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ヌード

肌は美しい。そう感じたのはこれで2回目だ。

ぱゆさんのことを発見した時にその肌の美しさや人の存在みたいなものが美しいと感じた。そう思ったのは2回目だ。

大学1年生の頃毎日午前中の3時間、週6日、2週間ヌードに向き合う時間があった。私の専門は絵ではなくデザイン系だけれど、必修科目としてヌードデッサンがあったのだ。時間配分は覚えていない。たしか最初の数十分はクロッキーでそのあとの時間は制作。絵画の授業ではあるものの割と自由で何を用いて表現してもよかった。

私は絵を描くのが嫌いだ。苦手でもあるし、とにかく避けたい。ヌードの前の2週間は石と向き合った。アトリエのど真ん中に大きな(抱きつけるくらい大きい)石が置かれて2週間制作をする。私は絵を描くのを避けたいから書道に走った。書道は5歳からやっている得意分野だから。得意分野に走った結果、その2週間は楽しい時間ではあったものの出来上がったものは何か違うなとも思う。

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(石のフォルムが「しんにょう」に見えたから毎日しんにょうを書き続けた)

結局ヌードは絵を描いてみることにした。

と言っても絵がかけない私は色ぬりにしようと決める。紙いっぱいにヌードモデルさんの背中の色を塗っていこう。何で描こうか。好きでもない絵の授業にお金はかけたくないからアトリエの黒板に置いてあった赤と青と黄のチョークを手に取る。

「青いな」

そう思った。私の目から40cmくらいしか離れていない背中はとても美しかった。体育座りをしているモデルさんはたぶん30代くらいで、着てきたワンピースを脱ぐと何にも守られてない一人の女性の裸は段々と青く、美しく、愛おしいような、不思議な気持ちになった。

カッターでチョークを粉にする。大量に用意する。それを手のひらにつけて紙の上にのせる。直接背中を撫でるかのように、紙を撫でる。肩の部分はちょっと硬いから何度も押すように青をのせる。お腹はゆったりと波をうねっているから優しく撫でる。

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数日経つと青くて美しいだけではない、人間としての何かを感じるようになる。何かが何なのかはわからないけれど、ただ美しいだけではないのだ。青一色で描かれた絵は美しかったけれど、黄色をのせてみることにした。

すごい。人間みが出てくる。より豊かな人間になっていく。手を入れるほど青の美しさは人間の愛おしさに変わっていった。生命が入ったかのような。人間的、肉体的。美しい肌はより一層様々な経験をして温かみを帯びていく。

お腹から胸にかけての肌が特に好きだから何度も優しくなでた。

最終講評で私の作品は評価された。クラスで上位の何人かが選ばれる。自分の専門科目ではこれまで一回も選ばれていないのに、あんなに嫌いだった絵の授業で評価されてしまった。

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背中を見つめる。

人の肌は、何にも守られていなくそのまま存在する肌は、ただ美しかった。




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ぱゆさんのインスタものぞいてほしい。

すき。


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