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怪#6(地縛)

突然、久しぶりに
武から連絡が来た
相変わらず自己中でイケメン
他の女たちとはヨロシクしているが
私はそんなのまっぴらよ


アイツに「男」を感じたことはないし
武もそうだろう

ジェンダーな友人関係を
10年以上は続けているが
武が頼みごとをしたのは
今回が初めてね

それも、失礼じゃないか・・

「お前さぁー動じないじゃん」

武の周りに
はべる女たちは
「キャー」とか
「怖いぃー」とか
「いやぁーん」の類だけど

私は、「げっ」とか
「へぇぇぇー」だから

白羽の矢を立てたらしいの
別に立ててほしくもないが
どうしても「女」
じゃなきゃダメなんだと

一晩だけでいいから
清掃の仕事をしてほしい
それもラブホ清掃

こいつ・・・
嫁入り前の私にそんな
レア職させるなんて

「おもしろそー」と
皮肉を込めて相槌打つと
真に受けて
「お前なら、そういうと思った」
「じゃ、オッケーな」
と返してきた

まぁ、私も興味が無いわけでもない
満更でもなかったから
「バイト代はずんでよね」と答えた


当日、トレーニングする
アスリート並みのいで立ちで
言われた店に行くと
優し気なおばちゃんが二人
出迎えてくれ
ひとり葬式で来れないから
急遽、頼んだと言われた

それにしても
オーナーは後家の熟女


武ったらキャパ増やしてる
わ・・


点眉(てんまゆ)の
すっぴん指定するはずだよ

熟女の嫉妬防止だね

私は化粧映えするが
素顔は幼くペラ顔
その点も考慮したんだ

ふーん
アイツにバイト代
もう少し吹っ掛けよう・・(笑)

キンコンキンコン
お、早速おいでなすった
出入りは
学校の始業鐘のような
音で知らせてくれる仕組みで

歩きだろうが
車だろうが
絶対、探知するよう
広範囲にセンサーを
設定してあるので
見逃すことはない

その日は
平日ということで
2~3組入ったが
ひと組を除いて
ご休憩だけで帰っていった
残っている一組は
お泊りだから
私たちも休憩(仮眠)を
とった

しかし、慣れぬ環境で
初めてのお仕事に
アドレナリンが
出ているせいか
まったく眠れない

相方のベテランさんは
横になったとたん高いびきで
馴れってすごいわ・・・と
感心したよ

一応、横になり目を閉じたが
頭は冴えてるし
夜中、2時すぎ
静かすぎて息すら遠慮する

そんな時
びびっ びびびびび

入室すると自動で
該当室の部屋番号と
入室時間が記録される
システムが作動した

でも相方さんは
熟睡中で全く起きない
仕方がないから
のそりのそりと
立ち上がり
パソコンを見る

誤魔化しができないのと
税務署対策だろうか?

記録と連動して
PC画面に表示が入る
入った部屋と
空き室管理が画面で一目瞭然

金銭の授受は
出るときだけだから
客から何か要求がない限り
私たちが動く必要はない
だから
記録と画面を確認して
間違いない事を確かめ
相方さんは起こさずにいた

私も
かったるいなぁー
なんて思いながら
元、居た場所で横になった

・・・・・・

・・・・・・

あれっ?

そういえば
キンコン鳴ったっけ?

いや、鳴らなかった
うん
聞いてない


おかしいなぁ
必ず鳴るはずなのに

もう一回
起き上がって
PC画面を確認する

間違いない
入室表示だ・・・


え!


まさか


そんなはずはない


だって・・



その部屋は敷地一番奥にあり
あまり人気がなく
よほど満室でない限り
客を通さないし
客もほとんど入らない

昼間が盛況だったから
本日は使ったが
21時には客も帰り
私が掃除したのだ

他の部屋が
がら空きなので
ここを使うことはないと
私がシャッターを
閉めたのだから

それから
シャッター開けてないよ

客は開閉操作はできない
ここから(待機所)の
遠隔だからね

え?

え!

え?

でも・・・
入室表示になってる?

シャッターの向こう側に
ドアがあるから
開けない限り
入室なんてできない
・・・・・・のに

PCの前で一人
固まっていると
相方さんが気づいてくれた

「あら、あんた何してんの?」
「やだ、入ったのね」
「今かい?」

私は事の顛末を
説明した

鐘が鳴らず
シャッターも上げてない
しかし
記録され入室表示
となったと・・・

相方さんは
瞬間、青ざめ
「13号だね・・・!」
と、つぶやいた

老眼鏡をかけないと
PC画面見えないはずが

言い当てた

おもむろに13号室の
シャッターの開閉ボタンを押すと
そのまま飛び出した



えぇぇぇぇ!



客が居たらどうするのよ
怒られるか苦情必須だ

慌てて私も追いかけた

相方さんは
半分ほど空いた
シャッターを
くぐり


ドアをノックもなしに
開け・・・

その様子を見て
私は途中で足を止め・・・た


客がいれば「ホタル」という
常夜灯がついているのに

誰もいないから
ドアを開けた瞬間
真っ暗な部屋なのだと
わかったからだ

相方さんは
「ドアが風で閉まったんかも」

と、意味不のごまかし?
まぁ、追求せずにいたけど

私ね、霊感があるんだ
隠して生きているけど
うっすらと察知できる

清掃の時はカップルの
残留思念が邪魔をしたので
見逃してしまったが

ドアの前までゆっくり
近づくと
真っ暗な室内に
半裸で髪をアップにした
女が暗い中
ほんわかと漂っている
煙草を手にしているが



首になにか・・・
巻きついている




見えた瞬間
目をそらした


見えなかったの如く
待機所に帰り夜を明かした

気にしてない振りしたが


ここには二度とこないと
考えた



毎日の重ねから私なりの 「思い」を綴っております 少しでも「あなたの」琴線に 触れるものがあれば幸いです 読んで下さり、ありがとうございます