トレーディングカードゲームの思い出

近年、TRPGや異世界物に関する文章の校正依頼が続いているが、実はTRPGをプレイしたことがない(そのリプレイである『ロードス島戦記』のアニメ版は好きで観ていたが)。ご縁に恵まれなかった理由はおそらく私の幼少期と「TRPGの冬の時代」を招いたトレーディングカードゲーム(以下TCG)の全盛期が重なってしまったからだろう。

これではマズいと思いつつも、多忙な本業の合間に大量の原稿データを出典にまで遡ってチェックしなければならず、そのきっかけを掴めないまま、現在に至っている。

私がまだ小学生だった1997年に安田均率いるグループSNEが手掛けたTCG「モンスター・コレクション」(以下モンコレ)が富士見書房から発売された。和製TCGの中でも、とりわけ萌え要素の強い「アクエリアンエイジ」が発売されるのはその二年後のことで、私は手を出さなかった。

当時は少しばかり集めたが、「マジック・ザ・ギャザリング」(以下MTG)と異なり、地方在住ゆえ、身近にプレイヤーがいなかったし、ゲームルールが複雑なので、残念ながらプレイする機会はなかった。そのため、シリーズ第二弾である『古代帝国の遺産』までしか分からない。

これまたMTGのウルザズ・サーガとほぼ同時期の発売で、そうした時代の潮流を強く意識していたものと推察されるが、MTGの多元宇宙的な世界観や古代の遺産(アーティファクト)を用いて戦うという設定からして、イギリスの作家M・ジョン・ハリスンの『ヴィリコニウム』シリーズから多大な影響を受けている。

そういえば、今や完全に「デュエルモンスターズ」の漫画となった『遊☆戯☆王』の主人公武藤遊戯の別人格である闇遊戯が古代エジプトのファラオという設定だったのをふと思い出した。千年アイテムもMTGの世界に置き換えれば、古代のアーティファクトに相当するだろう。

世界最初のRPGである『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)には『指輪物語』のJ.R.R.トールキンが考案した「ホビット」も登場するため、著作権を巡って裁判沙汰にまで発展している(トールキン側が著作権に厳しくなったのは、勝手にアメリカで『指輪物語』のペーパーバック版を出版したドナルド・A・ウォルハイムのせいだろう)。実は『遊☆戯☆王』にも「ホビット」というモンスターカードが登場するが、おおらかな時代だったとはいえ、問題にならなかったのだろうか。

現在では「デュエルモンスターズ」として知られるこの国民的TCGも当初は「マジック&ウィザーズ」という明らかにMTGとその発売元であるウィザーズ・オブ・ザ・コースト社を意識した名称であったから、よく訴えられないものだと思っていたが、実はMTGから派生した同社のカードゲームに「デュエル・マスターズ」(2002年)がある。タカラトミーが発売しており、漫画チックな絵柄のため、私はてっきり和製TCGだと思い込んでいたが、その類似したネーミングからして、販売戦略的には「デュエルモンスターズ」を意識していたであろうことは想像に難くない。

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