四十路の初体験 ブラジリアンワックス編


毛をね、滅してきたのです。

常日頃から髪の毛以外の毛は必要ないのでは…… と思いながら40年近く自己処理で生きてきたんですよ。それでもなんとかなったし。冬はまあべつにアレだし。
それがなぜ今さら脱毛しようと思ったかというと、サウナに行くようになり、改めて世間の皆様の毛の無さに驚いたんですよね。
え?みんないつそこの毛を排除したの?と。
全身脱毛は若者だけではないのだと思い知ったわけ。
(人の毛の有無をじろじろ見てごめんなさいという気持ちはある)
そしたら急に恥ずかしくなってきた。なにも手入れしてないこの身体が。無法地帯でごめんなさいという気持ちにすらなった。

でもいざ医療脱毛だの光脱毛だの通うだけの根気もないし、長い冬を経て薄着の季節を前に全く手つかずのジャングルを身体に携えて今更そんなところへ行くのもな…… と二の足を踏んでいたところにブラジリアンワックスというものを知った。

ブラジリアンワックスは「自己処理を全くしていない状態」でないと脱毛出来ない。
フサフサで来い!と書かれている。
本当に………………?(猜疑心)
フサフサでないとワックスが絡まないので駄目なんだそう。ワックスを絡ませた毛をテープで一気にベリッ!!!とやる、と書いてある。
野蛮…………………(恐怖)

しかし根気の無い人間にとって「一発でツルツル!」の文字は魅力的だった。

というわけで、急な思いつきでいざブラジリアンワックス脱毛へ。

ホットペッパーの口コミに「初めてでしたが全く緊張せずに恥じらう間も無く終わりました!」とか「なんでもっと早く来なかったのかなと思いました!」など、とにかく絶賛しかない地元の雑居ビルにあるサロンに行った。
ハワイアン風の店内はよくあるネイルサロンとかそれ系と大差ない。
出迎えてくれたのは完全にチョリ〜ッスというギャルお姉さんだった。
私は予約時に「とにかくベテランにやってもらいたい」という初心者の警戒心剥き出しの要望を出していたのでギャルお姉さんはギャルだけど歳は私と同じくらいの人だったのでちょっと安心した。

案内された個室はカーテンで隣と仕切られていて
、マッサージ台みたいなベッドが置いてあった。
「そちらでキャミソール1枚になって下はショーツも全て脱いでからベッドに仰向けになってバスタオルを胸の下までかけておいてくださいね〜」と言ってギャルお姉は出て行った。
ふむ…… つまりほぼ全裸だな…… と当たり前のことを噛み締めながらマグロのようにベッドに横たわる。

「失礼しま〜す。ご準備よろしいですかァ?」
「あっハイ」
「じゃあよろしくお願いしま〜す。お姉さんはワックス脱毛初めてですか?」
「ハイ」
「完全に?一度も?」
「ハイ」
「よし!がんばりますね!」

ブラジリアン処女を前にギャルお姉の目の色が変わった。
今回は脇とVIOと次回はうなじ、というスケジュールである。
全く自己処理をしていない、という話をして「(自己処理を)してない方がやりやすいと聞いたので」と、己の怠惰をあたかもブラジリアンのために伸ばしてきましたみたいに発言すると、ジャングルを目視したギャルお姉は「その通りです!素晴らしい!」と手放しの賞賛をくれた。
生やしていてこんなに褒められることとかあるんだな……。

脇はともかくVIOに関して「どこまで無くしますか?」との問いに「え〜っと……」と私がモジモジしているとギャルお姉はさっと手鏡を取り出して「ここは残しますか?」とオマタを映しながら確認させるという羞恥プレイ。
「アーッ はい。もう、あの、お任せで……」
「おまかせでいいの?!笑」
と笑いながらもなんとか形を留めて綺麗にしていく方向で決まった。


最初は脇から始まったのだが、ちょっと熱いかな?くらいのジェル状のものを塗られ、テープを貼ったら一息にベリッ!!と剥がす。
芸人の罰ゲームみたいなもんなのだが、思ったよりは痛くない。想像の1/3くらいの痛み。
あ、なんだ全然ヨユーじゃん。

「どうですか?」
「全然大丈夫です!」
「でっしょ〜?じゃあどんどんやっちゃうね」

ベリッ!ベリッ!とやりながらも世間話を一瞬たりとも切らさない。話し続けることでこっちをリラックスさせてくれているのか、とにかく話題が尽きないのに変なプレッシャーもなく自然に話せる人だった。

そして両脇はものの数分でツルツルになった。

「じゃあ次はこっちいきますね〜。こちらに背中を向けて、片足を膝まで上げて、お尻をこちらに突き出してください」


羞恥。



婦人科の検診とはまた種類の違う羞恥である。
さすがに15分前に初めて会った人にこの体勢は……と思ったがもう今さらギャルお姉は止められない。
「あっココはほとんど毛がないですね!」などと誰にも言われたことのないようなことを言われどんなリアクションをしていいか分からず「ヤッター」みたいなことしか言えなかった。

手順は脇と同じ。しかし痛みは脇の数倍痛い。
そりゃあそう。そんなところにガムテを貼られたことなどないからな。
でもギャルお姉は軽快に「いまディズニーっていくらするか知ってます〜?(ベリッ!)9800円ですよぉ〜信じらんないですよね!(ベリッ!)開園当時は3800円だったらしいですよ!(ベリッ!)」とトークに紛れてどんどん毛を毟り取っていく。
人のソコを見ながら夢の国の話をするってどういう精神状態なのかシンプルに興味が湧く。
ギャルお姉には子供が2人いるらしいのだが、「お母さんの仕事は人の体毛を毟り取ることなんだよ」とか説明してんのかな……と余計なことが頭を掠めた。

ギャルお姉のディズニートークに相槌をうちながら最終的に「ポップコーンの入れ物はメルカリですぐ売れる」という謎ライフハックを聞いたところで施術が全て終了した。



初回だったので安かったのと貯まっていたポイントなど使いほぼタダみたいな値段でツルツルになった。1か月くらいは産毛みたいのが生えてきても剃ったりしちゃダメ、1センチ伸ばしたらまた毟り取りにくればいいらしい。
毛根を抜く時に角質も取れるので特に脇はツルツルになるとのこと。期待するからね!?

「ありがとうございましたぁ〜またお待ちしてます〜♪」
ギャルお姉にお手振りで見送られた頃には、守ってきたものを失うと同時に、大きななにかを得て大人になったような、清々しい気持ちだった。


昔、全身脱毛した友達が「一度始めると毛という毛が全て無くなるまで止められなくなるよ」と言って眉まで全部抜いていたのを思い出した。今なら分からなくもない。
次のうなじをやるのも楽しみになってきた。
眉までいこうとし始めたら誰か止めてください。


すれ違う人々は知らない。
私がブラジリアンデビューしてきたことを。
今のこの気持ちを忘れないために、恥ずかしくも実り多き経験をnoteに残す。






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