#18小さな事業者向けマーケティング「情報の非対称性とマーケティングは何の関係があるのか?」
#17の「ジョハリの窓の理論とマーケティングは何の関係があるのか?」で、ジョハリの窓理論の考えを用いて、「開放された窓」に情報を集め、お客様との情報の格差を解消し、信頼性を向上させることが大切になりますと述べさせて頂きました。この「売り手側」と「買い手側」の「情報格差」については、「情報の非対称性」という理論があり、小さな事業者のマーケティングを考える際に一つのヒントになりますので、今回のブログで紹介させて頂きます。
情報の非対称性の理論は、アメリカの経済学者のジョージ・アカロフ氏が1970年に発表した論文で登場したのが始まりと言われています。
この「情報の非対称性」は、2003年の中小企業白書でも紹介された言葉になりますが、簡単に説明すると、商取引などで、「売り手」と「買い手」の間で、それぞれが保有する情報に大きな格差がある場合、情報を持っている側が有利に交渉を進めることができるというものです。(理論では、必ずしも情報を有している側が有利という訳ではなく、情報を持っていない側に有利に働くこともあるとしています)
この情報の非対称性と言うのは、特に専門家として事業を営む小さな事業者の分野では起こり易いです。なぜなら、小さな事業者の専門分野についての技術やノウハウについては、皆様が長年かけて努力や研究で蓄積したもので決して、昨日、今日で身に着けたものではなく、その分野の経験や情報量と質、そして隠れたノウハウ等は、素人のお客様からは理解ができないのが通常だからです。自分自身の分野で考えても、商品やサービスを提供する側と受ける側には、その分野の情報格差が存在し、情報の非対称性が発生してしまうというのはご理解いただけるのではと思います。
例を挙げると、家を建てる場合の工務店とお客様、ホームページを作る場合のホームページ作成業者とお客様、腰痛の治療を受ける場合の整体師と患者、エステを受ける場合のエステシャンとお客様、お金を借りる場合の金融機関と小規模事業者等、挙げたら切りがありません。
このように「売り手」と「買い手」間には情報の格差が存在しますので、一見すると売り手の方が有利に感じてしまいます。確かに競争が少ない分野、しかも専門性が高い分野ですと、お客様の選択肢は狭まりますので、圧倒的に売り手が取引や交渉の主導権を持って有利に進められることは間違いありません。ただ、競争の激しい分野においては、お客様の選択肢は多いですし、ライバルがお客様に対して商品サービスにつき適切に情報提供している可能性もありますので、持っている情報が多いからと言って有利になるとは限りません。このため、売り手としては、持っている専門的な情報を素人でも分かり易く伝えるプレゼン力が重要になってきます。
お客様の立場から考えた場合、お客様は自分の悩みや欲求を解決するために商品やサービスを購入するのですから、それにあたって、良い買い物をしたい、買って後悔しないか、さらに言えば、もっと良い商品やサービスがあるかもしれないと不安を抱くことは当然であり、そのために、情報を集め、自分にとってその商品は適切かどうか判断していきます。
この点で言えば、小さな事業者の場合、ブランド力や信用力は大手より現実問題として劣りますので、この部分を比較された場合、お客様から選ばれ難くなります。ですから、ブランド力や信用力が劣っている分、商品やサービスの情報、さらに、自社の信頼性を高める情報、ターゲットのお客様のニーズに合致する情報、ライバルとの違いや選ばれる理由の情報を、お客様に分かり易く積極的に提供し、「売り手側」と「買い手側」の「情報格差」、いわゆる、「情報の非対称性」の解消に努め、お客様との信頼関係を作って信用力を高め、選ばれるようにしていくことが大切になります。
次回は、「PDCAサイクルを改良した『企画→行動→反省→改善』の思考法(基本編)」です。
今回もブログをお読み頂きありがとうございました。