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【愛犬ちゃぽの墓】

妻の実家にはチャポという芝犬がいました。
初めは愛想のない犬でしたが、やがて僕が行くとチャポは尻尾をピコピコと動かして喜んでくれるようになりました。その犬はある年の大晦日の夜、失踪して亡くなってしまうのです。

今、妻の実家を訪れると真っ先に行く所があります。
亡くなった飼い犬、チャポのお墓です。
庭の隅っこで墓標などありません。
そこは気持ち程度植えられた花と雑草になっています。

僕がそこに行くと、風もないのに草や葉が跳ねるように揺れ動きます。
その動きはチャポの尻尾のそれそっくりです。
いつもその動きを見て、嬉しくなります。

チャポは外で飼われていて、僕の遊び相手になってもらっていました。
僕が遊んでもらっていたのです。
初めて会った時、硬く短いワイヤーに繋がれていました。
飼い主とのコミュニケーションもあまりなさそうでした。
飼い主に言わせると、コミュニケーションが取れずこの犬はバカなんだと言っていました。

僕は大の犬好きなので早速チャポとお話をすることにしました。すると、確かに口下手な感じはしますが、人のことをよく見て態度を決めていることがわかります。匂いを嗅いで、自分の安全は確認したようです。長いリードに付け替えてやると、遠巻きにこちらを見るようになりました。近くに人がいることに慣れさせる為に、ただそばにいる時間を作るようにしました。

餌があれば「お座り・待て・お手・替え手」が出来たのでそれで沢山褒めてあげます。お前はバカじゃないんだよ、と教えてあげたのです。

このようなコミュニケーションを通して、チャポはやさぐれ犬から可愛い犬になっていきました。しかし、ある年の大晦日の夜、失踪してしまったのです。見つかったのは春先、近くの水田用水路の中でした。寒い地域でしたので綺麗な姿だったそうです。僕もずいぶん探したのですが、見つけられなかったことが今も残念に思います。

でもチャポとの思い出は、僕にとっては掛け替えのない思い出となっています。僕の中には生き続けているし、今もそばにいるような感じがするのです。そして今もこう言います。
「遊んでくれてありがとう」

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