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線でマンガを読む

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マンガ家の描く「線」に注目し、魅力を紹介する企画です。
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#手塚治虫

線でマンガを読む『大島弓子』

前回の当コラムにて、手塚治虫がコマの枠線や絵のレイアウトを用い、巧みな視線誘導で、ドラマチックで読みやすい画面を設計したことに触れた。 (『火の鳥 生命編』手塚治虫 ※読者の視線の動きを緑線で図示した) いま、私は「設計」という言葉をつかったが、理知的で教養豊かな手塚は、その明晰な頭脳でもって、まさに建築の構造設計のようにマンガを組み上げていったのだと思われる。だから、手塚マンガの技法は人に説明しやすい。「この部分が視線誘導でこっちに行って…」という理屈を、言語化すること

線でマンガを読む『再び 手塚治虫』

たとえば、現代のマンガと、絵本の違いはなんだろうか。すぐに頭に浮かぶのは、絵が「コマ」と呼ばれる枠線によって仕切られている、ということ。日本のマンガは基本的に右上から左下のコマへと読んでゆく進めてゆく規則になっていて、それに伴って時間の経過や場所の転換が起こる。つまり物語が進む。 絵本の場合は物語を進めるために、ページをめくる必要がある。それはマンガも同じことだが、マンガの場合、コマによって絵を仕切ることで、ひとつのページのなかでも物語を進行させることができる。 (※ただ

線でマンガを読む『夏目房之介×手塚治虫』

『線でマンガを読む』について、毎回ご好評を頂いており、読者の皆様に感謝を申し上げたい。ここらで、自分がこのコラムを書くきっかけとなった尊敬する先達を紹介しておこうと思う。マンガ家兼マンガ批評家、夏目房之介だ。 NHK・BS2で1996年から2009年まで放送されていた『BSマンガ夜話』という番組がある。毎回ひとつのマンガ作品を取り上げ、さまざまな角度から語り合うという内容。レギュラーコメンテーターはマンガ家のいしかわじゅんと夏目房之介、評論家・岡田斗司夫の三人。司会進行は交