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#28小さな事業者向けマーケティング「ベンチマーキングって何?」

 前回の#27の「1次仮説からライバルと比較し2次仮説を考える」で「ベンチマーク」という言葉を紹介させて頂きましたので、今回は、「ベンチマーキング」という経営改革や改善手法について解説し、どのように小さな事業者がこの理論を活用していくかを紹介しようと思います。

 その前に簡単にベンチマーキングの解説をさせて頂きます。「ベンチマーキング」とは、簡単に言えば、「優れた経営をしている会社から学びましょう」ということです。1980年代に米国企業で経営改革や改善手法として注目されました。ベンチマーキングは、「ベンチマーク」という言葉から経営分野の世界で転用され、使用されるようになりました。「ベンチマーク」と言う言葉自体は、日本語に訳すと「基準点」という意味です。元々は、測量の分野で利用されていたのですが、金融や投資分野、コンピュータの分野、そして、経営分野に転用され、比較するための基準点として用いられています。
 ベンチマーキングの経営改革や改善手法の特徴としては、自社の経営手法と業界内外の優れた会社の経営手法と比較分析し、自社と優れた会社との差異性を明らかにし、自社の経営資源から最適な経営方法は何かを追究し実践していくものです。このベンチマーキングの本質は、比較対象にする企業の競争優位性の源泉の要因について学び、その要因を単に真似るのではなく、自社の経営資源を鑑みて、その要因を取り込み、自社独自のものに昇華させていくことにあります。大企業では、このベンチマーキングを使い、経営戦略、業務プロセス、商品開発、生産工程、物流システム、顧客サービスなど様々な業務分野で利用され成果をあげています。

 おいおい、このブログは、小さな事業者のマーケティングのブログじゃないのか?という声が聞こえてきそうですが、なぜ、ここで、ベンチマーキングについて説明しているかと言うのは、ベンチマーキングは、「基準点」を設けて、自社と優れた事業所や目標となる事業所、そして、業界の平均とを比較分析して、優れた事業所の競争優位性の要因を学んだり、マーケットにおける自分の立ち位置を決めることに大いに役に立ち、小さな事業者でも実践できるからです。

 前回のブログでも述べましたが、分析と言うのは、何らかの基準を設けて比較することで、自社の優れている点、足りない点が明らかになり、自社の立ち位置が分かるものです。
 過去を基準にして現在の自社を比較するのも大切ですが、それだけでは不十分です。やはり、大手企業(業界平均)、競合となるライバル企業を基準にして、比較することにより、市場における自社の立ち位置が明確になるものです。本ブログでは、業界平均的な大手企業やお客様が選ぶ可能性がある異業種等を間接ライバルと呼び、小さな事業者が直接の競合相手なる企業を直接ライバルと表現し、比較を通じた分析を紹介させて頂いております。

 経済産業省でも中小企業や小さな事業者の皆様の経営課題の早期発見、具体的な行動に繋げていくための「きっかけ」「たたき台」のツールとして、このベンチマーキングを、中小企業版に転換した「ローカルベンチマーク」として、普及させるべく取り組んでいます。内容としては、中小企業、小規模事業所でも使えるように財務的な視点として6つの指標を提示し、業界平均値との比較から、自社の振り返りや現状の把握を促し、そこから、非財務的な4つの視点について、将来の可能性を考えていきましょう、としているところに特徴があります。また、財務的視点については、行政が業種別、規模別の業界平均値を提供し、その比較を通じて、数字から客観的に自社の振り返りを促しているところに特徴があります。

    私は、小さな事業者からの相談を受ける中で、自分の事業上の商品やサービスの技術を高めるためにライバル研究や先行事例の研究はするものの、残念ながら商品やサービスの技術以外のマーケティング全体としてのライバル研究や先行事例の研究をしないケースが多いです。
 特に職人気質の小さな事業者にとっては、「他人様がどのようにマーケティングや経営をしているかの比較よりも、まずは、自分の足元の技術やサービスの改良や改善に力を注ぎ、お客様の満足度を向上させることが第一」と考えたいという気持ちは理解できますし、確かに、マーケティングを考える上でも、まずは、お客様のニーズを満たすために、売りものでもある商品やサービスにつき改善改良に力を注ぐというのは至極当然のことであります。
   ただ、ものを売るためには、商品やサービス力を磨くだけでは不十分です。ものを売るには、商品やサービス部分を強化することによる部分最適に捉えるのではなく、「立ち位置(事業の考え方)」の明確化から「見える化(事業の見せ方・伝え方)」と「情報発信(ターゲットへの届け方)」までのマーケティング全体を俯瞰して全体最適で考えないといけません。この全体最適については、#07の「マーケティングって何?」#12の「1.立ち位置→2.見える化→3.情報発信の流れで考えるマーケティング」を参考にして頂ければ幸いです。

 最後に、このようなベンチマーキングですが、日本において、今一歩、知名度が低く普及していない理由としては、この手法は、三者三様で一定でないことが挙げられます。
 おい!、一定でない手法を、我々、小さな事業者とってどのように活用すれば良いかということになりますが、それほど、難しく考えることはありません。単純に考え、まず、ベンチマーク、いわゆる基準点となる企業をどこにするかですが、これについては、目標にしたい企業、そして、自社の商品サービスにおいて、直接及び間接的にライバルになる企業はどこになるかを設定するだけです。そして、ずばり、マーケティング分野に絞って比較分析するのです。

    小さな事業者のマーケティングで言えば、ターゲットのお客様が仮想ライバルのHPと自社のHPを比較して、お客様目線で、あなたの会社が選ばれる自信があるかということを客観的に冷静な目で分析して、ライバル企業の良い部分、参考になることを取り入れながら、あなたの会社が選ばれるように努力していけば良いのです。この時の比較の注意点として、繰り返しになってしまいますが、マーケティングは全体最適で考えなといけませんので、商品やサービスの部分的なことはもちろんですが、ホームページのクオリティやサービス提供体制、広報の方法なども含めマーケティング全体で比較することが重要です。そして、ベンチマーキングにより、比較分析をして自社と優れた事業所や目標となる事業所、そして、業界の平均とを比較分析して、優れた事業所の競争優位性の要因を学んだり、マーケットにおける自分の立ち位置を決めることは大切になります。

今回もブログをお読み頂きありがとうございました。

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