「レゴ」で幾何学的な美を実現するためには、何らかの法則やパターンをベースにするのが効果的です。適当に遊びながらパターンを編み出す方法もありますが、レゴレシピなどの本を参照しながら色々組み立てていけば、使い勝手の良い便利なパーツの作り方を素早く学ぶこともできるでしょう。

レシピレゴ

同様に、「音程」の組み合わせである「和音」にも法則やパターンが存在します。協和音、不協和音という言葉が示す通り、気持ち良い響きが感じられる音の組み合わせもあれば、心をざわつかせる不穏な音の組み合わせもあります。

基本的な「ド・ミ・ソ」の和音は、「ド・ミ」の組み合わせである「長3度」の明るい音程、「ド・ソ」の組み合わせである「完全5度」の落ち着いた音程が組み合わさっているので、明るくて落ち着いた「メジャーコード」の響きが生まれます。

この構成要素の「ミ」を半音下げて「ミ♭」に変えると、暗さを感じさせる短3度の音程「ド・ミ♭」が生まれ、これに先述の落ち着いた「完全5度」の音程が組み合わさり、落ち着いているが暗い印象の「マイナーコード」の響きが生まれます。

これは初歩のコード理論解説ですが、実際には構成音を4音、5音、6音と増やしていくことで、より複雑で様々な音程の組み合わせが可能です。この音程の配合に熟達する事で、自分の欲しい響きを自由に自分でつくり出せるようにもなります。

私がレゴで遊んでいたのは、幼稚園から小学校の1~2年生ごろまでで、それ以降私の興味は「具体的な造形を目指すレゴ」から、「抽象的な音の組み合わせである音楽」にシフトしていったのですが、その理由はこの辺りにある気がしています。

「レゴ」の場合は何をつくるにせよ、創作のバリエーションは手元に持っているレゴブロックの数と種類に規定されます。一方「音楽」を楽しむための素材、すなわち「音程」は左右の10本の指を使って鍵盤から無数に生み出せます。この音楽の創作自由度の高さゆえ、自分の興味対象はレゴから音楽にシフトして行った気がしているのです。

私のレゴの原体験は「完成形を目指す計画的な遊び」ではなく、「適当に組み合わせたら何かが出来る偶発的な遊び」でした。これを音楽になぞらえれば、前者は楽譜の再現を目指す「クラシック」に近く、後者は即興芸術である「ジャズ」に近いとも言えます。

これらをまとめて考察した結果、今回の投稿のタイトルである『私の即興音楽のルーツは「レゴ」にあった気がする』という結論に至ったというワケです。皆さまに上手く伝わっていれば嬉しいです。

さて、私のライフワークかつライスワークでもある主業は「理論的・体系的なピアノレッスン」なのですが、「レゴと音楽の構造上の共通点」という着想を得て以来、ある思念が頭の片隅にずっと居座っています。

それは、「レゴブロックを組み立てて遊ぶように音楽理論を学ぶことはできないか?」というアイディア。

とりとめもない思考が浮かんでは消えて、形にならないままモヤモヤしていますが、アイディアの骨子はこんな感じです。

「レゴ」も「音楽」も、要素を組み合わせて創作する点は同じ。

プレイヤーが知るべきは、どんな「要素」があり、それぞれにどんな特徴があるのか?という事。さらに、要素を組み合わせた「パーツ」という発展概念についても引き出しに入れておくこと。

そして「要素」、「パーツ」の組み合わせの「パターン」について、色々な手法を押さえておくこと。

かなり抽象的な説明で恐縮ですが、「要素」「パーツ」「組み合わせのパターン」に熟達し、頭の中で構築したイメージを体現する「技術」があれば、即興演奏は誰でも可能という確信が私にはあります。

こうした事柄について、レゴのような遊びを通じながら、いかに自然に、そして感覚的に体得できるか?

この具体的な方法を模索しているワケです。

まだまだ発展途上どころか、着想を具現化するための最初の一歩の踏み出し方すらピンと来ていない段階ではありますが、このアイディアを育てて、いずれ何か面白い事ができればいいなと思っています。

もし、この記事を読んだ誰かが面白い事を考えて実行に移してくれるなら、それも大いにアリだと思っています。

面白い着想を得たので、自身の頭の整理、そしてアイディアのオープンソース的発展を期待してnote記事にしてみました。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

この投稿をきっかけに理解者や協力してくださる方が現れるとすごく嬉しいです。


江古田Music School

代表 岩倉 康浩

P.S.

今回の着想を得るきっかになった書籍「レゴはなぜ世界で愛され続けているのか」のブックレビューを書いたアメブロ記事はこちらから。(本稿の見出し画像の選択理由も、これを読めば納得頂けると思います♪)

レゴはなぜ世界で愛されているのか


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