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いわきりなおとの国宝漫遊記&トーハク見聞録

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共同通信加盟新聞にて連載中の「いわきりなおとの国宝漫遊記」「トーハク見聞録」の過去記事置き場です。掲載新聞は、秋田魁新報、新潟日報、静岡新報、上毛新聞、神戸新聞、中國新聞、山陰中…
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#漫画

いわきりなおとのトーハク見聞録「ゆる埴輪   踊る人々」

◎シンプル極めたゆる埴輪  野原古墳出土「踊る人々」  東京国立博物館(トーハク)が所蔵する埴輪「踊る人々」は、1930年に埼玉県熊谷市の野原古墳から、2体一緒に出土しました。6世紀に作られた物で、どちらも下半分が推定復元されています。  当時は小さい方(高さ57・0㌢)が古代の男性の髪形「美豆良(みずら)」が見られるため男性、大きい方(同64・1㌢)は女性と考えられたことから「踊る男女」と名付けられました。 その後研究が進み、女性と考えられていた方が美豆良(みずら)が

いわきりなおとの国宝漫遊記 第13回国宝「銀閣寺」の巻

漫画家のいわきりなおとさんが、京都市にある国宝の慈照寺(銀閣寺)を紹介します。    ×   ×     室町幕府の8代将軍足利義政は、応仁の乱を引き起こしたり、土一揆に悩まされたりするなど、政治能力に欠けていたとされていますが、文化面では大きな功績を残しました。茶器や美術品をたくさん収集し、現代に残っているコレクションの多くが、国宝や重要文化財に指定されています。  義政は、祖父である3代将軍義満が建てた鹿苑寺(金閣寺)を参考に、京都の東山に慈照寺を造りました。銀色

いわきりなおとの国宝漫遊記 第12回国宝「源氏物語絵巻」の巻

◎下ぶくれ顔で雅を表現 国宝「源氏物語絵巻」、東京・五島美術館蔵  漫画家のいわきりなおとさんが、4月28日~5月6日に、五島美術館(東京都世田谷区)で特別展示される国宝「源氏物語絵巻」を紹介します。   ×   ×    紫式部の長編小説「源氏物語」(11世紀)の世界を、約150年後に絵画化した国宝「源氏物語絵巻」(12世紀)は、現存する日本の絵巻の中で最も古いものです。絵と詞書で構成された19図が現存し、名古屋市の徳川美術館と五島美術館が所蔵しています。  登

いわきりなおとの国宝漫遊記 第11回「琉球国王尚家関係資料」の巻

◎子孫が守った玉冠の輝き琉球国王尚家関係資料、那覇市歴史博物館蔵 漫画家のいわきりなおとさんが、那覇市歴史博物館が所蔵する、沖縄県唯一の国宝「琉球国王尚家関係資料」の玉冠を紹介します。    ×   ×     かつて琉球王国として栄えた沖縄県には、もともと貴重な文化財がたくさんありました。しかし、沖縄戦と米軍の略奪のためにその多くが失われてしまいました。世界遺産の首里城跡にある首里城正殿や守礼門も元国宝で、現在の姿は戦後に再建された物です。  1879年に沖縄県が設置

いわきりなおとの国宝漫遊記 第4回「姫路城」の巻

世界も認める美しい白 姫路城天守  兵庫県姫路市 漫画家いわきりなおとさんが、世界文化遺産でもある兵庫県姫路市の国宝・姫路城天守を紹介します。    ×   ×     姫路城は2015年に「平成の大修理」を終えたばかり。白しっくいの美しさを取り戻し、「白鷺城(しらさぎじょう)」の名にふさわしく白く輝いています。 あまりの白さに、修理前の姿を見慣れた人たちの間で「白くしすぎ」「これでは白すぎ城だ」と言う声もありましたが、昔の白さに戻っただけなのです。  姫路城の白さは

いわきりなおとの国宝漫遊記 第3回「金印」の巻

歴史のロマン伝える輝き 金印(漢委奴国王印)  福岡市美術館蔵  漫画家いわきりなおとさんが、教科書でもおなじみである純金製の国宝「金印(漢委奴国王印)」(福岡市博物館蔵)を紹介します。    ×  ×   金印は江戸時代の1784年、志賀島(現在の福岡市東区)で、農作業中のじんべえさんによって偶然発見されました。 この時田んぼを耕していなかったら、いまだに地中に埋もれたまま、つまり歴史に埋もれたままだったことでしょう。  印面には「漢委奴国王」の5文字が刻まれていま

いわきりなおとの国宝漫遊記 第2回「志野茶わん銘卯花墻(うのはながき)」の巻

◉手のひらの中の宇宙   漫画家いわきりなおとさんが、東京国立博物館で6月4日まで開催中の特別展「茶の湯」で展示している、国宝「志野茶わん 銘卯花墻」(三井記念美術館蔵)を紹介します。 (※「茶の湯」展はすでに終了しています) 織田信長や豊臣秀吉、明智光秀など、戦国時代から江戸時代の大名や武家の間では立派な茶わんを持ち、部屋を飾るのが最大のステータスでした。 現代のビジネスマンが高級スーツやブランド時計を身につけ、できるオトナを演出するのと同じですね 井戸茶わん、楽

いわきりなおとの国宝漫遊記 第一回「国宝風神雷神図屏風」の巻

**◎琳派はオシャレな作風「風神雷神図」京都・建仁寺所蔵**  日本各地には千件以上の国宝がある。これまでに約600件の国宝美術を鑑賞してきた漫画家のいわきりなおとさんと、国宝をめぐる旅に出よう!    ×   ×  京都市東山区の建仁寺が所蔵する国宝の「風神雷神図屏風」は、17世紀前半に絵師俵屋宗達の作品です。風神雷神図の良さはズバリ、「構図がかっこいい」ということです。  向かって左側の雷神と右側の風神が、それぞれ画面からはみ出すように描かれています。中央に