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鰯崎友×born

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鰯崎友の個人note+WEBマガジン bornでの記事、作品をまとめました。
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2018年6月の記事一覧

『ソナチネ』かけがえのない夏の日

北野武監督といえば、夏を舞台にした傑作が何本も思い浮かぶ。『あの夏、いちばん静かな海。』『菊次郎の夏』などはまさにそうだし、『アウトレイジ』でも夏のシーンが多い。この作家には、夏という季節が似合っている。 私は、夏の、ギラギラした光と、日が暮れて訪れる夜の闇のギャップが、北野映画に存在するギャップとよく似ていると思う。過剰なまでに暴力的な描写と、反面、どこまでも静かな、叙情性をたたえたショット。北野映画には、このふたつの要素がいつも同居している。 北野の初期作品『ソナチネ

ドストエフスキー、信仰とエゴイズムの変遷

【いわし園芸】薔薇と砂漠の踏切

noteブログシティのかたすみにある、note商店街。このたび園芸ショップを開店しました。季節の草花を取り揃えております。 あと、私、大のおしゃべり好きでして、お店に立ち寄っていただいた際には、少しお話におつき合い頂ければとても嬉しいです。今日は双子のお客さんがきましたよ。なんでもずっと旅をしているんですって。まだほんの子どもに見えたけど。   双子のお客さんは、砂漠に立ち寄ったときのことを話してくれました。なんでも、砂漠のど真ん中に踏切があるらしいんです。いったいど

初心者でも分かるサッカーのルール【ハンド】

ハンドは、「ハンドパワーでボールを動かしてはダメ」という、サッカーの基本的なルールの一つです。初心者の方でも、このルールを知っているだけで、開催中のワールドカップを楽しめるようになるでしょう。 審判は厳正にハンドを判定しなくてはなりません。試合中、怪しげなサングラスを着用し、「きてます、きてます」と言っている選手がいれば、即刻ハンドが宣告されます。 審判がハンドを告げた場合、相手のチームにフリーキックが与えられます。(「フリーキック」という言葉も初心者の方は分からないと思

『レディ・バード』 はばたくとき

クリスティンは自分の名前が気に入っていない。だから彼女は本名ではなく、”レディ・バード”と名乗る。彼女は生まれ育った窮屈な地方都市と、貧しい家庭を憎んでいて、”なにか”になってそこを出ていきたいと切望している。しかし、なにをやっても中途半端だ。 わたしが映画学校に通っていた頃、恩師がこう言っていた。 「ストーリーは手段にすぎない」 目新しいストーリーを考えることは、誰でもやる。でも、斬新なストーリーが”物語”になるかは、別の話。そんなことを話しながら、先生が参考作品と

線でマンガを読む『古屋兎丸×荒俣宏』

古屋兎丸はマンガ家になる前には美術の教師だったそうだ。絵画の正統的な教養を有するその絵は、人体の質感を細やかに描きだす。表情に線を加えることに禁欲的な作家であり、なまめかしい身体を持つが、感情の読み取れない、人形のような、ヒトであってヒトであらざるようなキャラクターを描いてきた。古屋作品には独特の離人感がある。私の好きなのは、荒俣宏とコラボした『裸体の起源』。 「マザーの花がひらく」。トビウオたちが浮足立っている。それは新たな人が誕生することを意味している。このたびは「嘆き

『Vision』生命は別れ、交わり、塊となる。

ハリウッド映画が、レストランでおいしく、安全に調理された料理だとすると、河瀬直美の映画は、屠られたばかりの獣の、血のしたたる肉の塊だ。生臭く、人によっては食中毒を起こす。 奈良、吉野。悠久のときが流れる生命の森。都市の暮らしに疲れて、山守として過ごす智(永瀬正敏)は、このところ、森の様子に違和感を感じるようになった。木々のざわめきや光の具合、空気が、どことなくおかしい。同じく森に暮らす老婆、アキ(夏木マリ)は、智に言う。「森の様子がおかしいのは、千年にいちどの時が迫っている

【いわし園芸】こうもり傘

noteブログシティのかたすみにある、note商店街。このたびこちらに園芸ショップを開店しました。当店では季節の草花を取り揃え、お客様にご提供していきたく存じます。 あと、私、大のおしゃべり好きでして、お店に立ち寄って頂いた際には、少しお話にお付き合い頂ければとても嬉しいです。つい今しがたも、メガネの頼りなさげな青年が、花束を買っていってくれたんですがね、それがもう…って、すみません。この季節といえばやっぱりあじさいだね。たくさん入荷してるから、ゆっくり見てってくださいね。

【図解】社会人必見!お辞儀の角度

おもいだす。アニメの日々。

TVアニメの制作進行をやっていた私は、その日も、アニメーターから回収したばかりの原画を車で運んでいた。新青梅街道の田無付近。時間は朝方4時頃だったと思う。他の車は皆無で、走っていて気持ちがいい。赤信号で止まったら、 いきなり自分の車に雷が落ちた。 バリバリバリという凄まじい音がした。そして、不思議なことに、車が勝手に走り出したのだ。落雷に驚いてアクセルを踏んでしまったのか。慌ててブレーキを踏み直したが、車は止まらない。勝手に動く車は、あれよあれよという間に赤信号のさなかの

【born webマガジンに寄稿しました】日本、イギリス、フランス…各国の勝者は!? https://note.mu/bornweb/n/ndd3b4a36f592

線でマンガを読む『座二郎』

電車のなかにゾウが現れたり、車両がまるごとバーになっていて、白い犬のようなバーテンに迎えられる。そのほか、文房具屋や回転寿司屋を営んでいる車両が、ふつうの通勤車両に連結されている。さらには、会社や住宅、水族館、あらゆる建物が列車の一部となって絶えず走り続けている不思議な世界と、現実を往還するお話だ。ロシア・アヴァンギャルドを思わせる色使いも魅力的。 『RAPID COMMUTER UNDERGROUND』 『RAPID COMMUTER UNDERGROUND ラピッド・