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鰯崎友×born

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鰯崎友の個人note+WEBマガジン bornでの記事、作品をまとめました。
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#コラム

プレッシャーを克服する!

唐突ですが、皆さんプレッシャーは得意ですか? 私は苦手です。ときどきバッティングセンターに行くのですが、だれかほかの人に見られながらスイングすると、 凡打ばかり。また、人前でプレゼンをするときも、緊張して言いたいことの半分も言えなかったりします。 世の中を見渡してみると、あんまりいないですね、プレッシャーが大好き、という人。 先日引退を発表したイチロー選手なんてうらやましいですね。大舞台であればあるほど実力を発揮できる、スターです。 しかし、現代に生きている限り、プ

教えることを教えられる

今年から、人にものを教える、先生もどきのような仕事をやりはじめたのだが、これがなかなかむつかしいのだ。なにがって、生徒である人たちの質問が多岐に渡っていて、自分の知識でカバーできないのだ。授業を1時間やれば、必ず先生である自分の知らない、答えられない質問が、必ず1個は飛んでくる。 最初のころは、教える側の自負というか、率直にいうと質問に答えられないことをはずかしく思っていた。それで、自分の知らないことを授業中に聞かれたらどうしよう、いやだな、という気持ちがあったのだが、最近

学生作品上映祭2019

先日は塚口サンサン劇場へ出かけてきました。目的は、私の母校、ビジュアルアーツ専門学校 放送・映画学科の「学生作品上映祭2019」。4時間ほど劇場にいて、10作品を観ました。 こんなにどっぷり学生作品にふれるのは数年ぶりで、なんとも懐かしい気分でした。ハリウッド映画なんかを観るのとはまったく異質な、身内感が漂っていて。 もっといえば、自分たちが撮った映画を観て、面白い、とか、つまらん、とか言い合ったりする、アットホームさと緊張感が両方入り混じっていて、これこそ学生作品を観る

『バジュランギおじさんと、小さな迷子』映画映画した映画のパワー

タイトルは『バジュランギおじさんと、小さな迷子』だが、おじさんというよりお兄さんというかんじだ。インド人の青年バジュランギは、嘘が大嫌いで心のやさしい、ナチュラルポジティブな男だ。反面、ちょっとマヌケ、というかだいぶマヌケな性格である。猿の姿をしているという神様、ハヌマーンを崇拝していて、猿を見かけると条件反射的に拝んでしまう。勉強は得意でなく、体はごついが相撲は苦手だ。相手と組み合うと、体がこそばゆくなって、競技の途中で笑いが止まらなくなるからだ。昔のコメディにでてくる、ち

新潟の改革は実現するか

高校野球がブラック部活動であることはすでに多くの人が知っていると思う。昨年の夏の甲子園も、伝統に則って、40℃に迫る炎天下の野外で開催され、試合中に数多くの選手が熱中症になった。 特に過酷な運動量を余儀なくされるのはチームの主役、エース投手だ。チームが強くて勝ち進めば勝ち進むほど酷使される、という皮肉な境遇が繰り返されており、なかには日常生活に困難を来すような障害を負う例もある。 以前にも書いたが、1990年~2018年までのあいだに夏の甲子園で700球以上投げた投手は1

『線でマンガを読む』黒田硫黄

「恋人もいないし、クリスマスなんてなにも楽しいことないぞ!リア充爆発しろ」という方に、ぜひ読んでいただきたいマンガである。たぶん深い共感が得られることと思う。 黒田硫黄の『大日本天狗党絵詞』は、職業、学歴、恋愛などといった社会のステータスとされるものからはみ出た人間たちが、「天狗」を名乗り、やがて日本国を一大危機に陥れるカルト集団となる物語。怪しげな術を用いて天狗たちの長となる「師匠」と、主人公「シノブ」の師弟の愛憎の物語でもある。 『大日本天狗党絵詞』黒田硫黄 講談社 

イングリッシュ・ナショナル・バレエ『ジゼル』

イングリッシュ・ナショナル・バレエの『ジゼル』が斬新で面白いと聞いて、わたし、バレエ初心者なのですが、行ってきました。ロンドンまで15時間、優雅な空の旅でしたね^^ ……そんなわけはないのである。いち庶民が海外のバレエを観るのって、そこそこハードルが高い。しかし、庶民には映画がある。イングリッシュ・ナショナル・バレエによる『ジゼル』が、映画として先月末から全国各地で上映されていて、それを観に行ってきたのだ。 ナマのバレエの舞台を観たこともなく、知識もほとんどない。山岸凉子

