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短編SS「幽霊の条件」

学生服に通学鞄で、僕はゆっくりと夜の街頭下を歩いていた。

「うらめしや……」
 その声で、立ち止まり暗い道路を振り返る。

 視界に入ったのは白服に三角の天冠てんかん。長い髪は濡れていて、ポタポタと水が滴っている。
 しだれ柳の下にいそうな、あんな風貌のーー

 「君だれ?」
 「うらめしや……」
 そいつは僕の答えに返答しなかった。

 「えっと、君、あのさ。幽霊かもしれないけど、もうちょっとなんとかならない?その定番のセリフとか」

 僕は大きくため息をついて、幽霊に向き合った。

 「ダメですか」
 今度はハッキリと幽霊の声が聞き取れた。

「ダメだね、古い。そもそもうらめしや、って何だよ。というか、僕は恨まれる覚えはないし」
 「では、最近の幽霊はどのようにいうのでしょうか」
 「そうだなあ。一緒に死んでくれない?とか」
 「でも私、もう死んでます」
 「ああ、そうだねえ。イマイチだったか。化けて出てやる!とか」
 「もう出てきてます」
 「ワガママな幽霊だなあ、せっかくアドバイスしてるのに」
 「いい出したのは、あなたじゃないですか……」

 幽霊はさめざめと泣きながら、ウロウロと飛んでいた。

「そもそもさ、服もなんとかならない?白服ってどうも可愛くないよ。僕みたいにこんな学生服とか」
 「可愛さを求められても……そもそも服って変えれるんですかね」
 「変えれるよ」

  幽霊が僕を見てきたタイミングで、一瞬だけ僕は体を透かし、死んだ当時の烏帽子えぼしはかまの平安服へと変えた。


 「お互い大変だよね。でも、これからは幽霊が幽霊を脅かす時代だから」


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