線でマンガを読む『大橋裕之』
「ナマケモノ」という生き物がいる。人間によってなんとも侮辱的な名前をつけられた動物だ。確かに、ふだんは木にぶら下がって怠けているように見えないこともない。しかし、彼にだって、本気を出すときがあるのだ。繁殖期を迎えると、オスは自分の島を出て、海を泳いでメスを探しに行くのである。ギャップというやつの効果は絶大で、木の枝にぶらぶらしているナマケモノが、このときばかりはと、命がけで泳ぐ姿に心を打たれる。
大橋裕之というマンガ家がいる。彼の作品では、貧乏な若者や、スクールカーストの真