『ボヘミアン・ラプソディ』天才と呪い

エンドロールがおわって、劇場に明かりが灯った瞬間に、拍手がおこった。誰もがこの映画の余韻に、1秒でもながく浸っていたかったのだと思う。いい年したおじさんやおばさんが、涙でくしゃくしゃになった顔を、少し恥ずかしそうにうつむけながら、ゆっくりと席をたつ。 いや、泣いていたのは彼らだけじゃない。私も泣いていた。妻も泣いていた。クイーンの歌を素敵だとは思っていても、当時の熱狂を知っていたわけではない。でも涙が止まらない。 劇場には、フレディ・マーキュリーがこの世を去った1991年

『線でマンガを読む』植芝理一

奇怪な事件が起こっている。とある女学校にて、数ヶ月のあいだに中等部の24人もの生徒が妊娠したのだ。学校は性的モラルの乱れとしてその生徒たちを停学処分にしたが、検査の結果、生徒たちは本当に妊娠していたわけではなかった。病院は彼女たち全員を、なんらかの精神的な抑圧で、身体が妊娠したときと同じ様子になる、「想像妊娠」だと推定するが、原因は分からない。 『夢使い』というマンガを、ざっくりと説明するならば、京極夏彦の影響を色濃く受けた伝奇ミステリに、萌えマンガの要素をつけたした作品、

bornウェブマガジン『ざっくり紙のことがわかるコラム』

(「bornウェブマガジン」に寄稿したのと同じ内容です) noteで作品を発表している方なら、自分の名刺やチラシ、フライヤーなどを作ろうと考えたこともあるのではないでしょうか。私も最近、自分のブログを人に紹介するときに、こういうものがあればいいなあ、と思ってます。口頭で「ブログやっています」って伝えるのもそれはそれでいいんですが、名刺がさっと出てくると、やっぱりかっこいいですよね。 また、自分の名刺のデザインを考える、というのは、とても楽しいものです。会社の名刺と違って、

劇場版『フリクリ オルタナ』『フリクリ プログレ』

『新世紀エヴァンゲリオン』という90年代最大の話題作を生み出したアニメスタジオ・GAINAXにとって、エヴァ以降、どのような作品を作っていけばいいかというのは、結構たいへんな課題だっただろう。 『エヴァ』の監督の庵野秀明は、1998年の『彼氏彼女の事情』のあと、しばらくアニメ制作から遠ざかってしまった。最大の立役者が第一線から退いてしまったのだが、アニメファンの、GAINAXのSFアニメに対する期待値は天井知らずに上がっていた。私も『エヴァ』のイベントに通い、グッズを集めて

小津安二郎監督『東京物語』

シネ・ヌーヴォにて、小津安二郎監督の『東京物語』4K修復版を鑑賞。1953年の、モノクロ映画だが、そこは世界的評価を得た作品だけあって、はじめは古いな、という感じがするけど、それも一瞬、あっというまに作品の世界にひき込まれる。さすがだ。 よく言われることだが、小津のローポジション、ローアングルのショットは絶品だ。これ以上、削るものも、つけ足すものもない、完璧なバランス。『東京物語』の画面からは、幾何学的にかたちを配置する、例えて言うなら理系的な知性を感じる。パッションに任せ

『線でマンガを読む』ひさうちみちお

ハンガリー生まれの社会学者、カール・マンハイムが語るように、あらゆる知識、信念体系はそれを信ずる個人や集団の社会のなかでの位置によって規定される。誰にとっても都合のよい、真に中立的な知識や信念は存在しない。政治家は政治の、宗教家は宗教の、国民は自身の置かれた生活の枠組みのなかから、各々にとってよりベターとなる信念を表明する。 いっけん自分にとって不利益になるような行動をする人もいる。たとえば自分の全財産を慈善団体に寄付するような人だ。しかし、彼も先のマンハイムの言葉からけし

『線でマンガを読む』さくらももこ

『ちびまる子ちゃん』連載第1回がどんなお話だったか、覚えておられるだろうか。一学期が終わり、明日からは夏休み。学校から帰宅途中のまる子とおねえちゃんが、ひとりのおっさんと遭遇する。 『ちびまる子ちゃん』さくらももこ(集英社)1巻 P.7 子ども相手に他愛のない手品グッズを売りさばいているおっさんなのだが、完全にアウトな業界の人だ。言わずと知れた少女マンガ誌「りぼん」の、連載第1回で、こういうタイプの人間を登場させるというのが、すごい。まあふつうの少女マンガには出てこないだ