細胞からの子育て その1

 9月の終わり、息子と野口整体の師匠であるT先生の個人指導(操法)を受けに行った。
 この日は特別な思いがあってのこと。息子が二十歳になったことを報告をしたかったのだ。もちろん、節目節目には必ず先生に身体を整えてもらってきた経緯もある。
 諸々事情があり、息子が先生のご指導を受けるのは1年半振りぐらいであった。
 久しぶりに先生と対面した息子。二人の間にはぱあっと晴れやかな気が広がり、満ちていく。もうこれだけで、心身は整ったと言えるほどでもあるのだが、互いに礼をしあい、操法を受ける。先生に
「二十歳になりました」
 と告げると、
「今日は会いに来てくれたんですね」
 と満面の笑みの先生。
「9月生まれですものね」
「えっ〜、先生よく覚えてくださってますね」
 とびっくりする私と息子。
 先生はたくさんの会員を見ていらっしゃる。ピーク時には一日50人を超える日もあったし、活元会も毎回30人ほどは集まっていた。
 先生の整体操法の技は、その整い方において、神技としか言いようがないし、また、先生にかけていただく言葉が意識の方向性を変えてしまう魔法がある。先生と話しているだけで心が満たされていくのである。
 先生は、操法をしながら、息子に最近の生活のこと、大学での学びのことなどを聞き出しながら、どんどん身体を整えてしまう。
「すごくよく育ってますよ。ほんとに素直に育ちましたね。背骨も綺麗に整って、充実しています」
 と私の方を見ながら先生。
 思えば、私の子育ては受胎した時から先生に母になる自覚を育ててもらってきた。私は先生に「背骨が綺麗に整っている」という言葉を仰っていただくだけで、充実感を得ることができる。自分の子育てを認めてもらっている。そうした20年間だった。
操法が終わってから、しばらくの間、先生がいろんなことをお話してくださった。
「先生は僕にとって第二のお父さんみたい」
と息子。
そう息子はその育ちを先生にずっと見守ってもらってきたのだ。
「お母さんのお腹に入った時、先生は手を当ててすぐわかったって…」
 と息子。
「ああ、みゃくみゃくしてるってわかった時ですね」
 と先生。
 受胎してわずが2週間ぐらいで、私は身体の変調を感じた。コンピュータを見ると画面がチラチラして見ることができなくなったのだ。
 思いあたる節もあったし、妊娠と目の関係を知っていたので、2週間前に操法を受けたばかりだったけれど、すぐに先生のところへ行ったのだった。
 私のお腹に手を当てた先生が、
「みゃくみゃくしてますね。それに前回とは骨盤の様子も違うし、妊娠してますね。でもまだ尿検査には出ないでしょうから、あと2週間したら病院に行って検査してくださいね」
 と仰って、私はただただ驚いたのだけれど、息子はその話を私から何度も聞かせれていて、この日、記念すべき二十歳の報告の日に思い出したわけだ。
 それにしても、先生が21年前に私と交わした会話を瞬時にして思い出してくれることに嬉しくなった。自分に気を向けてもらっている幸福感。
 まさに、私の子育ては、先生のおかげで、細胞から始まっている。そして、息子は細胞から先生の愉気を存分に受けて成長してきた。

 そのようなわけで、私の「整体子育て記」のタイトルは、「細胞からの子育て」とした。
 note にこれから綴っていく。

 私は、先生にお母さんとしての自覚を育ててもらってきた。私の子育てにおいて、先生の潜在意識教育がベースとなっている。そのことを綴っていくつもりである。

 実は、この時、私は整体協会本部にて野口裕介先生の元、指導者になる勉強を始めて一年目であった。
 私たち夫婦は、それまでは自分たちの活動を優先してきたから、妊娠出産育児をする覚悟がまだなかった。生活ががらりと変わってしまうであろうことへの不安が大きかった。
「折角整体の勉強を本格的に始めたのに、中断しなくちゃならなくて…」
 と先生に胸のうちを吐露した。不安の現れだ。すると…
「何を仰いますか(笑)。整体の勉強をきちんと始めたから、身体が整って妊娠したんですよ。この一年であなたの手はすっかり愉気の手になってるし、身体も違いますよ。
 そして、子育てこそが整体の一番の勉強なんですよ」
 先生の言葉を受けながら、感激で胸がいっぱいになった。
 この日から私の子育てが始まり、私は先生とお腹のみゃくみゃくさんの成長と共に母にしてもらっていく。

 二十歳の報告の日に先生が私たち親子にかけてくださった言葉はもれなく記憶している。おいおい綴っていく。
 人が成長すること。気の充実。つながりの大切さ。潜在意識教育。たくさんいただいた。

つづく。  

画像は、生まれたばかりの息子。

2021.10.9

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