内防通信 vol.5 | 台風13号水害の証言を追って
うちぼうプロジェクトでは、今年、台風13号水害の証言をまとめた「防災マップ」の制作を進めています。月に1度の「うちぼう定例会」のほか、防災のまちづくりをテーマに多彩なゲストに話を聞く「内講」、9月に予定されている「防災まち歩き」などを企画しています。
7月17日水曜日、うちぼう定例会が行われました。この日も、いわき市小名浜在住の地域活動家、小松理虔さんをゲストに迎えて、プロジェクトの進め方についてさまざまなアドバイスをいただきながら議論を深めました。
まずは、内郷まちづくり市民会議の四ツ倉会長からあいさつを頂戴し、まちづくり委員会の荒井委員長のコメントから議論をスタート、といういつもの流れですが、この日の空気はいつもより少し緊張感がありました。というのも、次の「内講」で、福島県といわき市の担当者による浸水対策の報告会が予定されているから。
県と市の担当者がすべての住民に対して開かれた場で報告を行うのは内郷地区内でも初の試みであり、どのような反応があるのか未知数。被害からまだ1年が経過していないタイミングでもありますから、どのような質問が想定されるのか、厳しい質問が寄せられた場合にはどのような対応をするのかなど、丁寧に議論を重ねました。
そのあと、証言レポートの作成に動いているライターの染矢優香さんから現場の報告がありました。6月中に、ほぼ週2回ほどの聞き取りを続けてきたという染矢さん。これまでの証言をペーパーにまとめてくれたので、それを見ながら、どのような地区でどのような声が上がっていたのかをメンバー全員でチェックしていきました。
染矢さんによれば、現在は、つどいのカフェ「ふくみちゃんカフェ」で話を聞いているが、どうしても複数の参加者が発話してしまい、雰囲気はとても良くなる一方で、「取材」としてはまとまりがなくなってしまう、という話でした。みなさん、やはり聞いてもらいたい話がたくさんあるのでしょう。
これに対し、小松さんからは、ケア・傾聴の時間は残しつつも、個人宅を訪問したり、まとまった時間で1人の方に話を聞くなど、じっくりと1人に向き合う手法で証言を集めたほうがいいと提案がありました。今後は、1体1の個別訪問や、現地でのリサーチに注力していくということで方針も決まりました。
また、この日の会議では、高野地区に住むメンバー、佐藤さんからも話がありました。すべての住民に対して詳細な聞き取りなどが行われたわけではなく、まだまだ「自分の話を聞いてもらってない」と感じている住民が多そうです。一人暮らし世帯も少なくなく、高野など上流にあたる地区の聞き取りもしっかりと進めていかなければなりません。
内郷地区内でも被害の状況は大きく異なり、また、同じ地区でも高台に暮らす住民と、坂の下に暮らす住民とでは被害感情も異なりますから、証言を集めるのは、そう簡単ではありません。この地に住んできた人たちの話、被災した方の話を直接聞いていくこと以外に、このプロジェクトの近道はないな、ということを再確認する時間でした。
今後、引き続き9月、10月、11月と証言を集めていき、年末からはマップに落とし込む作業をスタートさせ、年度末のタイミングに第1号をリリースできるように動いていくということも確認し合いました。
このあとは、いつもの通りの雑談タイム。内郷地区でシンボルとなっていたような菓子店の店じまい、いわき市内の経済の低迷などについてざっくばらんに語りました。内郷まちづくり市民会議では、これまで何度もまち歩きを実施し、そのたびにマップを作成して地元の商店の利用を推進してきただけにとてもつらい状況が続いています。
今年は「防災」に重きを置いていますが、心はいつも、地域の全般。ここに暮らす人たちが、事業者が、自分たちらしく生きて、働いて、店を続けられる、そんな後押しをしていくための団体なんだと、初心を確認し合うような時間にもなりました。8月の定例会も、よろしくお願いします。
内郷まちづくり市民会議:うちぼうプロジェクト事務局
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