「AWC(アートワーカーズ連合)アーカイブ展」(倉敷)と「Punk! The Revolution of Everyday Life」展(札幌)が開催!
今年3月に初の単著となる『パンクの系譜学』(書肆侃侃房)を上梓し、アナキズム界隈でも話題となっている『思想としてのアナキズム』(以文社)の「第11章 パンクとアナキズム」を担当した倉敷芸術科学大学の川上幸之介氏が八面六臂の大活躍を続けている。毎年国際女性デーに合わせて先鋭的な展覧会を行っている渋谷区松濤にあるセレクトブティック「Sister」においても、昨年の「ゲリラ・ガールズ展 「F」ワードの再解釈:フェミニズム!」に引き続き、3月20日から3月31日にかけて催された「1990年代初めにアメリカ合衆国で始まったフェミニスト・パンクスたちによる社会運動「Riot Grrrl」と、マスコミによってその貢献を覆い隠されてきた「Queercore」、「女の子」という単一性へと収斂されてしまった非白人種の女性パンクスに着目」した「Girls to the Front」展に深く関わっており、3月31日には下北沢の気流舎で『パンクの系譜学』の出版記念トークイベントが開かれるなど、その勢いは留まるところを知らない。
4月19日から倉敷市にある「語らい座 大原本邸」で始まった「AWC(アートワーカーズ連合)アーカイブ展」(5月3日まで)はインディペンデントキュレーターの長谷川新氏と共に一年以上の準備を要したという。3月に『アートワーカーズ 制作と労働をめぐる芸術家たちの社会実践』(フィルムアート社、高橋沙也葉/長谷川新/松本理沙/武澤里映=訳)が出版され、著者のジュリア・ブライアン゠ウィルソン氏(コロンビア大学美術史・考古学部教授)も日本各地で講演を行っているが、「アートワーカーズ連合」とは1960年代末にニューヨークで結成されたアーティストや批評家からなるコレクティブで、ベトナム反戦運動やフェミニズム、反人種差別運動などの抗議活動を行っており、運動自体は短命に終わったものの、彼らの問題提起は半世紀以上を経た今もアクチュアリティを失っていない。メトロポリタン美術館で行われた「アートワーカーズ連合」によるベトナム戦争に対する抗議は、3月11日に国立西洋美術館の企画展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?―国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」の内覧会で行われたイスラエルによるパレスチナ侵攻とスポンサー企業である川崎重工業株式会社に対する抗議や、3月29日に全国公開が始まったローラ・ポイトラス監督のドキュメンタリー映画『美と殺戮のすべて』(2022年)で取り上げられた写真家のナン・ゴールディンによるメトロポリタン美術館の「サックラー・ウィング」における製薬会社パーデュー・ファーマを経営するサックラー家に対する告発など、その後に起きた美術館におけるアーティストによる抗議活動を先取りしたという点でも重要な運動なのである。川上氏は4月20日に倉敷駅前にオープンした株式会社クラビズが運営するギャラリー「Kurashiki Avant Gard(KAG)」のアートディレクターに就任しており、オープン初日には『美と殺戮のすべて』が上映されたが、会期は未定ながら先述した「AWC(アートワーカーズ連合)アーカイブ展」が巡回する予定である。
そして、日本各地を巡回して好評を博している「Punk! The Revolution of Everyday Life」展がついに札幌に上陸する。会場となるのは中央区にあるbrew it(カフェ&バー)で、主催は伝説的なハードコアパンクバンドである元ナックルヘッドの戸沢淳氏とのこと。5月3日から10日までと短期間ながら、会期中は川上氏による「『パンクの系譜学』(書肆侃侃房)とパンク展」などのスペシャルイベントが予定されており、今後も川上氏の動向に目が離せない。
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