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鰯崎友×born

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鰯崎友の個人note+WEBマガジン bornでの記事、作品をまとめました。
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2018年11月の記事一覧

だれかのnote

映画『ボヘミアン・ラプソディ』について、心に残ったnote。 『この映画そのものがクイーンのライブステージだった。』 『オールドフットボールファンは違った興奮を覚えたことでしょう。』 『応答を得ることは、それだけで自らの存在への承認を意味する。』 『やっぱり誰かの代わりに観るなんてできないもんだなあ。』 『つまりフレディという着ぐるみを着込んでしまうわけです。』

三國志…しりそめし頃に…

小学校6年生のとき、クラスにAくん、Hくん、Sくんという3人組がいて、この人達は休み時間もクラスの多数派から外れて、なにやら異質な雰囲気を醸していた。 私はこの3人のことがなぜかとても気になり、ある日、「なにをやっているの?」と勇気を出して尋ねてみた。それが私と三國志が出会うきっかけとなった。そう、彼らは教室の片隅で三國志のマニア話に花を咲かせていたのである。 3人組は休み時間には三國志の話をし、学校が終われば誰かの家に集まってスーパーファミコンの三國志のゲームをして遊ぶ

I look back toward the hill.

あなたとふたりで、雪の降る丘をのぼる。綿のような雪片はひとつひとつがダンスを踊るように、反り返ったり、うつむいたりしながら、たえずそのゆく先を変えつつ、しかしだんだんと地表に向かって落ちてくる。 夏にこの場所を訪れたときには、耳が痛くなるくらいの蝉の声(あなたはそれを蜩だと教えてくれた)に包まれたのだけれど、その声はすっかり雪の舞いへと姿を変えた。 わたしとあなたは、なにかを話しながら歩いている。でも、何ひとつ頭のなかに入ってこない。 木立のあいだを縫って走る風が頬を切り

パンダの名づけ親になるかもしれません!

唐突ですが、私、パンダの名づけ親になるかもしれません!今年8月に和歌山県、白浜のアドベンチャーワールドで産まれた、ジャイアントパンダの赤ちゃん。かわいいですよね~ アドベンチャーワールドは、このパンダの名前を、公募によって決定するとアナウンスしました。私は「恵浜」という名前を考えて応募したのです。それが約2ヶ月前のこと。 そして、先日、寄せられた12万通の応募のなかから、最終の4候補が選ばれたとのことで、公式ページを確認して、仰天。自分の案が残っていたのです。 ここ数年

わからないこと

今住んでいるマンションには、敷地内に公園があって、土日には、子どもたちでいっぱいになる。ブランコ、すべり台やジャングルジム、砂場など、ひととおりの遊具が揃っているし、子どもたちの親御さんにとっては、無料で移動の手間もかからないとあって、人気になるのも当然のなりゆきだ。 私と妻が暮らす部屋にも、子どもたちの賑やかな声が聞こえてくる。ついこの間まで、気候が穏やかなころには、窓を開けていたので、どういう会話をしているのか、部屋のなかにいても分かった。 とくに男の子のグループはや

『ボヘミアン・ラプソディ』天才と呪い

エンドロールがおわって、劇場に明かりが灯った瞬間に、拍手がおこった。誰もがこの映画の余韻に、1秒でもながく浸っていたかったのだと思う。いい年したおじさんやおばさんが、涙でくしゃくしゃになった顔を、少し恥ずかしそうにうつむけながら、ゆっくりと席をたつ。 いや、泣いていたのは彼らだけじゃない。私も泣いていた。妻も泣いていた。クイーンの歌を素敵だとは思っていても、当時の熱狂を知っていたわけではない。でも涙が止まらない。 劇場には、フレディ・マーキュリーがこの世を去った1991年

いろいろやる。と。楽しい。

インターネットになにかをアップしはじめたのは、mixiからだ。いまは見る影もないけど、いちばん勢いのあったころのmixiだから、もう10年以上前だ。そのときはまだ学生だった。超短編小説を、主に書いていた。ぜんぶで200作品くらいのショートショートを書いた。実をいうと、そのときに書いた作品を手直しして、noteにアップしたりもしている。その当時はmixiではショートショートをメインに発表していこうという謎の決意があって、それをできるだけ忠実に守っていた。 そののち、就職をして

『線でマンガを読む』植芝理一

奇怪な事件が起こっている。とある女学校にて、数ヶ月のあいだに中等部の24人もの生徒が妊娠したのだ。学校は性的モラルの乱れとしてその生徒たちを停学処分にしたが、検査の結果、生徒たちは本当に妊娠していたわけではなかった。病院は彼女たち全員を、なんらかの精神的な抑圧で、身体が妊娠したときと同じ様子になる、「想像妊娠」だと推定するが、原因は分からない。 『夢使い』というマンガを、ざっくりと説明するならば、京極夏彦の影響を色濃く受けた伝奇ミステリに、萌えマンガの要素をつけたした作品、

もりのなか【超短編小説】

はじめは、なんにもなかった。風も水も太陽の光も、なんにもなかったが、あるとき、小さなひずみがうまれ、それがだんだん大きくなっていった。そのひずみから、あるとき、醤油がこぼれおちた。醤油はなんにもない空間にじわじわと広がり、やがて大きなシミをつくった。はじめにできた大きなシミは、4つの足の生き物の形をしていて、自分のからだから醤油をぽたぽた落としながら、そこらじゅうを跳んで、走り回った。生き物の体からこぼれた醤油は、魚の形となり、虫の形となり、ヒトの形となった。ヒトは、はじめの