1280火焔型土器

いわきりなおとの国宝漫遊記 第5回「国宝火焔型土器」の巻

◎縄文は日本の真の美
 火焔型土器  新潟・十日町市博物館蔵 火焔型土器


 漫画家いわきりなおとさんが、新潟県の笹山遺跡から出土した国宝・火焔型土器(十日町市博物館所蔵)を紹介します。
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 縄文時代中期(約4500年前)に作られた火焔型土器は、燃え上がる炎に形が似ていたことから、この名称が生まれました。
東日本の200以上の遺跡で出土していますが、大半は新潟県内に集中しています。
 器に焦げがあることから、日々の暮らしの中で食べ物の煮炊きに使っていたことが分かります。祭器としても用いられていたようです。

 戦前までは縄文土器を含め、土偶や埴輪などは考古学の対象であり、日本美術として語られることはありませんでした。

 1951年、芸術家の岡本太郎は、東京国立博物館で偶然見た火焔型土器の高い芸術性に驚き「何だこれは!」と叫びました。
52年に「縄文土器論」を発表。火焔型土器を含む縄文土器の素晴らしさを広め、ついに日本美術史の1ページ目に、原始美術として加わることになったのです。
 岡本は、縄文土器の独特で個性的な美感を
「こってりとして複雑な、いやったらしいほどたくましい美感」
と表現しました。

日本の伝統的な美感である「わびさび」「見立て」と比べると、まったく反対の価値観です。鎖国によって外国の影響が限定的だった江戸時代は、日本独特の文化が花開きました。縄文時代は、それ以上に外国の文化的影響を受けなかった時代でしょう。従って、その1万年の間に生まれた縄文土器こそ、日本の美の真の姿と言えるのかもしれません。
(談 いわきりなおと/記事編集 共同通信 近藤誠) 
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