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文化人物録66(住谷美帆)

住谷美帆(サックス奏者)
→1995年水戸市生まれ。5歳からピアノを習い、12歳でサクソフォンを始める。2018年東京芸術大学音楽学部器楽科を首席で卒業。18年7月スロヴェニアにて開催された第9回国際サクソフォンコンクールで女性として初優勝。これまでにサクソフォンを須川展也、鶴飼奈民、大石将紀、有村純親に師事した。
僕はまだ芸大在学中の住谷さんにお会いしたが、当時から音楽家としての華と雰囲気を備えていて、確実に将来大きな舞台に羽ばたくだろうなと思っていた。実際その通りになったわけだが、住谷さんにとってはそれでもまだまだ発展途上という思いだろう。
とりわけクラシック音楽界におけるサクソフォンの位置づけは今でさえ微妙であり、楽器の存在感を大いに高めたいという熱意が端々に伝わってくる。住谷さんの活動に大いに期待したい。

*2016年10月

・師である須川展也さんの存在は大きいです。カッチーニの「アヴェ・マリア」は須川さんのCDを聴いて自分でも何度も吹くほど好きだったのですが、須川先生も「自分でやってみたら?」と言ってくれました。私に合うと思ったのだと思いますが、須川さんはとにかく生徒1人1人をよくわかっています。

・私にとってグラズノフの「サクソフォン協奏曲」は大変な曲で、サクソフォン協奏曲と言えばこの曲だといえます。ボノーの「ワルツ形式によりるカプリス」は無伴奏ですがサックス吹きがよくやる曲。ボルヌのカルメン幻想曲はもともとフルートのための曲で、サックスでやると難易度が上がります。かなりの技巧が必要になりますが、聴いたことがあるフレーズが随所にちりばめられた素晴らしい曲です。

・ムソルギスキーの「展覧会の絵」はまさにサックスの魅力が凝縮された曲です。須川さんにも「体力作りをしてきて」と言われましたが、4本のサックスを使う曲はこの曲くらいです。ピアノ的な部分とオーケストラ的部分がありますが、NHK交響楽団と演奏した展覧会の絵を意識したい。

・私の持ち味は音色だと思っています。歌心で勝負したいです。1音で聴衆の心をつかむ。トークも含めそれをどう伝えるか考えています。クラシック界でサックスはまだマイナーで、やっぱりサックスの音色を知らない人もまだ多いです。オケの曲でもピアノの曲でも、まだサックスでやりたい曲はたくさんありますね。まだまだ発展途上の楽器なのです。

・私自身元々ピアノをやっていて、12歳から吹奏楽でサックスを始め、中学の頃からオーケストラの曲を聴くようになりました。当時はクラシックなど全然知りませんでしたが、特にサックスはジャズというイメージでクラシックでは全然活躍の場がない。それがくやしかったです。そのクラシックでサックスの道を切り開いてくれたのが須川さんでした。須川さんはサックスに限らず、他の楽器の奏者にも広く知られています。いろいろな楽器の奏者から求められるような奏者になりたいと思っています。クラシックのサックス会に刺激を与え、盛り上げていきたいです。

・高校3年生までは吹奏楽部でも吹いていましたが、クラシック曲と吹奏楽曲は吹き方が全然違います。上野耕平さんのぱんだウインドオーケストラの時はセカンドを吹くことが多いのですが、ハーモニーを意識してファーストにぴたっとくっつく感覚です。逆に自分がファーストを吹くときは自分が引っ張ります。クラシックの場合は基本的にソロですが、そのときも吹奏楽で培ったハーモニーの意識は持つようにしています。

・ピアノについても大学に入るまでずっとやってきたので思い入れがあります。ピアノ曲をサックスでやりたいというのが私の思いです。自分が好きな曲をサックスでやる。サックスは楽器の歴史があさくまだ新しいので、古典の曲はありません。ですので和声の進行などの決まり事はまずピアノで学ぶようにしています。サックスで演奏する場合も自分でピアノ伴奏できるようにします。ピアノで学んできたことはサックスにも大いに生きています。

・クラシックの曲はどんどんサックスでやっていきたい。メジャーな曲をどんどんサックス用に編曲して演奏してきたのがまさに須川さんです。須川さんがいたからこそ、私もクラシックのサックスができるのです。ソロ、吹奏楽、カルテットの三本柱でやっていき、自分や楽器のことをもっと知ってもらいたいです。

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